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ミリア  作者: フジマル軍
一章 名もなき星と夢見た世界
2/89

#2 ちびと説明と運営と

「それじゃあみんな♪私は一度しか言わないからよーく聞いてね♪」


中性的な声に男物のスーツ、しかし覆面の中からはみ出すロングヘアーとわずかに膨らみのある胸、細身の体つきからして女性であろう白い覆面で顔面を隠す人物。

その奇妙な白い覆面を被った女性は、全員に平等に聞こえるようにかくるくると回りながら話しはじめた。


「あっ、目が回りそうだからやっぱこれなし………、ってことで、それっ♪」


そう言って白マスクは足をフラつかせながら自身の真上を指差すと、大型のスクリーンのような画面が八枚、空中に現れた。

どういう原理なのか、固定されたり吊るされたりしている様子は見られず、それは宙に浮いたまま微動だにしない。


「何が起きたかわからない、多分そんなことを考えてる人もいるよね♪とりあえず順を追って説明しよう♪私の名前はヨフミ♪ぜひ覚えていってね♪」


白マスク、ヨフミは一人一人顔を覗き込みながら説明を続けた。


「まず、君たちはなぜここに集められたのかについて♪君たちは、こちらでとっても有能な、力を持つ希少な存在だったので、多少手荒になった人もいるけどこちらに招かせていただきました♪」

「うるせえぇ!さっさともとの場所に返せやゴラァ!こちとらまだセーブが済んでないんじゃあ‼」


椅子で作られた円の内側をゆっくりと周回していた、ヨフミと自称する覆面。

その彼女?が丁度小学生位の小柄な少女の前を通りすぎようとしたとき、とてもその容姿からは思い付かない怒鳴り声を散らした。

だが、賛否の声があがるどころか誰も音を出さない。


否、出せなかった。

恐らく、ヨフミと名乗った白マスクとあの少女以外全員同じ状況なのだろう。

バンも先ほどの衝撃の声以降口も動かず、抵抗する自由も奪われていた。


「えっ、なんでしゃべれてんの?もしかしてイチゴヤくんなんかいじった?」


ヨフミも想定外だったのか、鼻につくような声ではなくなっていた。


「でも口ぐらいしか動けないみたいだし、まあいっか♪再開するね♪」


雑に流された少女は以降も騒ぎ続けたが、ヨフミはもう気にする様子もなかった。


「気を取り直して、次にここがどこかについて♪ここはいわゆるゲームの中だよ♪VRとかがイメージとしては最適かな♪それで今いるここは運営の場所なので皆さんにはもう一度移動してもらいますね♪」


バンの覚えている限り、気持ち悪い感覚にさいなまれる前は学校の教室にいたはずだ。故に、ゴーグルやらそれらしきものに触れた覚えはない。

しいてあげればスマホか。

だが、もしスマホが何らかの鍵だったとしても、スマホに触れたのが自分でもないのに、ここにいるのがなぜバンなのか、何故未だに体の自由が効かないのかなど、質問したいことは山ほどあったが、いまだ体は動かせず、声のひとつも出ない。


「これから皆さんには殺し合いをしてもらいます♪といってもゲームの中なのでノー…………、現実にはなんら問題ありません♪

出来るだけ死なないよう頑張ってください♪」

「……要するにサバゲーをしろって事か。面白そうじゃん」


いつからか静かになっていた先ほどの少女は、怒りはどこへ消えたのかすっかり興味津々だった。


「最後に補足説明をするね♪君たちがいくのは名もなき星、ワールド。環境は、現実に似て非なるものって感じ♪この星には先住民として、≪スレイビースト≫と呼ばれる獣人が住んでいる。共存するもよし♪滅ぼすもよし♪皆の自由だよ♪」

「名前ないのにワールドって呼び名はあるのかよ!それに説明はいいからさっさと遊ばせろ‼」


今度は先ほどの怒鳴り声よりも増した大きさで、加えて足をばたつかせていた。

お前の言動こそ矛盾してるじゃんかと突っ込みたいが、当然のように体は動かない。


「それもそうだね♪習うよりも慣れろって言うし♪でもこれだけ最後に。君たちにはそれぞれ属性があり、なりきることが最も重要だよ♪それじゃ、検討を祈るよ♪」


一瞬声が上ずったかと思うと、ヨフミのその言葉を皮切りに視界が唐突に途絶えた。

先ほど同様あの不快な感覚。

この気持ち悪い感じには、とても慣れそうになかった。





―――――――――――――――






「ふう、疲れたっ♪」


黒い部屋に一人残されたヨフミは、その言葉とは裏腹に楽しそうにしていた。

白い覆面は調子の良い鼻歌混じりに適当な場所に座る。そこへ二人の影が、黒の中から静かに現れた。


一人は筋肉質だが一メートルほどの背丈しかない小男と、もう一人は、小柄で獣の耳が頭部から生えた黒髪の少女だった。


「あーっ!ちょっとイチゴヤくん!ジュナちゃんの感覚遮断機外したでしょ!あれ使い捨ての割りに貴重だし、もう在庫ないんだよ!」

「あれをやったのは私じゃない。クロナだ」

「うん。クロナが、やった」


クロナと名乗った少女は、真顔のまま親指を上に突き立てた。


「ぐぬぬ…………、そんなクロナちゃんもきゃわいいぃー!」

「………ヨフミ、暑い、離れろ」


クロナは片言で表情を変えないまま、抱きつくヨフミを拒む。

そこへ小男が割って入ると二人を慣れた手つきで引き剥がし、覆面の頭を鷲づかみにした。


「じゃれる前に私の問に答えろ。ひとつはなぜ『すべて』説明しなかった。もうひとつはなぜ予定の人数に達する前に始めたのかだ」

「ひとつめ……私、答える。みんな、ストレス………視えた。あれ以上、悪影響。それ……伝えた」

「そゆこと♪二つ目はぁ………、めんどくさかったからかな♪」


イチゴヤと呼ばれた小男は、ヨフミの発言に対し唖然とし、頭を掴む手に力が入っていく。


「貴様……、その発言、ことと次第によっては私が直々に処分を――――」

「冗談だよ♪ほんとはただ時間になったから♪もちろん事前に許可は得てたしね♪」


ヨフミは、尚も力の込められていた手を振りほどき、自分のスーツとマスクの位置を整えながら少し食いぎみに答えた。


「……なら良い」

「それじゃあそろそろ戻りましょ♪指令通りにしなきゃ怒られちゃうよ~♪」


彼女のその言葉を聞き、三人はそれぞれの持ち場へと戻っていった。

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