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踏み始めた夢への一歩。
「みなさん。初めまして!私はこの学校の最高責任者。東雲幸と申します。今日からあなた方全員を立派な1人前の俳優として送り出せるように精一杯努力していきますのでどうぞよろしくお願いします。」
...正直ありがちなセリフだと思った。どこの学校でも大抵式典ではこんな言葉が並べられている。
入学式なんて早く終わって欲しい。演技のレッスンをすぐにでも受けたい。
そう彼女が考えているのには、ワケがあった。
確かに俳優になりたいという夢もあるのだが、何を隠そう、東雲幸は日本にとどまらず世界にも称賛されている天才俳優なのだ。
あのテレビの世界で活躍している、私が小さい頃から憧れていた人が、今目の前にいる。
誰しもが気持ちの高揚を感じるに違いない。
あの人の演技は何もかもに魅了されるものだった。
声のトーン、表情、立ち回り、指先の演技まで忘れず、全てが完璧なのだ。
彼女が演じた役は、まるで本当にそこで今その人物が生きているようにすら見えてくる。有名になるのも頷けるほどだ。
実力派俳優と呼ばれ、東雲幸はスターとなった。
そう、表の顔は。