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六話『初めての異種族交流・後編』

「おい! アイツらは何者だ!」


「彼等は旅の方との事ですが…………」


「そんな事はどうでもいい! ニンゲンがいるのに貴様らは何をしているのかと言っている!!」


「何をと言われましても、コチラに危害を加える様子がなかったので」


「バカめ! そうやって油断させた所を仕掛けてくるのがニンゲンではないか!

 そんな事もわからないようだから貴様らはゴミなのだ!!」


 コチラに気づいた犬人の一匹が喚き散らしている。

 恐らく今の私は、死んだ魚の様な目をしてヤツを見ているのだろうが、それは問題ではない。


 問題なのは、このままだと小鬼達が虐殺される場面に遭遇するだけでなく、私やフィーにも危害を加えそうな剣幕で捲し立てている犬人(バカ)がいるという事だ。


「なるほど? コイツらならイロイロと使い道がありそうじゃねぇか」


 下卑た笑みを浮かべながら、犬人が私とフィーを品定めする様な目を向けてくる。

 大方、奴隷商人にでも伝手があるのだろうが、もうそろそろ我慢の限界なのだがどうしてくれようか?


「お待ちください! 人族とは不可侵条約が!」


「知ってるかぁ? バレなきゃ犯罪にゃなんねぇんだぜ?」


「そんな事!」


「るせぇなぁ。邪魔なんだよ!」


 犬人が苛立ちと共に手にしていた剣を振るうと、その先にいた小鬼は、血を撒き散らしながら軽々と飛んで行く。


「おうおう汚ぇ花火だなぁ。

 まぁテメェらゴミを生かしておく理由もねえし、見られちまってるもんなぁ?」


 その一言で周囲にいた犬人達が戦闘態勢に入ったのがわかった。

 目撃者を残さないよう虐殺するつもりらしい。死人に口なし。

 それならば確かにバレないだろう。だが、やり過ぎだ。


「ねぇフィー。もういいよね?」


「えぇ。私も我慢の限界です」


「あ゛ぁ!? テメェらなに話してんだ?

 これから待ってるユカイな未来に気でもふれたか?」


「黙りなさい。貴方の行いは見るに耐えません。

 存在そのものが不快です。知性が微塵も感じられません。

 失礼、ただの犬っころでした。あぁですが貴方と同列にしては犬に失礼ですね。

 では貴方は何なのでしょうね? 魔族でもない畜生にも劣る貴方。

 あぁ、そうです。ゴミ。それが正しいのではないでしょうか?」


 こわ!? え? ちょっと待って?隣にいるこの子はホントにフィーさんですか!?

ちょっと驚き過ぎて怒りが少し引っ込んじゃったよ!?


 何の価値もない物。路傍の石以下の存在を見るような目で、犬人を見るフィーに戦慄を憶えたが、それを顔に出さないよう堪える。


 言われた当人は、何を言われているのかわからない様子だったが、遅れて理解したのか、次第に怒りで体を震わせ声にならない叫びを上げた。


「テメエ!! ちぃと優しくしてやりゃあ調子に乗りやがって!

 生け捕りは止めだ!皆殺しにしてやらあ!!」


 プッツンした犬人が声を張り上げると、控えていた他の犬人達が一斉に動き始めた。


大地の拳(グランドアーム)!」


 それに対し、フィーは冷静に魔術を行使した結果、地面が急激に盛り上がったかと思うと手の形となり周囲の犬人達を捕まえていく。

 中にはいい動きをする奴もいて、その大地の拳から逃れるがそれをフィーが許すはずもなかった。


岩石の壁(ロックウォール)!」


 次いで行使された魔術により、見晴らしの良い広場だった場所に次々と壁が生えてくる。

 にしても、この広範囲を完全に把握して尚且つ、相手の逃げ場を着実に埋めて行く手腕は見事だなぁ。

 あ、また一匹捕まった。でもなぁ、私もこのまま何もしないっていうのは悪い気がする。


「フィー。手伝いはいる?」


「大丈夫です。この程度シグさんの手を煩わせるまでもありません」


「あ、ハイわかりました」


 なぜか生き生きとした表情(かお)をしたフィーに手伝いを断られてしまった……

 いやぁ、頼もしいね。という事で私はナニかがあった際に行動できるよう、目を配っておくとしますか。


 あ、ついでにフィーの使う魔術を見て覚えれないかな?

 などと考えながら状況を観察していると、フィーは多彩な魔術を駆使して次々と犬人達を捕らえていく。


「このアマァ!」


岩石の槍(ロックランス)!」


 血走った目でフィーを直接襲いに来た一匹が、地面から生えた槍により無残にも磔にされる。

 どうやらソイツが最後だったらしく、周囲には土でできた手に拘束された犬人達が、なにか喚きながらもがいているが、まぁそんなんじゃ拘束は解けないだろう。


「ざっとこんなもんです!」


 鬱憤が全て吐き出されたのだろう。フィーがスバラシイ笑顔で得意げに振り返る。

 味方にすれば頼もしいが、敵に回すと恐怖以外の何者でもないだろうなぁ…………


「うん。フィーの実力はよくわかったよ。

 さて、僕としてはコイツらの処遇を小鬼達に決めてもらおうと思うんだけど、どうかな?」


 そう言って小鬼達を見回してみるが、一方的な捕縛劇を見せつけられたせいか、怯えた様子でコチラを窺うばかりであった。


「あ〜。僕達は特に危害を加えるつもりはありません。

 礼には礼を敵意には敵意を返す。という事でこんな事態になっちゃいましたが、貴方がたは僕達に礼儀を示してくれた。だから僕達も礼儀を示そうと思うんだ。

 今回の件で一番の被害者は、貴方がた小鬼族の皆さんだから、このゴミの処遇を決める権利は貴方がたにある」


 そこまで言って一度言葉を切る。私の言葉がちゃんと届いているか、周囲を見回して確認すると再び言葉を紡ぐ。


「貴方がたが彼等を許せないというのであれば、相応の罰を与えよう。

 彼等からの報復が恐ろしいというのであれば、僕達は貴方がたの剣となり盾となろう。

 貴方がたが彼等に手を差し伸べるというのであれば、対話の席を実現させよう。

 直接交渉を望まないというのであれば、僕達は両種族間の架け橋となろう。

 だから選択を恐れないでほしい。

 僕達は貴方がたの選択が誇りある選択だと知っているのだから」


 さて、ここまで言えば、何があったとしてもそれは両種族間の自己責任ってヤツだ。

 うん。この件が片付いたらさっさと目的地に向かう事にしよう。


「ーーーーーーーーーー!!!!!」


 などと考えていたら、鼓膜を破らんばかりの大きな歓声が響き渡る。

 え? なになに? どゆこと?

 予想外の事に思わずフィーの事を見ると、やれやれといった様子で苦笑を浮かべながら額に手を置いていた。

 何かを致命的に間違えた感覚が駆け抜けるが時すでに遅し。


「我々ティラニエ大森林に住まう小鬼族一同、貴方様に忠義を捧げます!

 我らが種族は微力なれども、必ずやお役に立ってみせましょう!!」


 周囲に散っていた小鬼達が、各々が思う敬意の表し方で私達、いや正確には私を見ながらそう告げてくる。

 いや、どうしてこうなった? 私は単に彼等の自由意志を尊重するよって言っただけなのに……


「貴方がたの忠誠確かに受け取りました。代わりに私達は庇護を約束しましょう。

 ですが、ただいるだけの者にまで手を差し伸べる程、私達は甘くありません。

 確かに今の貴方がたは力ない種族です。

 けれど、それに挫けず努力する者にこそ未来があります。

 ですのでどうか、私達のこの選択が間違っていたと思わせないようにしてくださいね?」


 予想外の展開に頭を抱えていると、フィーがそう演説を行う。

 どうしてこうなった? いやホントに…………

さて、ここまで読んで頂けた方はいらっしゃるのでしょうか・・・?

なにはともあれ現在のストック分はここまでとなっております。

またある程度書き溜めたら投稿させていただきますので、暫しお待ちいただきたく存じます。

それでは今回はこれまで。

また次回お付き合い頂ける事を心より願っております。

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