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五話『初めての異種族交流・前編』

 さて、これは一体どういう状況なのだろうか?

 いや、いきなりで何を言ってるのか分からないと思うが、私自身何が起きているのかさっぱりわかっていないのだ。


 赤光大熊(グリズリーフランム)との遭遇戦後に、夜営して眠りにつくまではまだ何も起きていなかった。

 だが、目が覚めると周囲に小鬼族(ゴブリン)の団体さんがいて、こちらの様子を伺いながら周囲の調査らしき事をしている。

 そんな状況に放り込まれたら誰であれ困惑するのは仕方ないと思うのだがいかがだろう?


 まだ覚醒しきっていない頭でそんな事をボンヤリと考えていると、コチラに気づいた小鬼達ががなぜか怯えた様子で作業の手を止め、その内の一匹がどこかへ走り去る様子を眺めながら面倒事にならなければいいなぁと心から思うのであった。


「どうなってるんですか!?」


「あ、フィー。おはよう」


「おはようじゃないですよ!

 この状況でどうしてそんな暢気にしてられるんですか!?」


「いやだって、遠巻きに見てるだけだし敵意があるようにも見えないから」


 警戒しなからも、こちらへの敵意を感じさせないという不思議な小鬼達に対し、どう対処すべきかと思考を巡らせていたら、隣で寝ていたフィーもこの状態に気づいたようで、目を白黒させながら問い詰めてくる。


 けどなぁ、魔族相手とはいえ、敵意のない相手をどうこうっていうのは趣味じゃない。

 それになんか怯えてるみたいだから、下手に動くと面倒な事になりそうだし、今は現状維持が正解な気がするんだよなぁ……

 などと考えつつ、突っかかってくるフィーとじゃれあっていたら、先程走り去った小鬼が、他の小鬼より少しマシな装備をしている小鬼を連れて来た。


「ЖТЛОТНЗТОСКК」


 は? 連れてこられた小鬼の方がナニカ喋ってるのだが、何を言っているのかさっぱりわからん。

 依然として敵意を感じないのは救いだが、一体どうしろと?


「ДНООЙЁДДЖДОЛРКЙ?」


「! ОфИЖККЖЖёбЁЛДЙКР」


「ГОЛЗОНЁЗИЛК」


「бЭИЗЙРДСфЛбЮ」


 え? ちょっとフィーさん? なんか普通に意思疎通をしてる様に見えるんですが、アナタもこの謎言語を使えるんですか? おじさんビックリだよ?


「どうやらこの小鬼達は、この森の支配者だった魔物の魔力が突然途絶えた事の調査に来ていたようです」


 小鬼との会話を一度切り上げて説明してくれるフィーは、先程の慌てぶりなど無かったかのような素晴らしい笑顔で説明をしてくれた。


「あ、そうなんだ。それよりもフィーさんや」


「なんですかそのフィーさんって」


「それはどうでもよくて、そんな事よりどこでそんな謎言語修得したんですか?」


「どこでも何も最初から使えますよ?」


「それはつまり、どんな魔族相手でも対話ができるって事?」


「さすがにそこまでは。

 フィルファリア様でしたら、権能であらゆる存在とでも話せますが、分体の私には下位魔族との意思疎通で精一杯です」


 そういえば忘れそうになるけど、この娘女神の分体だったんだ。

 というか駄女神スゴイな。腐っても智慧の女神という事か。

 などと感心していると、フィーと話していた小鬼が周囲の小鬼に声をかける。

 すると、今まで怯えた様子でこちらを窺っていた小鬼達がようやく緊張を解いて作業を再開させる。


「そういえばさ」


「なんでしょう?」


「小鬼達の言う支配者とやらってもしかして?」


「状況から推察すると間違いないと思います」


「だよねぇ。倒しちゃった✩ なんて言ったらどうなると思う?」


「恐らくは、新しい支配者にされる事になると思います。

 魔物相手では意思疎通ができず、隠れ住むしかできなかっみたいですが、シグさん相手でしたら私が通訳できると既に知られています。

 なので、向こうとしては庇護を求めてそうなる様に仕向けてくるでしょう」


「それはちょっとマズイよね?」


「ええ、申し訳ありません。私が迂闊でした。」


「そんなに気にしなくていいよ。

 あの状況なら少しでも情報がほしいから、フィーの対応は間違ってない。

 けどそっかぁ、この場に縛られるのはよろしくないなぁ」


 今の展開は中々によろしくない状況なのだが、打開策が思いつかずフィーと二人で頭を悩ませるのだった。

 そもそもの問題は、この森一帯を縄張りにしていた赤光大熊がいなくなった事により、空白の勢力圏ができたって事だろう。

 そしてフィーの話から判断すると、小鬼はこの地の中でも弱い種族に分類される。

 だから、新しい支配者に取り入って守ってもらおうとしているというのが現状といった所か?


 魔族に偏見がないので私としては別段、彼等に協力するのは問題ない。

 問題ないのだが、アルジェントの件を考えると、この地に拘束されるという事態は避けたい。

 ならば彼等を見捨ててしまえばとも思うのだが、寝覚めが悪いし統率しやすそうな駒を取り逃がすというのも悪手の様な気がする。


 さて、どうしたものか……

 妙案も思いつかず手詰まりか? などと思案していると、小鬼達がざわめき出し慌ただしく警戒態勢に移る。

 またなにか、面倒事が起きそうな予感を覚えながら、彼等の視線の先へ目を向けると犬人族(コボルト)の団体さんが現れた。


「ЖДТСфИГДС」


「КЭОф・ЁБИфТ」


「ДДЗЛКЁфЭ」


「ДЁКфИРГЗГНЖ」


 うん。なんか深刻そうに話をしているのはわかるんだけど、何を言ってるのかさっぱりわからん。

というか、魔族が現れる度フィーに通訳を頼むのもなんか手間だし申し訳ない。


世界の法則(アカシックレコード)の記述で限定改変が可能な項目を確認しました】


世界の法則(アカシックレコード)の記述を改変しますか?Yes/No】


 ちょっとどうにかできないかなぁ……

 なんて真剣に悩んでいると、なにやら便利だけど物騒な気がする選択を突きつけられる。

 だけどまぁ大丈夫でしょ? と根拠の無い自信に後押しされ、Yesを選択した。


【対象の意思を確認しました】


世界の法則(アカシックレコード)の改変作業を開始します…………SUCCESS】


世界の法則(アカシックレコード)の改変に成功しました】


世界の法則(アカシックレコード)の改変に伴い、スキル:智慧の女神の加護の権能が解放されました】


【権能:魔族言語を獲得しました】


 はい来た! あの駄女神はどうでもいいけど、加護が優秀過ぎてとても助かります!

 これで小鬼や犬人の会話がわかると思うんだか……?


「雑魚共がこんな場所で何をしている?」


「えぇとですね、支配者様の魔力反応がなくなった原因を探ろうかと」


「それで? なにか成果はあったのか?」


「まだ始めたばかりですので生憎と……」


「はん! やはりな。貴様らの様なゴミには荷が重いようだ。

 ここは俺達に任せて貴様らは邪魔にならん様、さっさとねぐらに帰るがいい」


 あ、コイツムカツク。

 得体の知れない私達に対して、紳士的な対応をしてくれた小鬼達に対して、居丈高に言い放ち嘲笑している犬人達。


 前世での経験上どちらも等しく雑魚だったし、今世でも直感を信じるならば、やはり私にとっては敵にならないヤツらが調子に乗っている姿は、見るに耐えないものがある。

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