第2話 高校生の俺?
「社畜、辞めたいですか?」
まただ。この謎発言。
「じゃあ逆に、辞められるんですか?」
「そうじゃなきゃ、聞きませんよ?」
そりゃそうか、と俺は考えを改める。
「いや、でも俺、辞めちゃったら食っていけないんですけど…。」
「先にプラン提示した方が良さそうですね」
そう言って男はタブレット端末を出してきた。
「突然ですが松坂さん!おめでとうございます。貴方は、当社『OMC』の新プロジェクトの被験者に当選しました!」
「…は?」
そんなのに応募した記憶もなければ、OMCなんて会社は聞いたこともなかった。
それに、それが社畜を辞める事と関係性が見えない。
「新プロジェクト、その名も「社畜の1年青春旅行」!貴方は1年間、高校生としてスクールライフを楽しめるわけです!」
全く話についていけない。
「高校生って…俺もう26の、四捨五入しちゃったら30のオッサンなんだけど。いくら何でも無理だし、会社だって…」
「松坂さん、私に魔法が使えると言ったら、あなたは信じますか?」
「信じない」
魔法。小学生の時憧れていたヒーロー、信じていた、かっこいいビームが出せるヒーロー。その真実を知ってから、当時純粋な子供だった俺は裏切られた感じがして、そういう空想の様な、存在しないものの事が嫌いだった。
「まぁ、魔法は使えませんけどね。松坂さんを高校生にする事ぐらいは出来ます」
本当にこの人は頭がおかしいのかもしれない。俺は悟った。
「目を瞑ってください」
疲れていたので、俺は寝るつもりで、いや、僅かな可能性を、信じてはいないが、とにかく目を瞑った。
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「おはようございます。ぐっすりでしたね」
「?!」
目の前には、また、あの男。窓に目を移すと太陽が照りつけている。
「い、今何時だ?!会社が…」
「何言ってるんですか、16歳の子供が。学校に遅刻してしまいますよ?」
あぁ、そうだ、この人はちょっと頭が…残念な人だった。
とにかくシャワーを浴びよう、雪さんに会うのだから、不潔は絶対に駄目だ。
そう思って洗面台に向かった。
「え?!?!?!?!?!」
肌がスベスベ。シワがない。ヒゲも。そして…なんかえっちぃ事考えられる!
「ちょ!ど、どういうことだよ!!!」
「だから、言ったじゃないですか。貴方は今日から藤山高校に転入する高校2年生。」
「ど、どうやって…」
「場所はネットで調べて下さい。制服、必要な鞄等は、もう準備してありますから。それでは私は用がありますので失礼します。」
「えっちょ、待っ」
男は足早に部屋を出て行ってしまった。
どうする俺!
何だかよく分からないが、男の言うことは本当らしい。見た目も若返り、制服も準備してある。
これはいけるのでは?
簡単に脳内会議を終わらせた俺は、単純にも制服に着替え、家を出た。