孤影悄然の猟犬~prologue2~
籐歴120年、世界は大きく4つの地域に分裂しました、一つは神領、神様とその従者が住む大規模な宗教地域、その規模はすさまじく世界面積の4分の1を確保していました、次に魔領、魔族の地域であり多くの魔族が暮らす多種族地域でもあり世界の8分の1確保しています、そして人領、人間の領地でありその規模は魔領同じく8分の1、そして最後に混領、これは魔物という凶暴生物のせいで未開の地でありました
そんな世界の人間領の中でも北部、最も混領に近い領地、魔物を倒すための傭兵集団の一員、冒険者として私、マーガレットは仕事をしていました、冒険者の日々は大変ではありますがとっても充実し、もう10年も冒険者をする上級冒険者として生計を立てています
――冒険者組合、待合所ホール
木製の内装の組合に大量に並べられた椅子や机、冒険者は机を囲み椅子に座り込むと酒を飲んでは騒いでいる、そんな組合内の最も受付に近い席に私は一人酒を飲んでいた
冒険者は一日一仕事を目安として仕事をしており、私は軽い竜討伐を午前中に済ませ、今日はもうここで酒を飲むだけでした、何ということはありません、一日に何度も仕事をすれば命がいくらあっても足りはしない
「すげえ、今日も一人で竜を殺したらしいぞ」
「さすがは孤高の猟犬だ」
冒険者の中では少し私は有名であった、孤高の猟犬、なんて言われ、ありとあらゆる依頼を一人でこなす冒険者なんて言われる、しかしその実際は、、、仲間がいないだけであった、単純に孤高なのではなく孤独であった、仲間もできないまま冒険者を初めて、経験を積んだために仲間がいなくいても何とかなる、それ故仲間ができない、そして経験をまた積むの繰り返しでいつの間にかこのありさまだ
「ああ、、、仲間、とまで行かなくとも、、、友人ほしいな」
独り言でそう呟いた、どんだけ寂しいのかという感情が後から襲い、虚しさはさらに増幅する
「メグさん~、組合長がお呼びです、至急どうぞ」
受付員が受付台から呼び込んできた、受付員はラフな服を着こんでいるものの仕事量は多いようであり目の下は少々黒ずんでいる
「了解!!」
組合長の招集、それは大体めんどくさいことを頼まれることが多い、緊急性のある依頼を受けさせられたりちょっとした事務仕事を任されたりと大した金にもならないのに手間のかかる仕事を任される、しかし冒険者組合に所属する以上組合長には逆らえなかった
私は普段立ち入らない受付の奥に入り、組合長室のドアをノックした
≪コン コン コン≫
ノックと同時にドアが勝手に開く、魔道が仕込んであるのであろう、部屋の中は相も変わらず悪趣味な魔物のはく製が飾られている、特に角付き白兎の剥製など趣味が悪すぎる
「マーガレットここに!!」
私は左手を額に当て敬礼をする、すると小汚い中年の組合長はゆっくりと立ち上がり敬礼をする、服装は冒険者らしからぬ綺麗な金の刺繍を施したジュストコールにベストとまるで貴族のような身なり、恐らくは貴族相手に仕事が多いためであろう
「君にえっと、、、あれだ、うん調査団長指名が決定した、君は3日以内に調査団を結成、仕事に、、当たるように、、、、第二次調査団は2日前に壊滅した」
調査団、それは魔物討伐依頼のいわば製作者、魔物を観察し行動パターンを記録し地形を把握し隠れて静かに討伐依頼の基礎情報を収集する、通称【上級冒険者の墓場】、難しいうえに危険でしかも一日に複数の仕事をこなさなければならない、最悪の仕事の一つである
「了解しました」
しかし私はこれを断ることはできなかった、組合長命令は絶対、これが規則であった、、、
「、、、すまないね、マーガレット君」
組合長の少し後ろめたそうな声を後ろに私は部屋を後にした、目の前が暗い、普段うるさいはずの組合は3割減で静かに感じる
正直私は調査団をやることに抵抗はない、確かに大変かもしれないけれど誰かがいつかやらねばならない仕事である、仕方があるまい、そう思う、しかし、だがしかし私が調査【団長】なのが問題である、、、どうしよう、調査団員は正直初級冒険者でも私は構わなかった、しかし頼んでもこれを引き受けてはくれないであろう、自分の力相応の仕事しかみんな引き受けない
上級冒険者を誘うにしては調査団はあまりに不評、上級冒険者の墓場と呼ばれるそれに入る馬鹿はそう相違ないであろう、冒険者とは結構損得で動く
私は組合のホールに戻ると椅子に座った、窓際の席である、窓の外を虚ろに眺め私は茫然と座り尽した、立ち尽くすには足に力が入らない
こういう時、友人がいればよかったのであろう、仲間なら尚良、そういう人物に頼めば団員はすぐに見つかったのだろう、しかし私は一人、孤独な番犬だ、孤独な番犬の頼みなど誰も聞いてはくれない
「はぁ、、、どうしたものか」
私は席を立つと気分転換に外をでた、現実逃避とも取れるであろうか、しかし組合にいても現状に変わりはない、もしかすれば外に行けば何かあるのでという淡い希望もあった
にぎやかな街を少し進み、町はずれに出る、街のはずれは木々が立ち並び林道は街外門と呼ばれる防壁への門まで続く、今では組合の近くに門があるためいいが、2年前までは組合付近に門はなくこの道を通り外に出たものであった、当時は軽装備ではなく重装備であったことも懐かしい
風は何処までも通り過ぎる、林道は今でも商人が通るようであり草は生えていなく、道の横にはびっちり木々が生えそろい、周囲に人はいなく私の足音と胸当て膝あてなどの装備の金属音は寂しく響いた
「はぁ、、散々だな」
独り言が口から洩れる、しかし風の音はまるで波の音のように言葉という私を飲み込んでは消えていく、それならばと私は独り言を漏らしながらさらに奥へと進んだ
「あれ?」
しばらく進むと道に先に何か白いものが落ちている、真っ白な、、、そう、まるで動物の毛皮、、というには少し名が、まるで女の子の髪の毛を白くして捨ててあるような、、、
「な、生首か?」
私は白いそれに近づく、白いそれにはしっかりと胴体がひっついていた、服装が緑色で草に見えていたため白い髪の毛が目立っていたのであろう
私はその少女の顔を覗き込んだ、少女は少女でなく少年であった、若々しいがわずかに顔が凛としている、髪の毛が長く気が付かなかったが美青年だ、しかしこの変わった髪色に面妖な服、変わっている
「おい少年」
私は話しかける、しかし返事はない、まさか意識がないのであろうか
「おい少年!」
返事はない、まさか死んでいるのであろうか」
「おい、少年!!」
少年は目を覚ますとゆっくりと体を上げて座り込む、目の色は驚くほどに金色だ、まるで色素がなくなったかのような、そう、肌の色も髪の毛の色も目の色も、その少年には色がとことんなかった
「君何やってるんだ?、大丈夫か?」
しかし少年からは返事がない、無視したというより混乱が伺える、驚きの表情で少年は周囲を見渡すと考え込むように下にうつむき、そしてまるで色物を見るかのように私を見ると少年は首を傾げた
よほど疲れているのであろう、疲れているのはつらいものである、私も疲れている
「おいおい、何ぼうっとしているんだ、大丈夫か、とりあえずそうだな、、、うん、お茶でも奢ろう」
私は少年の手を掴んで引き上げた、少年はその小柄な見た目に反しものすごい重量感で私は思わず数歩後ろへ下がっていく、少年の重量感はまるで鎧でも着ているかのようであった、
「あ、ありがとうございます」
「なに、困った時はお互いさまってね」
少年は少し安心したのかその表情を少し緩めた、緩んだその表情は少々可愛らしく、風に棚引いた白い髪の毛と相まって芸術的ともいえた
私は少年の白い肌に着いた泥を裾で拭うと名前を尋ねる
「そうだ、君の名前、名前を教えてほしい、私はマーガレットっていうんだ」
少年は少し考え込む、もしや自分の名前がわからない、、、ということはないであろう、警戒しているのであろうか、はたまたここら辺では珍しい名前で名乗りずらいのか
「えっと、、ろ、、、コンジ―、、、コンジ―・ドールといいます」
「変わった名前だね、じゃあドルって呼ぶことにしよう、じゃあ行くよ、ドル」
案の定変わった名前であった、しかし名前だ変わっている程度では驚かない、冒険者の中にはとんでもない名前など割といる、それに比べればまだいい方だ
――孤影悄然の猟犬は白き少年によって動き出す、友人を前に少女は歩みを進めた。
読んでいただきありがとうごいざいます、今回でプロローグは終了、次回から本編に入ります、
今後とも呼んでいただけると嬉しいです、よろしくお願いします。