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陶犬瓦鶏の残骸兵器 ~prologue1~

 西暦3100年、人類は自ら作り上げた文明に蝕まれ、遂にはその文明を維持できなくなった

――人類は禁忌の人類を制作した――

 人間を作り人間を壊し人間を昇華させた人類は、新人類と名乗る自ら作り上げた人類と戦争になり数千年の人間の歴史は新人類との戦争の100年で終わりを見せた




――旧日本領・硫黄島


 何の因果か、東国最後の砦旧日本領、それは人類と新人類の戦争がロシアより始まり、その戦火が広がると同時に要塞化された人類最後の砦であった、そして人類の最後の武力抵抗は大昔に大日本帝国という国が戦争をした際軍隊が全滅した土地で人類軍の全滅を迎えた、既に海は血の色に染まり雨は地上の血をまるで島を染め上げるように血を広げた。


「嗚呼、なんてずるいんだよ、、、あれ」


 そんな硫黄島戦の中、旧人類軍兵士の自分は人類群の迷彩服を着こんで、双眼鏡と骨董品の機銃を片手に草むらに這うように隠れていた、体に巻き付けた爆弾を、新人類軍が来たら突撃した爆発させるためである

 酷いものだ、新人類には羽があり、体の強度は凄まじく戦闘機相手に生身で戦える、口からは光線を出し殺意を読んで攻撃を回避し銃弾の雨を潜り抜け人類相手に素手で戦争に勝利する、いったいそんな人類にどうやって勝てばいいのであろうか


「ははは、人類軍は何処に隠れているのだろうな」

「さあな、あいつらは臆病者だ」

「がはははは」



 汚い笑い声、新人類軍の兵士3人は青と白の服を着て銃を片手に歩いている、その服は空に隠れやすい迷彩であり本来は空からの急降下強襲を目的としていた

 しかし彼らは空を飛ばない、というよりも恐らく自分の姿にもはや彼らは気が付いている、恐らく自爆覚悟であることも気が付いているであろう、それを承知で彼らはいやらしい眼を細めて気が付かない振りをしていた


≪ジャリ≫


 俺は砂を踏みしめながら新人類軍に走っていく、酷いものだ、彼らは俺が立ち上がった瞬間にはもう銃を構えていた、やはり気が付かれていたのであろう、俺が数歩歩けば自分の体はハチの巣になる、点の攻撃は徐々に自分の体を焦がし、数秒後には倒れこんだ


(ああ、地面が、近い)


 幸い体の爆弾は無事であるが自分の頭は既に穴だらけであった、そんな自分の体を無理やり起こし、爆弾を守るように抱えると俺は新人類軍に向かいゆっくりと歩みを進める、雨に乗った血は新人類軍に向かい前進し、その速度より少し早い程度で自分も進んでいる


「なんだあれ!!」


 新人類は慌てる、撃っても死なないそれは着実に自分たちに近づいた、頭は既に取れている、腕とてくっついているだけでただの肉片、足は既に骨が見えいる、しかし歩みは止まらない、爆弾を抱えた劣悪種が自分たちを殺さんと歩みを止めないが故焦りに焦り、最後は能力である熱正砲という口から放つビームを放つために口を開けた


「と、とまれ!!」


 口にためたエネルギー、しかし俺の歩みは止まらず進み、新人類兵のそれは明らかに間に合わないことは確実であった、銃はいくら撃っても倒れない、焦った兵士はついには銃を捨て手を前に出し俺の行進を拒否した


「嗚呼、止まれるのなら止まっているさ」


 彼らの目の前までたどり着く、すると兵士の一人のエネルギー装填が終わり、次第に口元が青白く光った、そうして彼の口からは高熱量のビームが俺と俺の腹部の爆弾を貫いた、爆弾の火薬には火が付き上半身がなくなった俺の体ごと、新人類兵ごと爆発する


≪ド、、、、ガン!!!!!≫





 俺が生まれたのは2300年であったあ、人類がまだ霊長の万物だったころ、人類が開発していた人類クローン計画、現新人類創成計画の前進の計画で生まれた人類であった、このころはただ人類の模造品を作る目的であり、そんな中俺が生まれた


 俺の肉体は20才で成長が止まった、それと同時に髪の毛は白くなり、研究に必要ないと切らずにいた髪の毛は切ってもその長さに戻るようになる、人類が生み出した最初で最後の不老不死、それが俺だった、、、

 

 不老不死とは眩しい、永遠に生き、永遠に世を謳歌できる、まさに素晴らしい人類、と言われたが新人類が生まれてからは特攻ばかりやらされた、戦闘機で突っ込み爆弾を括りつけ突っ込みついには潜水艦ごと突っ込んだ、人類は生きることを拒否した俺に冷たかった


――俺がもし、不老不死でなければもっとみんな優しくしてくれたかな


 という感情が絶えず頭によぎる、よく不老不死の難点に挙げられる長すぎる寿命よりも、人として扱われないことのほうがよほど寂しかった。






「は、ははは、は、ははははははははは」


――不老不死は高らかに笑う、爆散した土地と千切れた新人類を踏みにじり高らかに、盛大に、獣のように笑う、化け物のように笑った


 可笑しくなってしまった、自分は先ほど爆散したはずであるのにさも当然のように爆心地の中心で復活している、どういう原理か服まで綺麗に復活していた、自分は生きている、生きてしまった、生きている以上自分は永遠に殺されなければならないという現実はあまりに苦しかった


 俺は立ち上がった、その場を立ち上がり、重たい体をゆっくりと、ぐったりと進めて海辺まで歩く、先ほどの戦闘地点から海辺までは130mほどであり、周囲の阿鼻叫喚の地獄を眺めながら歩いていく

 道中は同胞、、、ではない、旧人類軍の亡骸が散乱し、中には遊ばれて死んだのか不自然に四肢がないだるまのような死骸も存在した、それを見ると新人類も旧人類同様に蛮族であることがよくわかる


 海辺に着いた、海辺は戦艦の煙で黒くなった空気と死んだ人間とオイルの色で変色したどす黒い海がどこまでも続く、魚は海を浮き、海はカラスのみが跋扈する

 そんな中俺はゆっくり歩みを進め、砂浜から海に入り込んだ、海の水は表面こそ汚いが中身は綺麗であり足に波が当たると少々綺麗な海が見える


「はは、ははは」


 海を進む、次第に水位が上がり胸付近まで海の水が押し寄せる、俺はそんな海をさらに進む、海の中はきっと静かできっといいものであろうと歩みを止めなかった


 不老不死が唯一死んだような感覚になる方法がある、それは溺れることである、酸欠による意識の混濁で無意識のまま死しに続けられる、俺は自殺しようとしていた、それが仮初の死でももはや充分であったのだ,

どうせ余生を諦めるのであれば、せめて故郷の海で死にたかった


≪ジャポン≫


 海に全身がつかる、波に身をゆだね冷たさを感じつつ綺麗な水中を虚ろな目で眺める、感動した、綺麗な海に静かな音、そして薄れゆく意識が愛おしい、きっともう苦しいことはない、その希望はあまりに感動的であった










「ぉ。。。。。ぅ。。」


「ぉぃ。。。ぅ。。ん」


「おい少年!!」




 ここは何処であろうか、、、そうだ、恐らくはどこかの陸に打ち上げられたのであろう、自分の自殺もどきは失敗し人間に見つかった、若々しい女性の声はよく通る、耳が痛い


「君何やってるんだ?、大丈夫か?」


 俺は起き上がると周囲を見渡した、そこにはあり得ないほどの木々が並ぶ、まるで文献で見た森、のような、違う、林道というものであろうか、木々は二桁で立ち並び空は一切濁っていなかった、それに空気がきれいである、まるでよどんでいない、まさか未開の地にでも、、、


――あれ、、、海がない



 打ち上げられたにしてはそこには海が存在しない、むしろ木々が多い時点で恐らくは内陸であろう、それに自分に声をかけた女性、その姿が面妖である、栗色の髪の毛に胸当て、膝あて等の部分的な鉄製武具を身に着けて、しかも目の色はありえないほど茶色で、容姿はおとぎの国のように整っている

 鉄製武具など時代遅れもいいところ、恐らくは10世紀以上前の道具であろう、此処はどこか全く分からなかった


 もしや異世界というものなのではと考察を立てる、異世界、それは資源枯渇時代の人類が考えたものであったはずだ、実は時間旅行をするとその間に穴があり、それを突破すると異世界、別の世界に行けるという仮説があった、しかし資源はクローンバイオという技術ができその計画はお釈迦になった

 そうでなければ今の状況は、新人類が蔓延る世界でこんな古典的な装備を身に着けしかも人間がもう壊滅さしたはずの自然林を普通に歩きあまつさえ自分に声をかける、などという展開になる、それは異世界よりもありえない


「おいおい、何ぼうっとしているんだ、大丈夫か、とりあえずそうだな、、、うん、お茶でも奢ろう」


 女性はそういうと自分の手を掴んで引き上げた、しかし自分の体は見た目より重い、そもそも構造が人のそれでないため女性は少し後ろのめりになりながら数歩下がった


「あ、ありがとうございます」

「なに、困った時はお互いさまってね」


 自分の心は揺れた、そうしてここが少なくともおかしな世界であることに気が付く、自分に手を差し伸べた人類など五百年近い人生で一度もなかった、嬉しいのか感動したのか心臓が音を立てる、此処まで感情が揺らいだのは数百年ぶりかわからない


 女性は少し笑いながら俺の顔を覗き込み、顔に着いていた泥を拭うと優しい目で見つめてくる


「そうだ、君の名前、名前を教えてほしい、私はマーガレットっていうんだ」


 女性のそのセリフに自分は少々こんわくする、名前などなかったからだ、被験番号であればあるのだがそれを求めていないのは流石にわかる


「えっと、、ろ、、、コンジ―、、、コンジ―・ドールといいます」

「変わった名前だね、じゃあドルって呼ぶことにしよう、じゃあ行くよ、ドル」




――陶犬瓦鶏やくたたずの残骸兵器は500年ぶりに動き出す、希望へ天に満ち苦悩は海へと投げられた。

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