不器用な3日
朝9時になった。
僕は誰もいない公園で待っていた。彼女からの返事は来ていない。あの特別な日々は戻らないのかもしれないと不安がどんどん積もっていく。ただ待つことしかできない僕はいつものベンチに腰を下ろした。すると自然と涙が溢れてきた。自分がどれだけ弱い人間なのかを改めて感じ始めた。
「…好きです。あなたが好き。」
誰もいないのに僕は言った。誰もいないからこそ言える言葉を。この先、彼女を見るたび僕は後悔するのだろう。恋なんて僕には似合わないのだ。
「恋をしたときに大切なもの。それはね気持ちを伝えること。愛を伝えること。女の子は不安をたくさん抱えてしまう。だからたくさんの愛をあなたが伝えてあげなさい。」
母は僕に毎日のように言っていた。【愛を伝える】僕に出来るはずのないことだ。でも諦めてはいけない。そう思うことは出来る。それが大切なことだということぐらいはわかっている。1日を費やして考えたこと。それは僕のできる気持ちの伝え方。諦めのつかないこの気持ちをあなたに捧げるために。考えた方法。
「…やっぱり無理だよね。こんなこと。」
ははっと笑い気持ちを誤魔化した。抑えられないこの気持ちを僕は捨ててしまおう。そう思い始めてしまっていた。
「…ごめんなさい。」
頭を抱え俯いた。
「あなたが…好きでした。どうすればあなたはこの気持ちを聞いてくれますか。」
涙とともに気持ちを投げ捨てていた。諦めていた。もうあの日々は戻らないことを実感していたのだ。
「遅くなってごめんなさい。あなたの気持ちを…聞かせてもらえますか?」
顔を上げると彼女がいた。腫れた目で僕に笑いかけていた。少し息切れをしている。多分走ってきてくれたのだ。
「…どうして?」
僕は迷った。また嘘をつかれていたらどうしよう。そんな不安がまた横切った。
「どうしてって。あなたの心を傷つけてしまった私が言うのもおかしいのかもしれない。でも私はまた君とここで話をしたい。…ダメかな。」
いや。ダメなわけがない。傷つけてしまったのは僕も同じなのだから。
「…僕は人と話すことが苦手だし、なにをするにしても不器用な人間なんだ。だから…後ろを向いていてほしい。」
彼女は一瞬戸惑ったが静かに後ろを振り向く。僕は大きく息を吸い込んだ。
「僕はあまのじゃく。」
大きな声で叫んだ。
「僕は、君のしたことを許すことはできない。君のことは嫌いだし、顔なんて一生見たくない。同じ部活だからずっと一緒に帰ってたけどほんとは嫌だった。大っ嫌いだった。あの時間が大切なわけないじゃん。誰かのものになってほしい。僕を見ないでほしい。お願いだからっ…!」
彼女に罵倒を浴びせた。顔をみて言えるはずはない。もう嫌われてもいいとさえ思う。普通に言葉にして言うことのできないからといってこんな方法をとってしまった。僕はただの卑怯者だ。
「本当に…?」
彼女は僕の方を向いて言った。この前の僕の言葉を繰り返すように。
「本当だよ。僕は恋愛なんてできないんだ。君を信じることができなくてごめんね。」
彼女は黙り込んだ。僕みたいに反論をせずに涙を浮かべた。多分信じてくれているのだ。このまま僕は本当のことが言えるのではないかと思った。目を閉じまた息を吸い込んだ。
「僕は…君が……君が…好きだ。」
たった一言の言葉を。本当のことだから。本当の言葉で言いたい。そう思うから。伝えなければいけないことを言葉にして声に出して。僕は言うことができた。
そのあとはまた二人でベンチに座って話をした。今までのことや本当のことを話した。でも僕はやっぱり言いたいことや伝えたいことをしっかりと言うことはできなかった。でも彼女は笑ってくれた。
「ゆっくりでいいよ。」
そう言ってくれたのだ。
4月3日はエイプリールフールから3日が経った日。
今日は【変な事をしてもいい日】。
僕は彼女に変な事をした。
僕は僕のために。
この日の暗示を使った。
いいのかわからないけど。
こんな告白をしたことに後悔はいているけれど。
今までの中で1番幸せな日となった。
いつか彼女にこの事を伝えたい。
わかってもらいたい。
だから。これからも不器用なりに言葉にして伝えていこう。
君を信じて大切にしていくんだ。
『大好きだよ。』
これで完結です。
今回は無理やり二話で終わらせたので詰め詰めな物語になってしまいました(-。-;
次からはしっかりとした物語をつくっていくのでよろしくです(^-^)
2日目も書く気なのでよろしくです。