嘘の1日
昨日、好きな子に呼び出された。
そして告白された。
でも、不器用な僕は彼女を傷つけてしまった。どうすればいいか必死に考えたけど小さなことしか思いつかない。そして、ただただ過ぎていく時間が怖かった。辛かった。祈ることすら恐ろしく感じていた。
朝、起きると1通のメールが来た。
やっとの思いで聞き出せた彼女のアドレスが携帯に映し出されていた。僕は急いで開く。
『おはよう!ちょっと今いいかな?』
嬉しかった。こんなことが起きるなんて奇跡だと思った。僕は急いで返信する。
『おはよう。どーしたの?』
このドキドキがバレないよう。頭を真っ白にしながらも送信ボタンを押した。数分経つと返事が返ってきた。
『実はね。君のことが好きなんだ。付き合ってくれないかな?』
なんてメールが入った。ドキッとした。メールでは告白なんてしないと言っていた彼女がメールで告白をしてきた。僕はまた急いでメール文を打つ。
『本当に?』
信じられなかった僕はそう返した。また少し時間が経った。次は携帯がなった。
「もしもし…。」
僕は震える声で電話に出た。
「あ、おはよう!ごめんね。友達がかってに送って…。」
僕はその時思い出した。
「エイプリールフール…だよね。」
そう。嘘だったことに今気づいた。はじめから疑わなければならなかったのに。僕は信じてしまったのだ。
「そ、そう。…本当にごめんね。」
彼女は申し訳なさそうに言った。
「…別に気にしないで。慣れてるから。」
そう言って電話を切った。【慣れている】絶対にそんなことないのにそんな言葉を使って自分を慰めた。
午後になりまたメールが入った。
『あの、今からいつもの公園に来てくれないかな?ちゃんと謝りたいから。』
【いつもの公園】そこは帰り道が途中まで一緒の彼女と別れてしまう道の手前にある公園。そこで帰りの時間が合う日は一緒に帰る。公園に着くとそこで話をしてから別れるのだ。部活が一緒だからこそ知れたことがたくさんある。絵しか描けない僕に舞い降りてくれた幸運だと思っている。
『分かった。今から向かう。』
そう返して家を出た。
公園に着くともう彼女はいた。
「こんにちは。」
彼女はぎこちない笑顔で笑いかけてきた。
「どーも。」
自分の気持ちが漏れないよう必死に平常心を保つ。
「あの…さっきはごめんなさい。知らないうちに友達に携帯を取られちゃって。」
また申し訳なさそうに彼女は謝った。
「別にいいってば。そんなに謝らないで。」
僕は酷いことをされたと思っているが彼女に謝って欲しいわけではない。それは望んでいない。
「…じゃあ僕は帰るね。」
でも願っていたことはある。それはこの関係が崩れないことだ。内心今はホッとしている。僕が後ろを振り向こうとしたとき。
「待って!」
呼び止められた。彼女が僕の手首を掴んでいる。
「なっなに!」
これには僕も驚いてしまった。
「実はね…私、本当に君のことが好きなの。よかったら付き合って欲しいんだ。」
彼女は下を向いて言った。だからどんな顔をしているのかはさっぱりわからない。
「…これも嘘…なの?」
僕は少し笑ってみせた。
「違うよ!これは本当なの。さっきは友達がやったことだけど。…本当に私は君のことが好き…。」
やはり顔は見えない。僕は口を開く。
「あはは、そんなに頑張らないで。嘘だってもうわかってるんだから、二回も騙されないよ。」
僕は急いで口を押さえた。違う、違う。こんなことが言いたいんじゃない。僕は君のことが…
「嫌だなぁ。僕をおちょくるのがそんなに楽しい?面白い?こんなことされるなんて思わなかったよ。」
言ってしまった。もう取り返しがつかなくなってしまった。彼女が顔を上げる。
「そっ…そうだよね。ごめん。ごめんなさい。」
彼女は泣いていた。頬を赤くして、泣いていた。それを見て美しいとさえ思ってしまうほどこんなに最悪な僕なのに。こんな僕が彼女へ絶望を与えてしまった。彼女がこんなことを、こんな嘘ばかりを重ねて人を馬鹿にすることはないと知りながら。そういうところを一番知っているは僕のはずなのに。言葉が出ない。ただ一言、言うだけなのに。それが言えず家に帰った。泣いている彼女を置いて帰ってしまったのだ。
今日は【エイプリールフール】みんなが嘘をつく日。午前中までの不思議な日。僕は人を傷つけ、けなしてしまった。好きな子にあんな顔をさせてしまった。
次の日になった。今日は僕にとってありがたい日だ。僕へ都合のいい暗示がかかっている日。僕はまたなにもできずに一日を過ごしていた。今日は4月2日【本当のことしか言ってはいけない日】。日付の変わる頃、僕は彼女に1つメールを送ったのだった。最後の願いを込めて。
『こんな遅い時間にごめん。明日の朝9時にいつもの公園に来てください。待ってます。』
今回は1日過ぎましたがエイプリールフールの話です。4月の1日2日3日はそれぞれ意味のある日らしいのでその3日間をテーマに書きました。ツンデレとか不器用とか可愛いっすね(#^.^#)
閲覧ありがとうございます!よかったら二話目も読んでみてくださいなm(__)m