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NEO WORLD  作者: AGE
6/7

町にて。

「…本当にそれで良いのか?お前さんは若い…まだ希望は有るだろう…」


「そんな言葉で俺が考え直すとでも思ってんのかよ?…希望が有ろうが無かろうが俺は俺のやるべき事をやんのさ。」


「…そうか…もはや何を言っても無駄の様だ…。…ならば行け、行ってお前の任を確りと果たしてくるのだ…」


「ああ、分かってるさ。…じゃあな。お互い生きてたら又逢おうぜ?」





あれから夜が明ける迄歩き続けた。

何と長い夜だったのだろうか?この数時間の間に俺は様々な事を記憶した。

この世界には俺達人間や動物、昆虫等以外に住む者達が居る事、それらには様々な種類が居る事…そして一番衝撃的だった、傍らに共に歩く彼等が人間では無いという事。

だが今の俺が知りたい事はそんな事じゃない。俺が求める物はただ一つ、俺は誰なのか、だ。

その答えを求め今俺はルルーから教えて貰った町を目前にしている。

見た限りでは小さな静かな町、田舎の様なイメージを受ける。

しかし町への出入りの規制は確りしているらしく、恐らく門番なのだろう入り口の前には体格の良い男が二人、不審者を見る様な目で此方を見詰めている。

俺の後から付いて来る二人を確認した後、その門番に向かい足を進める。


「止まれ。お前達、見ない顔だが何者だ?」


案の定止められてしまった。

町を外敵から守る門番だ。当たり前と言えば当たり前なのだが、門番二人を間近で見るとその筋肉質な身体が一際目立ち、力ではかなわない事を理解させられる。


「…俺達は怪しい者じゃない。」


疑いを掛けられる事は何か嫌なものだ。身分を証明する物が有るにも関わらずとっさに言葉を返す。


「怪しいか怪しくないかは俺達が決める事だ。今の事世界の状態は知っているだろう?無闇やたらにお前達の様な奴を町に入れる訳にはいかんのでな。…何者かを証明する物が無いのなら悪いが此処から立ち去って貰おうか。」


鋭い眼孔が俺達に向けられている。この侭では町に入る事は無理、ならばあれを使うしか無いだろう。

懐から折り畳んだルルー直筆の紙を彼等に見せ付ける。

これでこの町に入れる筈。そうしたら次はシールという老人を探さなければならない。顔を知らぬ人物を探すのは一苦労だが、この町の大きさならば見付かるのは時間の問題だろう。

などと考えつつ俺は紙に目を通す門番達を見詰め、返事を待つ。


「ルルーレイン…ああ、あの馬鹿な研究者か。奴の知り合いなのか?お前達。」


門番の一人が馬鹿にした様な笑みを浮かべながら此方に問い掛ける。

すると突然、その言葉に反応する様に俺の背後から声が飛ぶ。


「ルルー様は馬鹿では無い!…お前達が馬鹿なのだ…」


ユメが悲しそうな表情で彼等を見据えていた。

ルルーが馬鹿?どうやら門番の彼等はルルーの事を知っているらしい。しかし慕われている様子は無い、というか馬鹿にされている様だ。

どうやら彼等町の人間とルルーの間には何か有るらしい。


ユメの言葉を聞いて門番達は不機嫌そうな表情を浮かべている。この侭では不味い、町に入れて貰う事が出来なくなってしまうかもしれない…そう思った瞬間、次はテツが遠慮がちに門番に告げる。


「あ…すみません……僕達は…その紙に書いてある通り…ルルー様の元から…来ました…。もし…それでも疑うのなら…今直ぐにでも連絡を取って貰えれば…分かる筈です…。」


門番達はユメに何か言いたそうだったがテツに雰囲気を乱された為か渋々といった様子で道を開ける。


「本当はあの馬鹿の知り合い等入れたく無いんだがな…ほら、さっさと通れ!」


どうやら俺達の身分は証明されたらしい。馬鹿と言われながらもルルーはやはり信用はされている様だ。

俺は安堵の表情を浮かべ門番達の前を通る。

再び馬鹿と言われた為か彼等をユメが睨んでいるがテツがこの場から早く逃れたいとばかりに彼女の背後から急かしていた。


町の中に進むとやはり早朝の為か人はまばらにしか居ない。しかしこの時間からも既に開いている仕事熱心な店も幾つかあり、そこに視線をやると様々な物が売られているようだ。多少では有ったが手持ちの金は有った筈、食料は此処で調達出来る。


町を見渡しているとユメが俺に向け口を開く。


「先程は申し訳有りませんでした…少し感情的になってしまい危うく私のせいで町に入る事が─」


「─謝る必要…無いよ…?もし…ユメが言わなかったら…ボクが言っていたと思うから…。…それに…ユメが言ってくれて…スッキリしたし…。」


言葉に割って入る様にテツがユメを向け告げる。その表情は何処か満足そうだ。

その言葉を聞くもユメは申し訳無さそうな表情の侭だった。

余程自分の無責任な発言を悔いているのか、それともルルーを馬鹿にされた事を未だに気にしているのか。

兎に角町に入れたんだ、そんな話はもう気にはしない。早速シールと呼ばれる老人を探さなければ。

そう思い立つとテツが次は此方に告げる。


「…ボク達は…此処でお別れ…です……この町でやる事が有るので…。…自分探し、頑張って下さい…」


突然の話に俺は戸惑うも記憶を振り返れば彼等は町迄の付き合いだと始めに聞いたのを思い出す。

そう言えばテツとユメは俺をその場に置き去りにし、町の中へと消えて行く。


微かな孤独感に襲われ、俺は暫くその場に立ち尽くしていた。

この侭此処に立っていても仕方無い。

取り敢えず視界に映る町の住民からシールと呼ばれる老人の家の場所を聞き出さなければ。

しかしやはり町の外から訪れた者だと分かるのだろう、訪ねようと町人に近付くと俺を避ける様にその場を離れていってしまう。

俺はそんなに怪しい人物に見えるのだろうか?などと考えながら溜め息を吐いた。

余所者には厳しいと門番が居る時点で覚悟はしていたが些細な会話も出来ないとは思ってもみなかった。まあこんな時間だからというのも有るのだろうが。

仕方無く近くに見える店に向かった。店を開いている以上、客から逃げる事は無いだろう。


「すまないが…シールという人物の家を教えて貰えないか?」


案の定店に居る男は俺の言葉を聞いてくれた。そして男は気さくに笑いながら俺に向けて告げる。


「アンタ、旅のモンかい?そうだな、俺の店のモン何か買ってくれたら教えてやるよ。」


商売上手な奴だ。冗談の様には聞こえたが俺は一刻も早く探し人の元に行きたいが為になけなしの金で手元に有ったナイフを買った。

護身用位にはなるだろう、とそれを懐に忍ばせる。

そして俺は再び店の男に問い掛けた。すると男は幾件かの家の先に見える青い屋根を指差す。


「あそこがシールさん家だ。…此処だけの話、あんまりあの爺さんと関わらねえ方が良いぜ。」


あの家が探し人の家だという事は分かった。しかし彼が次いで告げた言葉に俺は疑問を抱いた。今から会う人物と関わるな、など何を言っているのか。

不思議そうな顔をする俺に店の男は小声で話す。


「あの爺さんがXの事に詳しいってのは有名な話だろ?アンタもその事を知って会いに来たんだとは思うが…実はXと今でも関わりが有るらしい。」


男はとても重大な事をする様に深刻な表情で告げる。しかし俺の様な見知らぬ者にその話をするという事は秘密でも何でもない、ただの噂なのだろう。

だが彼はXと関わりが有るというだけで危険な人物だと決め付けている様だ。きっと町の皆もそう考えているのだろう、指で示された家の近辺にはやけに人気が無い。


俺はその話に上辺だけの驚いた表情を見せ、礼を言いその場を後にした。

目標が定まった為に足取りが軽くなる。一人残された孤独感から、自分を知る事が出来る期待感に変わっていた。

店からは少し遠いと思っていたが、歩いてみると思ったよりも近くに感じる。

ああ、シールとはどんな人物なのだろうか?俺を知っているのだろうか?


不安、緊張、期待が入り混じった心境の中、俺は探し人の家の前へと辿り着いた。


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