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結局この世はセーブ&ロード

作者: 小松菜大佐

お久しぶりです!


新作予定、その二です。

ああ、やり直したい! そう思ったことは皆さんよくよくお有りだと思います。そんな夢を叶えてくれる魔法を持った主人公の話です。


ところで、ミスをしたままセーブして、ああああループはまっちゃったああああやり直せないぃぃぃ、という経験、ありませんか?

僕が一つ、今まで生きてきた中で学んだこと。


「よお、またお前が一位かよ! 全く、お前には敵わねえなあ」

「そんなことないさ。君も前回より順位をあげてる。上がり幅も大きい。今度油断してたら追いつかれるかもね」

(まあ、それは天地がひっくり返ってもないことだけどね)

「……はぁ、前回も同じことを言われたぜ。いつになったらその日が来るのかねえ」


 それは、この世界はどうあろうと不平等であるということだ。


「す、凄いですっ! 学科試験、またトップなのですか!?」

「それほどでもないよ、ただ今回の勉強が都合よく出た問題に合致してただけさ」

(それも当然だ。だって、何度も見ているのだから)

「ご謙遜を、です! あなた以上の天才を、天才と呼ぶべき秀才を、私はまだ見たことがないです!」

(……そう言われると、心が痛むな)


 日々の努力、研鑽、大いに結構。天賦の才能? 大いに結構。


「……チッ、次はないぞ」

「うん。今度も負けない。また全力でやろう」

(せいぜいあがくといいよ。勝てるまでやるから(・・・・・・・・・))

「フン。次こそ、その鼻っ柱を折ってやる」


 そんな不確かなもの、僕の不条理で押し流してやる。


「くかか、お主、学科のみならず実技科目ですら首位を取るか。文武両道とはお主の事を言うのであろうな」

「そうでもないさ。最後の試験では、君に負けるんじゃないかって冷や汗を垂らしていたよ」

(これは、いつでも死ぬと思えるから本当)

「儂はこんな頭じゃから、実技一辺倒にならんといかんのじゃが、お主は……そうじゃな。根本的に何かが違う気がするの」


 さて。

 ここ最近の日常と共に訳知り顔で世界について語ってきたけれど、未だ僕は齢16の若造だ。しかしどうしてここまで、傲岸不遜に、厚顔無恥に、ペラペラと御託を並べられると思う?

 その理由は単純明快、僕がその不条理の権化だからさ。

 この世界には魔法という概念があって、初級ですら無から有を生み出しているように見えるレベルの魔法を扱う。その位が上がっていけば、その規模も当然増していく。国宝級ともなれば、それは最早れっきとした奇跡だ。

 しかし、僕の扱う奇跡はそれとは別な物。系列、概念、扱う事象がまず異なる。この世界にいる魔法使いが干渉するのは、その世界の物体。サイコキネシスでもそう、パイロキネシス、テレパス、若返りの秘薬などいろいろやってる者もいるそうだが、まあどうであれその世界の物体に干渉している。

 僕の奇跡は、世界の物体に干渉するといえばそうとも言えるけれど、あくまで間接的にだ。やることはたった一つ。『セーブ』と祈るだけ。そうするだけで、未来、はたまた過去から、『ロード』と祈るだけで、セーブした時間軸に意識だけ飛ばすことができる。間接的にというのは、起こったはずの事象を別な行動をすることで上書きし、結果を望み通りに変えられるから。

 この奇跡のおかげで、僕は生まれ変わった。羨望の眼差しは飽きるほど受けたし、友人も増えた。頼られるようになった。全てがうまくいくようになった。失敗も恐れなくていい。僕が死ぬことになったとしても、ロードと祈るだけで結果は変わる。

 失敗がない。

 ああ、なんと、甘美な響きか。

 結局この世界は、セーブ&ロード。


「おい、どうした! なんだってできるんだろう!? だったら、こいつも救ってくれよ!」

「……む、無理だ。僕にだって、失ったモノは、喪ったモノは」

「おい、待て! 待ってくれぇぇぇぇぇッ! あぁぁぁああああぁああああっっ!!!」

「……」

「どうして救ってくれなかった」

「……」

「恨み続けてやるからな。一生だ。いつまでも、お前を呪うから」


「私を、ここに、置いていって、くださ、い」

「駄目だ! 駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目駄目だ駄目だ駄目だ!!」

「駄目、って、らしく、ないですよ。あなたは、なんでも、わかる、はずで」

「嫌だ嫌だ! 君を、み、見殺し、に、なんて」

「そ、そう、言ったって、救えない、ものは、ありますよ」

「くそっ! くそっ!! 僕は、僕は!!」


「どうしてあの時、セーブをしてしまったんだ……ッ!!」


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