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Tale 4

 本当に不定期更新ですみません。第4テイル、投下します。はたまた重いかもです。

 どうやらあのまま寝落ちしてしまったらしい。

 目を覚ますと時計は6時を示していた。学校が始まるのは8時なので、まだまだ余裕がある。とりあえず身なりを整え、簡単に朝食を作る。

 

 フライパンにバターを敷き、半分溶けたところで溶いた卵を投入、サッと箸を通してかき混ぜすくいあげる。

 塩コショウで味を調え、トーストに乗せ、チーズを少々。

 簡単ですぐにでき、かつそれなりに美味しい。スクランブルエッグトーストはおれの朝の定番である。


 

 ワックスで髪を整え、手首にミサンガを結ぶ。特に意味はないが、今時の高校生はこんなイメージだろうと毎回続けている。おかげでもう慣れた。

 周りはもっと派手な格好をしている奴もいるので、今時とは言えないのかもしれないが。



 ローファーを履き、玄関を開ける。

 

 「いってきます」


 返事は返ってこない。




-----------




 教室に入ると、まだクラスメイトはまばらにいるだけだった。時計は7時半を指している。どうやら少し早く着いてしまったようだ。

 学校に早めに着こうとする生徒はあまりいない。みんな、朝はもっと寝ていたいのだろう、むしろ、ギリギリで駆け込んでくる生徒をよく見かける。

 朝から元気というか、高校生活を謳歌しているというか、なんとなくうらやましい気がする。きっと卒業した後にでも、あの頃は・・・みたいに思い返したりするのだろうか。

 まあ、おれ自身はそういったタイプではないので願い下げだが。


 そんなことを考えていると、教室の後ろ側の扉がいつもより大きな音を立てて開いた。この音を聞くだけで誰が入ってきたか大体分かる。


 「お、望じゃん!なになに、今日ははえーな!」

 「そっちこそ珍しいじゃんか。いつもはギリギリか遅刻してくるくせに」


 そう言うと、ドカドカと荒い足取りで扉を開けた張本人である、浅野あさの かいがおれに向かって近づいてくる。俗に言う、チャラ男のような風貌をしたこの男は結構人気があるようなのだが、いかんせん性格がちょっと残念な部類に入るのだ。


 「・・・俺はなあ、いつも早い時間に登校してくるかわいい一年生がいるという情報を「どうせいつもの稼業にでも連敗したんだろ?」うるせえ!」

 「図星か。というか朝からナンパしてたのか?」

 「もち!おっまえ週初めは気合いの入ったかわいい子が多いんだぞ!」


 

 こいつは極度の女好きなのである。しかも相手の都合を考えない。普通に考えると朝は仕事とか学校に向かう人が多い分、捕まる人は必然的に少なくなると思うのだが、気にせず誘っているようだ。

 こうして考えている間も女の子について語り続けているのだが、いつものことなので話半分に聞き流す。友達として接する分には、特に不満もなく良い奴なのだが、女の子のことになるとスイッチが入ってしまうようなのだ。大声で語って、周りにかなり声が響いていることに本人は気付いていないようなので、そのせいで自分が女の子を遠ざけているということにも気づくはずがない。

 なんというか、不憫なやつである。


 まあ見てる分には面白いのだけど。



 「・・・ということだ!おい望聞いてっか?」

 「ん?あーうんうん、その通りだと思うぞ」

 「だよな!やっぱ女子の胸は大きいにこしたことはないよな!」



 あー・・・これはそろそろ止めた方がよさそうだ。教室にも時間が経つにつれ続々とクラスメイトが入ってきている。

 快は目立つ。良い意味でも悪い意味でも。というかおれも巻き込まれる恐れが生じてきた。


 そのとき、快の後ろに人影があったかと思うと、無防備な後頭部に向かって拳を振り下ろした。



 「いってー!んにすんだよ光輝こうき!」

 「自業自得だ」


 快に一撃をおみまいしたのは在藤ありとう 光輝こうきである。

 彼は快とは真逆で、短髪の黒髪に、正した服装など硬派な印象を周りに与えるような風貌をしている。さわやかな好青年といったところだろうか、快と同様に人気があることをおれは知っている。

 頭もよく、人付き合いも悪くない。傍目には完璧超人のように映ってしまうことであろう。

 だが、世の中には本当に完璧な人間はいない。



 ガタンッ


 快が急に出した大声によって、近くにいた女子生徒が驚き、机に足をぶつけてしまった。本人は痛そうなそぶりをしていないが、急で恥ずかしかったのか、机に手を置き頭を抱えるようにうずくまってしまっている。


 光輝がその様子を見て、おもむろに女子生徒へと近づいていく。


 「悪い。びっくりさせてしまったな」

 「!あ、いえ、そんな・・・」


 その後も光輝は律儀に女子生徒に頭を下げ、その光景を見た女子生徒は更にあわててしまっている。


 「ただ少し驚いただけですから、全然!」

 「そうか・・・」



 すると光輝は頭を上げ、向き合うと、女子生徒の頭を撫で始めた。


 「次からないように気をつけるから、許してくれ。な?」

 「あ・・・はい」


 分かりやすく女子生徒の目にはハートマークが浮かんでいるのが見える。またか。


 なんというか、こいつは色々と無自覚なのだ。本人は何も意識しないで平然とこのようなことをやってのける。またこれが似合うところがイケメンのずるいところである。

 前にそれとなく聞いてみたところ、


 「妹にすることと同じことをしているだけだが」


 という答えが返ってきた。こいつにとっては、若い女子は小学生の妹と同じように扱うのが当然ということらしい。優しく、丁寧に甘やかすのだ。

 無自覚で、超がつくほどの鈍感。小説の主人公であればハーレムが出来上がりそうな性格である。



 「全く、快、お前は本当に懲りないな。望も早めに止めてやれ」

 「話半分で聞いてたからさ、気づくのが遅れたんだよ」

 「光輝、何の話だ?というか望、さりげなくひどい!」


 いつものようにふざけたやり取りをしていると、始業のチャイムが鳴り、話はそこで中断される。担任の退屈な話を聞き終えると、退屈な授業が始まる。


 おれはこんな二人とともに高校生活を過ごしている。

 不満などないのだ。




 この日も普通に授業が終わる。太陽は真上にあり、春の日差しが窓にいっぱい降り注ぐ。少し暑いくらいの陽気である。

 何ら変わりはない平凡な日々だ。

 昼になったのでおれは快と光輝と昼食を食べている。朝にさっと作ってきたおにぎりをほおばる。梅干のすっぱさに、退屈な時間から生まれた眠気がちょっぴり覚まされる。

 二人も弁当を食べながら、ふざけたやり取りをしている。これをみているのは楽しい。


 だが、穏やかな昼食の時間は、急に壊れてしまった。


 

 「昨日のアニメやばかったよね!もーめっちゃ興奮した」

 「そうそう!めっちゃよかったよね昨日の回!」

 「主人公に言ったセリフとかさー」

 「お前は俺だけを追っていればいい・・・ってね!」

 「「きゃー!!やばいやばい!」」



 ・・・耳に纏わり付くような笑い声が響く。

 正直、不快だ。周りを見回してもときおり眉をひそめて様子を伺っているクラスメイトの姿が見受けられる。



 「もうさ、くっついちゃえばいいと思わない!?」

 「敵同士の二人、追うほうと追われるほう・・・友情を超えて愛情に変わる瞬間・・・」

 「それがまさに昨日!」

 「「二人の記念日!いやー!」」



 なんなのだろうか、あれは?

 人の趣味をとやかくいうつもりはないが、自分の世界に入ってしまった人間というものはああも自分勝手になってしまうものなのだろうか。

 多分、話の内容から察するに、今期の深夜アニメの話であろう。正統派なバトルもので、主に男同士の友情が描かれている作品である。まだ二話までしか放映されていないが、中々面白い。

 だが、あそこまで盛り上がれるのは女子だから、なのだろうか?

 ふと前を見ると、快と光輝も明らかに機嫌が悪い。



 「てかCVが櫻庭さんと中谷さんってのがもうやばくない!?」

 「やばいやばい!ねえ、しずくもそう思うでしょ!」

 「え・・・う、うん。そうだね」

 「「だよねー!!」」


 どうやら二人が主に盛り上がっていて、もう一人はつき合わされているような印象を受ける。その一人は俯いて、二人の話に相槌を打ちながら、もそもそと弁当を食べている。

 なぜか、そんな姿が脳裏に残った。



 「なあ、あいつらうざくね?」

 「まあ、うるさいというか、耳につくというか・・・」

 「周りが見えていないことには、いささか疑問を覚えるな」

 「何でこういうときだけこんなに元気なわけ?他のときは全員根暗だぜ、あいつら」

 「協力的な人間ではないというのには同感だな」


 二人もかなり我慢していたらしい。どんどん文句が出てくる。

 だが、三人を一緒に否定しているところは気になる。うるさいのは二人なのだけど。



 「つーかさ、大声でアニメの話とかなんなの?自分がオタクですってそんなに自慢できることなわけ?」

 「全くだな。自分の印象をわざと下げているとしか思えん」

 「リアルに目を向けねーで二次元ばっかみてるとかさ、何のために人生生きてんの?ってかんじなんだけど」

 「自分がすべきことをしないで他のことばかりしているのはただの怠慢だろう。ましてやアニメやゲームなど・・・言語道断だな」



 快と光輝は、アニメはみないし、ゲームもしない。現実を楽しむことを一番に考えている。そのため、かなり否定的な考えを持っている。

 おれは、アニメもゲームも好きだ。ブルブロもその一環である。だけど、学校ではそんなキャラを演じていない。



 「ホントにな。現実より架空のことばっか考えてて、何の得になるんだろうな」


 こういう言葉を発するたびにおれの心はズキリと痛む。

 隠しながら、自分も賛同するのは辛い。だけど、円満な学校生活を送るためには必要なことだ。



 これからも、我慢することなのだ。



 相反する自分の感情が痛い。おれは、どの立場から物事をみればいいのか分からないまま、いつのまにか昼食の時間を終えていた。

 気分を害してしまった方がいましたら、申し訳ありません。

 ですが現実リアルのラギ君は、こういった状況の中で暮らしているということを知っていただければと思います。

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