エピローグ
────20□□年 8月19日
市立○△高等学校 大量虐殺事件
夏期課外中だった○△高等学校に、一学期の半ばから不登校だった容疑者××が侵入、盗品と思われる日本刀で生徒や職員を次々と斬り付けた。
この事件で生徒十一名が死亡、三人が重傷、職員二名が死亡、○△高等学校校長が死亡した。
また、○△高等学校へ行く途中に、車道を走っていた軽車両に対して日本刀で斬り付けた。
事件当時、教室に居た男子生徒に話を伺ったところ、久しぶりに登校してきた××を見て、みんなが声をかけた。
しかし、様子がおかしかったので、××の幼馴染である女子生徒が近づいたところ、隠し持っていた日本刀で頭部から両断された。
教室内はパニックに陥り、数名の男子生徒と職員が××を押さえつけようとしたが、返り討ちにあった。
××はその後、各教室にて凶行を行い、最後に校長室にて○△高等学校校長を殺害し、駆けつけた警察官によって逮捕された。
その二日後、××は取り調べ中に人の名前らしきものを叫びながら謎の変死を遂げた。
余談ではあるが、××の殺害された幼馴染の女子は、××に想いを寄せていたという。
────20□□年 8月23日
高層マンション飛び降り自殺
△×県の高層マンションの屋上に住む20代のサラリーマンの男性が、マンションのベランダから飛び降りて自殺した。
この事件の一ヶ月ほど前、近隣の住宅に自殺したサラリーマンの男性が書いたと思われる手紙(?)のようなものが投げ込まれていたという。
内容は支離滅裂で、解読は困難。
また、監視カメラの映像によると自殺した男性は二ヶ月ほど前からマンションの外には出ていなかったらしい。
しかし、室内には食べ物があった痕跡はなく、マンションの住民にも男性に食べ物を渡したことはないという。
この二ヶ月間、男性がどうやって生き延びていたのかは謎である。
また、この男性の妻は一年前に事故で他界している。
「夏になると変な事件が増えるなー…」
自室のPCでニュースサイトのピックアップ記事を見ながら、小さく息を吐く。
連日の猛暑でついにエアコンが悲鳴を上げて壊れてしまったので、部屋の中は蒸し返るような熱気に包まれていた。
机の上に置いていたコーラも、温くなっていて飲めたものではない。
「って、夏休みもあと一週間しかないじゃん!? やっべー……課題終わってないよ」
画面右下の日付の表示を見て、慌てて通学用のバックから『夏休みの友』と書かれたテキストを取り出す。
ちなみにこのテキスト、開くのは今日のこの瞬間が初めてであった。
「あー、クソ。 間に合うかなぁ……」
ぼりぼりと頭を掻きながら、ふいに顔を上げて虚空を見つめた。
その場所には何もないはずなのに、そこだけ時空のねじ曲がったような、何か得体の知れないものが存在しているかのような……
「お前も手伝ってくれよ、アイネ」
不意に口から飛び出た名前は、自分でも誰のものなのか分からなかった。
END