序章
ヴィアス帝国は、大陸で一番大きな国だ。
ユフラシス大陸の半分以上を占める面積。温暖な地域が多く、作物は豊富。他国との交流も多いので物資に困ることはない。
そして、何より500万を誇る王国軍により、他国からの侵略も恐れることではない。
問題があるとするなら、それは人間だろう。
約300年前、ある国の科学者、ロザンヌ・パポールにより開発された薬品。
投与するだけで俗に言う『魔法』が手に入る世紀の発明。
だが、それには1つ欠点があった。
適合者と不適合者の存在だ。
それは300年たった今でさえ改良できていない。
ヴィアスでは『魔法』という力を手に入れた者達は自らを神子と名乗り、人間を劣等動物と蔑むようになった。
それは年々悪化し、今の人間は神子にとって道具でしかない。
奴隷、遊女、など過酷な仕事を強いられ、虐殺や拷問も少なくない。
ちょっとした理由で人間はすぐに殺される。
国外に逃げた人間や国内でもレジスタンスや逃げ隠れている人間も多い。
では、神子達が皆そんなに外道で非情なのかというとそうではない。
口にしないだけで、人間への酷すぎる仕打ちに疑問を持ち、反対するも者も少なからず、いる。
しかし、そんなこと口にしようものならすぐさま斬首刑だ。
国王は人間を嫌っている。
ヴィアス帝国第一王子、すなわち次期国王後継者、ミエラ・ヴィチィアスも、人間への差別に反対する者の1人だった。
なんせ、彼は国王の実子ではない。
彼は人間の間に生まれ、国王に両親を殺された天然の、生まれながらの神子なのだ。