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眷属

あまりにも突然の事でどうして良いのか判らなかった。

北海道から帰ってくると空港には若い衆が詰め掛けていて、皆に迷惑を掛けてはいけないと思い従う事しか出来なかった。

屋敷に着くと一人の外国の男が父と待っていた。

そして父の言葉に唖然とし従うことなんて到底出来ずに部屋に篭って抵抗した。

部屋に篭り続けるのも限界で皆に迷惑を掛けない事を条件に譲歩した。

父に逆らう事など私には出来ない。

それでも唯一の救いはハル君だった。

ヒントをくれてそして私の事を始めて好きだと言ってくれた。

美味しいスイーツをご馳走してくれた帰りにどうしても聞いておきたいことがあった。

それなのにあんな事になってしまい、私は強制的に屋敷に連れ戻されてしまった。


自分の部屋でベッドに突っ伏していると窓に何かが当たりコツンと音がする。

襖を開けて廊下に出るとガラス戸の向こうに人影が見える。

雲に隠れていた月が庭を照らすとそこには人狼の麟堂さんが立っていた。

「どうしたの?」

「どうしたのだ? それは俺が聞く台詞だ。亀梨と連絡が取れないと菜露から電話があったんだ。不思議に思ってマンションを覗いたが居なかった。そして亀梨の匂いを辿って来てみたらこの先の公園に亀梨の血の匂いが強く残っていた。亀梨はどうした?」

「それは……」

「それにこの屋敷からはお前の気配しか感じない」

「そんな。でも何で霞ちゃんが」

「あいつは何かを企んでいる。俺が嗅ぎ回らない様に釘を刺しやがった、手出しは無用だと。それに菜露の話ではいつもなら家にいる筈の竜ヶ崎も居ないらしい」

「私には何も出来ないもの」

「そうか、一生そこで泣いていろ。俺は亀梨を探す。あいつは命を投げ出してまで俺達の事を助けてくれたからな。俺はその恩に報いたい。例え到底適わない相手でもな。眷属の一人も見捨てるようなヴァンプなら杭でも自分で突き刺して散ってしまえ」

「私は……」

「俺が亀梨を襲った時のお前は何処に行った。何故、俺が手を引いたと思う」

「それは腕を折られて」

「違うね、貴様の力が飛躍的に上がっていたからだ」

霞ちゃんの言葉に鼓動が跳ね上がる。

どうして私の力が飛躍的に上がるの?

その理由はなんなの?

ハル君は確かに何かを企んでいると言うか何かを意図的に隠している。

イタリアの名家で生まれた。

裏の人間。

マフィアでも逃げ出すような事。

もしかしてハル君は……


「霞ちゃんは何かを知っているのね」

「亀梨が覚醒した時に瞳を見て驚いた。青い瞳の眷属にはありえないエメララルドグリーンの瞳だった。そして次に力を放出した時にはぺリドットの様な明るい色に上がっていた。亀梨は生まれ持っていたんだと思う。それがあいつの出生の秘密で恐らくそれは貴様に言えないことだったのだろう」

「そんな」

「どうするんだ? 時間は無いぞ」

「影さえあれば」

「無理だな。おそらく結界の中に監禁されているはずだ。何かとてつもなく大きな物がバックで蠢いている」

「助けたい、でも」

「ふざけるな! ヴァンプが血を吸うのは眷族を作る為だけか? 力が飛躍的に上がった理由はなんだ? それに亀梨の力はそれだけじゃねぇだろ。あいつはな、考えも無く誰かを守ろうとするんだ! 自分の事なんて二の次で。だからあいつは強いんだ」

霞ちゃんの言葉で気づかされた。

ヴァンプが血を吸う理由は一つだけじゃない。

強き物の力を得る為に。

そして守りたいと思う気持ちは誰にも負けない。

そう思っただけでスイッチが入ったように力が湧き出してきた。

「顔つきも瞳の色も変わったな。いくぞ背中に乗れ」

「えっ」

「えっ、じゃねえよ。人狼は普段も力をセーブしているんだ」

そう言うと目の前には大きな狼の姿になった霞ちゃんがいた。

背中にしがみ付くと風の様に駆け出した。



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