カーブミラー
以前働いていた会社の、同僚だった東尾さんの話。
東尾さんは学生時代、真夜中の峠道を何人かのバイク仲間とよく飛ばしに行った。
その日もいくつかのお気に入りからあるコースを選び、待ち合わせ場所で仲間が揃うのを待っていた。
その日待ち合わせ場所にしていたところは、峠道に入る少し手前にある狭い生活道路で、道が三叉路になっていた。
三叉路のYの字型になっている、道が二股に分かれるところにはカーブミラーが二つついており、それぞれの方向の眺めを映し出していた。
待ち合わせ場所に先に着いた東尾さんともう一人の仲間は、道が二股に分かれている手前の、左側にある小さな空地にバイクを止め、雑談をしていた。
仲間を待ちながらふとカーブミラーを見ると
夜道を映すミラーのひとつの片隅に、青白い街灯が照らすなか、誰かの姿の一部が映っていた。
それはライダースーツ姿の自分たちではなく、手には四角い藤(?)の買い物篭を持ち、白い靴下にサンダル履きの、白い割烹着姿の腹から下あたりの姿だった。
時間は遅かったがまだ深夜ではなかったので、通りがかりの近所の人かとも思った。が、それにしてもいまだに、昭和時代のおばちゃんの買い物姿みたいな格好をする人がいるんだ、と思いあたりを見回した。
そんな姿はどこにもなかった。
しかし、ミラーの中に割烹着姿はまだ映っていた。しかも先程より少し近付いて来ている……
雑談をしている仲間は気が付いていない様だった。
気味が悪くなったところに、他の仲間たちがやって来てメンバーが揃い、皆で走り出した。
その日、峠道を走行中仲間が事故を起こした。
三叉路のところで東尾さんと雑談をしていた仲間が、ヘアピンカーブにさしかかる手前で突如転倒し、救急車を呼ぶ大怪我をした。
東尾さんは見ていないが、転倒した仲間のすぐ後ろを走っていた他の仲間が、後で
「あいつが事故る前にさ。あいつの後ろに白いエプロン姿のおばちゃんが横座りで乗ってたんだ。本当だよ。何だったのかな」
と首をかしげていた。




