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レクサス逆転生――異世界育ちの俺、父さんの世界で科学文明を学ぶ  作者: しばたろう


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08中学生の社会見学

 今の俺にとって、中学の勉強はもちろん重要だ。


 だが、それだけではない。


 知りたいことは、まだまだ山ほどある。


 自動車のこと。

 この国の偉人たちのエピソード。

 技術がどうやって生まれ、どうやって世界を変えてきたのか。


 そんな話をサクラにすると、彼女はあっさり言った。


「図書館で本を借りればいいよ」


 図書館!?


 誰にでも無料で本を貸してくれる施設らしい。


 驚くべき制度だ。


 王国では、本は高価で貴重なものだ。

 貴族や学者でもなければ、そう簡単に手に入るものではない。


 ましてや、無料で貸すなど――。

 そんな発想すら存在しない。


「でも、ハヤト、図書カード持ってないよね。いいわ、私が一緒に行って借りてあげる」


 そんなわけで、サクラに連れられて図書館なる施設を訪れることになった。


 出発前、なぜかおじいちゃんが


「軍資金だ」


 と言って、千円札を数枚くれた。


 本は無料で借りられると聞いていたのでお金はいらないはずなのだが、

 好意に甘えてありがたく受け取った。


 図書館は町中のビルの中にあった。


 まず、その外見の大きさに驚いた。


 だが、本当に驚いたのは中に入ってからだ。


 棚、棚、棚。


 壁一面に並ぶ本。

 通路の奥まで続く本。


 本が、敷き詰められている。


 数が、とんでもない。


 本屋よりも、はるかに多い。

 体感で、数倍はある。


「この図書館は小さい方よ」


 サクラはさらっと言った。


「もっと大きい図書館が、日本にはたくさんあるの」


 日本、恐るべし。


 いつか、王国にも図書館を作りたい。


 知識を、誰でも手に入れられる場所。


 それがあれば、世界はきっと大きく変わる。


 俺は棚を歩き回りながら、本を選んだ。


 ――はじめての自動車のしくみ。

 ――タイヤのひみつ。

 ――自動車を発明したベンツ。

 ――蒸気機関を作ったワット。


 気がつけば、最大の十冊まで借りていた。


 本を抱えながら、思わず顔がにやけてしまう。


「満足そうね」


 サクラが笑う。


 彼女も、なんだか嬉しそうだった。


 図書館を出て帰ろうとしたとき、サクラが言った。


「寄るところがあります」


 にかっと笑う。


 連れていかれたのは、

 ガストなるレストランだった。


 なるほど。


 軍資金は、このためにあったのか。


 サクラは、タッチパネルなる機械に

 慣れた手つきで注文を打ち込んだ。


 少しして、テーブルにそれが運ばれてきた。


「こちら、ご注文のいちごパフェ2つ、です」


 透明な器の中に、

 赤い果実、白いクリーム、そして冷たい何か。


 初めて見る食べ物だ。


 だが――。


 うまいということは、見ただけで伝わってくる。


「びっくりするわよ?」


 サクラがニヤリと笑う。


 俺はスプーンでひとすくいして、口へ運んだ。


 パク。


 ――うま。


 ――つめた。


 ――なにこれ。


 ドーナツを初めて食べたときも衝撃だったが、

 このパフェも同じだ。


 いや。


 それ以上かもしれない。


 俺は夢中で食べ続ける。


 クリームを口の周りにつけながら、

 ぱくり、ぱくりと。


「ね?」


 サクラはその様子を見て、満足そうにニヤリと笑った。

 


 図書館や本屋のほかにも、サクラは俺をあちこち連れ出してくれた。


 いわゆる社会見学だ。


 バスにも乗った。

 電車にも乗った。


「機会があれば、新幹線にも乗るといいわ」


 サクラはそう言って、少し誇らしげに笑った。


 警察署、消防署、病院、郵便局、銀行。


 さまざまな公共施設も案内してくれた。


 それらはすべて、税金で賄われているという。


 王国でも税は納めている。

 だが、このような形で国民のために戻ってくることはない。


 日本の王は、なんと国民思いなのだろう――。


 ……いや、そうだ。

 日本は民主主義。王はいない。


 社会の教科書で習ったことを思い出し、ひとりで納得する。


 娯楽施設にも連れて行かれた。


 ショッピングモールや映画館、ボーリング場だ。


 ショッピングモールの規模と華やかさには驚いた。

 王国にも市場はあるが、比べものにならない。


 映画館では、アクション映画というものを見た。


 テレビやパソコンとは比べものにならない巨大な画面。

 その迫力だけでも度肝を抜かれた。


 だが、それ以上に驚いたのは映画の内容だ。


 あれがすべて作り物だというではないか。


 しかも、気の遠くなるような金と時間をかけて作っているらしい。


 娯楽にここまでの労力をかけられる経済力を、改めて突き付けられた気がした。


 そして、ボーリング。


 あの制御不能な重い球を、溝に落とさずまっすぐ投げるなど――。


 あれは無理だ。

 


 そして、一番感銘を受けたのが、産業技術博物館だ。

 サクラが電車に乗って連れて行ってくれた。


 ここには、人間の文明がどのように進歩してきたのかが、そのまま並べられていた。


 巨大な織機。

 蒸気機関。

 そして自動車の製造工程。


 社会の教科書で習った産業革命の流れが、実物として目の前にある。


 機械が動き、鉄が加工され、車が作られていく。


 文明は、小さな発明と改良の積み重ねでできている。


 それを、この博物館は静かに教えてくれていた。

 


 社会見学には、もれなく、おいしいものがついてきた。

 むしろ、サクラにとってはこちらがメインなのかもしれない。


 回転寿司。

 寿司を回すシステムには驚いた。画期的だ。しかし、やはり寿司はうまい。


 ハンバーガー屋。

 肉をはさんだパンもいいが、ポテトがうまい。


 アイスクリーム。

 重ねられたアイスが落ちそうで、食べるのに妙に緊張する。


 クレープ。

 気づけばクリームを頬にたっぷりつけながら、かぶりついていた。


 ラーメン。

 女子友達だけでは入りにくいらしい。俺でよければ、いつでも付き合うぞ。


 牛丼。

 白米に牛肉、そして、生卵のコンビネーション。完璧だ。


 たこ焼き。

 あつ。うま。

 

 

 サクラのおかげで、たまに息抜きをしながら、順調に、中学の勉強を進めることができた。


 結局、一通り終えるのに三か月かかり、季節はすっかり冬になっていた。


 小学生ドリルとは比べものにならない。

 習得すべき内容の深さも量も、段違いだった。


 そのころには、サクラも本格的な受験勉強に集中し始めていた。


 サクラは、家から近い「県立坂の上高等学校」を受験するらしい。


 サクラいわく、普通レベルの高校で、彼女の成績なら十分合格できるとのことだった。


「では、俺もその高校を目指すことにしよう」


 そう言うと、サクラは少し驚いた顔をした。


「ハヤトは勉強すごく頑張ってるから、もう一年も頑張れば県内トップ校も受かるかもよ」


「ふむ。そのトップ校に行くと、何がいいのだ?」


「いい大学に行ける」


「ふむ……。今のところ、あまり大学に興味はないんだ。独学でも、いくらでも学べることはわかったからね」


「そうなんだ」


 それに――。


 いつ元の世界に戻ることになるかもわからない。


 その言葉は、口には出さなかった。


 代わりに俺は言った。


「サクラと一緒のほうが、なにかと楽しそうだ」


 サクラは一瞬きょとんとして、それからニッと笑った。


「ほんと、世話が焼けるわね」


 そう言いながら、どこか嬉しそうに微笑んだ。

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