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レクサス逆転生――異世界育ちの俺、父さんの世界で科学文明を学ぶ  作者: しばたろう


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7/12

07中学の勉強、はじめました

 俺は、本格的に中学の勉強を始めた。


 まずは、数学だ。


 最初、突如現れたマイナスの概念には多少困惑した。

 数というものは増えていくものだと思っていたのに、突然「ゼロより小さい数」が出てくるのだから無理もない。


 だが、映像授業のおかげでその扱い方はすぐに理解できた。

 借金や温度、位置の変化――そういう例を見せられると、なるほどと腑に落ちる。


 それからは、階段を一歩ずつ上るように、トントンと進めることができている。


 なにより、数学は面白い。


 車だけではなく、あらゆるモノづくりに必要となる学問だと感じ取れる。

 そして問題を解く感覚は、まるでパズルだ。

 ひとつひとつの式が、世界の仕組みを解き明かす鍵のように思える。


 昨晩、久しぶりにサクラ一家がやってきた。


 そのとき、ケンジおじさんが言っていた。


「最終的には、高校数学の最後に微分積分というのを習うんだが、その内容は車づくりに欠かせないものらしい」


 ケンジおじさんは大学で工学系を専攻していたらしく、そのあたりは少し詳しいらしい。


 それを聞いて、ますます数学を頑張らねばという思いが湧いてきた。


 次に理科だ。


 自然界の仕組みを解析し、分類し、そして応用する。

 これらを成し遂げてきた、この世界の天才たちには、ただただ頭が下がる。


 牛と人間が同じ種類で、哺乳類に分類される――そんな発想、俺のいた世界では思いもつかなかった。


 そして、元素記号と化学式を知ったとき、胸が高鳴った。


 俺たちの世界では、世界は火・水・風・土の四大元素で構成されていると考えられていた。


 だが、この世界の教科書では違う。


 この世界は、118個の元素でできているという。


 そんなにたくさん!?


 しかも、それらを組み合わせることで、さらに膨大な数の化合物が生まれる。


 目から鱗が落ちるとは、まさにこのことだった。


 ――鉄は、元素なんだ。


 ふと、父さんの言葉を思い出した。


「鋼をどうやって作るのか、父さんは知らないんだ」


 元素の一覧を見ても、そこに鋼はなかった。


 じゃあ、鋼は何なんだ?


 そう思ってパソコンで調べてみると、答えはすぐに見つかった。


 鋼は、元素ではない。


 鉄と炭素からできた合金だった。


 画面を見つめながら、思わず呟く。


「父さん。鋼はね――鉄に炭素を混ぜて作るんだよ」


 理科も、数学同様、

 車を作るために欠かせない学問だ。

 

 社会では、

 素材の原産地についての学びに強く興味をひかれた。


 父さんが言っていた。


「車を作るには、タイヤも作る必要がある。なので、まずは、この世界でゴムを探さなければならない」


 社会の教科書には、そのヒントが載っていた。


 ゴムの原産地は、この世界では南米という地域。

 そして南米の多くは、熱帯雨林気候だという。


 一年中暑く、雨が多く、湿度が高い。


 なるほど。

 ということは、俺たちの世界でも、蒸し暑く雨の多い土地を探せば、ゴムの木が見つかる可能性があるということだ。


 この情報は、大きな一歩だ。


 ゴムだけではない。


 社会の教科書には、さまざまな素材や作物について、その原産地や生産地、気候との関係がまとめられている。


 どこで何が育つのか。

 どんな環境で、どんな資源が得られるのか。


 こうした知識を総合的に学べるのが地理という学問なのだ。


 この知識を持ち帰ることができれば、俺たちの世界を大きく飛躍させることができるだろう。


 そして歴史だ。


 ここで出てきたのが、産業革命。


 機械化。

 工業化。


 そして、なにより――蒸気機関。


 蒸気の力で機械を動かし、工場を動かし、やがて機関車や船を走らせる。


 教科書に書かれているその流れは、まるで未来の設計図のようだった。


 これは、車づくりに向けて、俺たちが進むべきロードマップを、そのまま示してくれているようなものだ。


 繊維工業の機械化から始まり、蒸気機関が生まれ、鉄道が敷かれ、社会全体が変わっていく。


 その一つ一つが、技術の積み重ねだ。


 もし、この流れを理解し、順番どおりに再現することができれば――。


 俺たちの世界でも、同じような革命が起きるかもしれない。


 地理も、歴史も。


 ただの暗記科目だと思っていた。


 だが今は違う。


 これは、世界を作り変えるための知識だ。


 これほど重要な情報は、きっと他にない。


 しかし――。


 英語と国語は、いまいち身が入らない。


 まず英語だ。


 この世界の大国、アメリカの言語。


 ケンジおじさんは言っていた。


「重要な技術や研究は、アメリカをはじめとする英語圏発のものが多い。それを読み解くには、英語力が必要だ」


 なるほど、理屈はわかる。


 だが、どうにも実感がわかない。


 パソコンを使えば、日本語でもかなり深く詳しい情報を知ることができる。

 しかも英文だって、あっという間に日本語へ翻訳してくれる機能がある。


 わざわざ自分で読む必要があるのか?


 なにより――。


 もし元の世界に戻ってしまえば、英語など二度と使わない言語だ。


 重要だとは理解している。

 だが、どうしても気持ちが乗らない。


 ……まあ、たぶん。


 アメリカ人の彼女でもできれば、それこそ真剣に勉強しだすのだろうが。


 結局、英語は高校受験のためと割り切って勉強を進めている。


 そして国語。


 現代文は、まだいい。

 この国の文学に触れるのは、それなりに面白い。


 だが――。


 古文と漢文。


 日本の古代の言語の読み方など、正直、有用さも面白さも感じない。


 なぜ千年前の言葉を、今さら勉強しなければならないのか。


 こちらも結局、高校受験のためと割り切って勉強を進めている。


 そんな愚痴をサクラに話したところ、


「ますます、中学の勉強の闇を覗き込んだわね」


 と、やたらうれしそうだった。


 しかも腕を組んで、うんうんと深くうなずいている。


「数学と理科が楽しくて、英語と国語が苦痛。典型的な理系の症状よ、それ」

「安心して。みんな一度は通る道だから」


 サクラは楽しそうに笑った。


 どうやら俺は、知らないうちに、

 中学生という生き物の典型例になりつつあるらしい。

 


 日々、中学の勉強に格闘しているわけだが――。


 俺には、ひとつ妙な習慣ができていた。


 レクサスのトランクから魔石をひとつ取り出し、それを左手で握りながら勉強することだ。


 別に、魔石から魔力を吸収しているわけではない。


 ただ、そこにある魔力を感じるだけで、なぜか心が落ち着くのだ。


 故郷の気配。


 あの世界の空気。


 それを思い出させてくれる。


 ……もしかすると、少しホームシックなのかもしれない。


 そんな日々の中で、ひとつ気づいたことがある。


 魔石の中の魔力が、ほんのわずかに揺らいでいるのだ。


 それは、

 まるで呼吸をするように、一定のリズムで増えたり減ったりを繰り返している。


 増減の差は、ほんの微量だ。


 おそらく、俺たちの世界では気づくことはできないだろう。


 あちらの世界は、周囲に魔力が満ちている。

 海の中で波紋を探すようなものだ。


 しかし、この世界には魔力が存在しない。


 だからこそ、この小さな揺らぎが、はっきりと感じ取れるのだ。


 俺は、ノートの端にそのことを書き留めた。


 中学の理科で習った言葉を使えば、こう表現できる。


 魔石に含まれる魔力は、約10秒周期の波として、わずかに増減している。


 言葉にすることはできた。


 だが、この現象が何を意味するのか――。


 そこまでは、まだわからない。

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