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レクサス逆転生――異世界育ちの俺、父さんの世界で科学文明を学ぶ  作者: しばたろう


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3/10

03息子の決意

 夕食のあと、自然と話題は俺のこれからのことになった。


 ふと考えた。

 この世界で、俺はこれからどうすればいいのだろう。


 それは、この世界に来てから、ずっと考えていたことでもあった。


 そもそも――


 なぜ、俺はこの世界に連れてこられたのだろう。


 ただの偶然なのか。


 それとも、何か神の意思のようなものがあるのか。


 そんなことを考えているうちに、ふと、父さんの言葉を思い出した。


「父さんの夢はな。

 いつか、この世界でレクサスみたいな自動車を作ることなんだ」

 

 その壮大な夢に、俺は胸を躍らせた。


 そして思った。


 父さんと一緒に、その夢を叶えたい。


 だから俺は、父さんの会社――タカセ運輸株式会社で働くことを決めたのだ。


 だが、そのとき父さんは、少し困ったように笑った。


「でもな」


 そう言って、続けた。


「そのためには、いろんなものを一から作らなきゃいけない」


 父さんは、レクサスのボンネットを撫でた。


「例えば、この車体は鋼っていう金属でできてる」


「鋼は鉄よりずっと丈夫だってことは知ってる」


「でも――」


 父さんは苦笑した。


「鋼をどうやって作るのか、父さんは知らないんだ」


「こういうことを、全部、何もないところから考えないといけない」


 そして、遠くを見るような目でつぶやいた。


「元の世界で、もっといろんなことを勉強しておくんだったなあ」


 ――その言葉が、胸によみがえった。


 今、はっきりしていることがある。


 偶然にせよ、運命にせよ。


 俺は、この世界に来た。


 つまり――


 父さんが知ることのできなかった技術を、俺は学べるかもしれない。


 そんな、またとない機会を手にしたのだ。


 もちろん、元の世界に戻れるかどうかなんてわからない。


 それでも。


 俺は思った。


 ――学びたい。


 あらゆることを。


 いつか、父さんのもとへ戻れたときのために。


 幸い、この国では、誰でも学校に通えるらしい。


 俺は口を開いた。


「学校に行きたい」


 すると、おじいちゃんは静かにうなずいた。


「ハヤトの年だと……来年は高校だな」


「となると、高校受験の準備が必要だ」


 そこでケンジおじさんが言った。


「ただ、ハヤト君は日本の義務教育を受けていませんよね」


「となると、義務教育修了と同等の学力があるかどうかの審査が必要になると思います」


「その辺り、いろいろ確認する必要があるわね」


 アケミさんも頷いた。


 みんな、俺のために動いてくれようとしている。


「ありがとうございます」


 俺は頭を下げた。


 すると、おじいちゃんが言った。


「制度のことは、私たちが何とかしよう」


「ハヤトは、高校に入るための勉強を始めなければいけないよ」


「来年の受験だと、半年もない」


「間に合うかどうか……」


 少し考えてから、こう付け加えた。


「まあ、無理に急ぐ必要もないがな」


 ――いや。


 俺は思った。


 元の世界に、いつ戻ることになるか分からない。


 だからこそ、急いだ方がいい。


 俺は顔を上げた。


「いや。間に合わせるよ」


 強い意志を込めて言った。


 その言葉に、みんなが少し驚いたように俺を見た。


 そして、感心したようにうなずいた。


 アケミさんが笑った。


「もし来年高校なら、サクラと一緒に高校生ね」


「どうせなら、サクラと同じ高校にすればいいかも」


 するとサクラが肩をすくめた。


「わたし、あんまり成績よくないよ」


「私が行くつもりの高校なら、今からでも間に合うかもね」


 あまり関心なさそうな口ぶりだった。


 ケンジおじさんが言う。


「まずは、ハヤト君の学力がどのくらいかだな」


「サクラ、ちょっと見てあげなさい」


「えー」


 サクラは露骨に嫌そうな顔をした。


「めんどくさいなー」


「どうしようかなー」


 俺はすぐに頭を下げた。


「よろしくお願いします」


 こういうときは、素直に頼むのが一番だ。


 これはミオで実証済みだ。


 サクラは少し鼻を膨らませた。


「しょうがないわねー」


 そう言いながらも、どこかまんざらでもなさそうだった。

 


 翌日の夕方、サクラが大きなリュックを背負ってやってきた。


「ハヤト。中学の教科書、持ってきたわよ」


 そう言うなり、サクラは俺の部屋に入り、リュックの口を開けた。


 次の瞬間――


 どさっ、どさっ、と音を立てて、大量の本を床にばらまく。


「まずは中学一年生のを見てみて」


 並べられた教科書の表紙を見て、俺は思わず目を丸くした。


 国語、数学、理科、社会、英語。


 サクラの話によると、中学ではこれだけの科目を学ぶらしい。


 しかも、それらすべてが高校の入学試験に関わってくるという。


「こんなにたくさん……ありがとう」


 俺はそう言いながら、一冊手に取った。


 まずは――国語。


 ページを開く。


 そこに書かれている文字は、王国で使われている文字とはまったく違う、見たこともないものだった。


 だが――


「……あれ?」


 なぜか、読める。


 意味が理解できる。


 不思議な感覚だった。


 そういえば、この国の言葉も、自然に理解できている。


 みんなと普通に会話もできている。


 どういう仕組みなのかはわからないが、言葉の壁は越えられているらしい。


 だが――


 問題は別にあった。


 文章の中に、やたらと複雑な文字が混じっている。


 サクラによると、これは「漢字」というらしい。


 これが、ほとんど読めない。


「ハヤト。こんな漢字も読めないの?」


 横からサクラが覗き込み、呆れた声を上げた。


 しかも、なぜかどや顔だ。


 次に、数学の教科書を開く。


 四則演算。


 足し算、引き算、掛け算、割り算。


 これは理解できる。


 昔、ベルクスの教会学校で習った内容だ。


 簡単な図形の性質も、なんとか分かる。


 だが――


「……なんだ、これは」


 ページをめくった瞬間、手が止まった。


 方程式。


 見たこともない計算だった。


 そもそも――


 負の数って、なんだ?


 意味がわからない。


 次に理科。


 ……さっぱりだ。


 だが、ページをめくっているうちに、思わず声が出た。


「地球は丸い……?」


 父さんが昔、そんな話をしていた。


 そのときは半信半疑だったが――


 本当だったのか。


 この学問は、かなり面白そうだ。


 次は社会。


 完全にお手上げだった。


 この国の地理。


 この国の歴史。


 知っているわけがない。


 最後に、英語。


 これは外国の言葉らしい。


 ページを見た瞬間、俺は本を閉じた。


 ……無理だ。


 完全に未知の言語だった。


 俺の様子を、サクラはずっと横で見ていた。


 そして――


「ハヤトって、すんごいバカじゃん!」


 思わず、という感じで叫んだ。


「高校受験どころか、あんた、小学校も卒業できないよ!」


 満面の笑みだった。


 なぜか、とても嬉しそうだ。


 だが、俺は笑えなかった。


 正直、衝撃だった。


 この国の子供たちは――


 こんなにも高度なことを、これほど大量に学んでいるのか。


 これは――


 覚悟を決めないといけない。

 

 俺は、サクラに向き合い、

「俺は、これから、どうすればよいでしょうか?先生」

 頭を下げた。

 

 サクラは、これでもかというくらい鼻の穴を膨らませ、

「しょうがないなー」


 腕を組んで、

「ドリルをやりなさい。もちろん、小学1年生のやつから」


 びしっと、俺を指さして言った。

 

「今から、本屋さんに、買いに行きます」

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