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レクサス逆転生――異世界育ちの俺、父さんの世界で科学文明を学ぶ  作者: しばたろう


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14/19

14二学期の終わり、世界が動き出す

 二学期が始まった。

 空気が、一気に動き出す。


 体育祭。学園祭。

 行事が立て続けにやってくる。


 クラスメイトたちの熱気は凄まじかった。

 準備、練習、当日――すべてに全力でぶつかっていく。


 その流れに乗るように、俺も一緒に盛り上がった。

 気づけば、かなり本気で取り組んでいた。


 ――楽しい。


 素直に、そう思った。


 だが、それでも。


 現代技術の探求に、手を抜くことはない。

 いや、むしろ――さらに力を注ぎ込んでいた。



 今、俺は。


 王国で車を作るためのロードマップを組み立てている。


 必要となる技術を、カテゴリーごとに洗い出す。


 エンジン。

 駆動系。

 制御系。

 素材。

 エネルギー供給。


 それらを一つひとつ、ノートにまとめていく。


 完成すれば、十冊は軽く超えるだろう。



 そして、学業。


 自動運転を知ってから、考えが変わった。


 大学で、AIや自動運転といった最先端技術を学びたい。

 それも、中途半端ではなく――最先端で。


 そのためには、それ相応の大学に進む必要がある。


 幸い、県内の自宅から通える範囲に、国内でも有数の工学部を持つ国立大学がある。

 目指すなら、そこだ。


 だが――


 現状では、到底足りない。


 英語。国語。

 苦手だから、などと言っていられる状況じゃない。


 全部、引き上げる必要がある。



 さらに――


 AIや自動運転の動向の収集。


 論文。記事。実証実験のレポート。

 調べれば調べるほど、新しい情報が出てくる。


 興味は、尽きない。


 時間が、いくらあっても足りない。



 ときどき。


 息抜き――と言うと、少し失礼かもしれないが。


 あれ以来、ハルカと二人で出かけることが増えた。


 やはり、緊張する。

 だが同時に、心が高鳴る。

 何気ない会話ひとつで、妙に意識してしまう。


 俺には大切な時間となっていた。


 一度。


 俺とハルカ、サクラ、そして武田の四人で、遊びに出かけたことがある。


 ボウリングにカラオケ、最後はガストで腹ごしらえ。

 特別でもなんでもない、ありふれたコースだ。


 それでも――


 少しだけ、緊張していた。


 だが。


 その緊張は、すぐにどうでもよくなった。


 武田が、ずっとサクラの隣でテンパっていたからだ。


 武田のフォローに巻き込まれ、気づけば俺の緊張なんて吹き飛んでいた。


 ――忙しいやつだ。



 夜。


 解散して、それぞれ帰路につく。


 俺とサクラは、並んで歩いていた。


 街灯の下。

 昼間の騒がしさが嘘のように、静かな道。


 自然と、話題はハルカのことになる。


 ――正直に言えば。


 俺は、ハルカとこれ以上距離を詰めることに、戸惑っていた。


 理由は、はっきりしている。


 いつか――


 俺は、この世界からいなくなるかもしれない。


 元の世界に、戻ることになるかもしれない。


 その時が、いつ来るのかはわからない。


 ハルカだけじゃない。


 サクラも。

 おじいちゃんも、おばあちゃんも。

 この世界で出会った、すべての人たち。


 ――いずれ来るかもしれない、別れ。


 その不安が、どこかで引っかかっている。


「……怖いんだよ」


 ぽつりと、こぼれた。


「離れることになるかもしれないのに、近づくのって」


 少しの沈黙。


 隣を歩くサクラは、前を見たまま、ゆっくりと口を開いた。


「別れを気にしてたら、誰とも出会えないでしょ?」


 淡々とした声。


「もし別れの時が来たら、その時に考えればいいのよ」


 あっさりと。


 けれど、まっすぐな言葉だった。


 ――なるほどな。


 胸の中に、すとんと落ちる。


 難しく考えすぎていたのかもしれない。


 サクラは、普段は明るくて、少し雑で、適当なことも言う。


 けれど。


 こういうところで、本質を外さない。


 本当に、思慮深い。


 ……武田が惚れるのも、よくわかる。

 


 とにかくだ。

 

 時間が足りない。


 だから――


 一つの方法を思いついた。


 魔法を使う。



 俺は、攻撃魔法のほかにも、いくつかの補助魔法を扱える。


 攻撃力強化。防御力強化。素早さ強化。


 そして――


 集中力向上。


 戦闘中、神経を極限まで研ぎ澄まし、

 敵の動きを見抜き、攻撃の精度を引き上げる魔法。


 これを――勉強の時に使う。


 魔石を握り、魔力を流し込む。

 呪文を唱えた瞬間――


 周囲の音が、消えた。


 視界に入るのは、目の前の書物だけ。


 雑念は消え、思考が一点に収束する。


 ページをめくる手が止まらない。

 理解が、加速する。


 ――これなら、いける。


 その代わり、魔石の魔力は消耗する。


 だが問題ない。


 魔石なら、レクサスのトランクに山ほどある。

 当分は困らない。



 そんなある日。


 ふと、違和感に気づいた。


 魔石の魔力には、わずかな“揺れ”がある。

 以前から感じていた現象だ。


 だが――


 その周期が、短くなっている。


 以前の、半分ほど。


 明らかに、変化している。


 これは、何を意味するのか。


 ――まだ、わからない。



 二学期の期末テスト。


 結果は――学年五位。


 英語と国語が足を引っ張ったものの、

 数学、物理、化学にいたっては、すべて学年一位だった。


 数字だけ見れば、上出来だ。


 だが。


 これは、魔法を使っての結果でもある。


 集中力向上魔法。

 あれを使えば、理解の速度は桁違いに上がる。


 ――少しだけ、後ろめたい。


 だが、すぐにその感情を振り払う。


 これは、遊びじゃない。


 王国で車を作る。

 そのための、準備だ。


 ならば、使えるものは使う。


 そう決めたはずだ。


 ――これは、通過点にすぎない。



 その頃からだ。


 魔石の“揺れ”に、急激な変化が現れ始めたのは。


 周期が、どんどん短くなっていく。


 最初は、わずかな違和感だった。


 だが、日を追うごとに、それは無視できないほどはっきりしてくる。


 まるで――


 何かが、近づいてきているかのように。



 そして、冬休みが始まった日。


 魔石の魔力の周期は、もはや測れないほど短くなっていた。


 増減が激しすぎて、もはや“波”として認識できない。


 ただ、荒れ狂っている。


 不規則に。

 そして、加速するように。



 その夜。


 ――限界を迎えた。


 そう感じた。


 周期は、極限まで縮まり、

 まるで“無限”に達したかのような錯覚。


 次の瞬間。


 ――なにかが、起きた。


 説明できない。


 だが、確信だけがあった。


 変化が、起きた。


 直感が、叫ぶ。


 ――レクサスだ。


 積んでいる魔石。


 あれが、何かの引き金になっている。


 俺は、部屋を飛び出した。


 階段を駆け下り、玄関を抜け、外へ。


 冷たい夜気が肺に刺さる。


 そのまま、駐車スペースへ走る。


 レクサスは、そこにあった。


 ――だが。


 運転席に、人影がある。


 誰かが、座っている。


 ハンドルを握り、前を見つめている。


 鍵はかかっていたはず。どうやって入った?


 街灯は遠く、車内は暗い。

 顔はよく見えない。


 ゆっくりと近づく。


 心臓の鼓動が、やけに大きく響く。


 ドアの前に立つ。


 ノックする。


 コン、コン。


 その音に反応するように、


 運転席の人物が、ゆっくりとこちらを振り向いた。


 その瞬間。


 雲の切れ間から、月明かりが差し込む。


 顔を、照らした。


 ――見覚えがある。


 いや、そんなはずはない。


 けれど。


「ミオ……?」


 思わず、名前がこぼれた。

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