表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/85

第9話:覚醒の天穿槍、遺跡を無双する

黄金の光に包まれ、槍は完全に姿を変えた。


悠真の手の中にあるそれは、もはや古びた武器ではない。

白銀の刃先には微細な魔法紋が走り、柄の内部には淡い青い光が脈打つように流れている。


その光は一定のリズムで明滅し、槍そのものが“呼吸している”かのような錯覚さえ与えた。


握った瞬間、掌の奥に伝わる感触が違う。

冷たいはずの金属が、不思議と温かい。

そして何より――圧倒的な“力”の気配があった。


「……天穿あまぬけの槍、か。」


悠真は呟き、進化の結果を確かめるように軽く振ってみた。


その瞬間――


周囲の空気が一瞬震えるような感覚が走った。


空間そのものが裂けるような感覚——まるで槍が動く軌道に沿って、次元の薄皮が引き裂かれたかのような、不快と快感が混じった、形容しがたい感覚が走った。


「にゃっ……!? な、なにそれ、すごいじゃない!」

リィナが飛び退くようにして声を上げた。


「敵の防御を無視して攻撃できる槍ってところだな。」


悠真は自分の感覚を確かめるように、もう一度ゆっくりと槍を構え直した。

この武器は“硬さ”や“装甲”という概念そのものを否定する。


「つまり、どんな硬い敵でも一撃で倒せるってこと?」


「そういうことだ。」


「ほぉ〜……こりゃ本物っぽいにゃ。」


リィナは目を輝かせ、尻尾をぴんと立てたまま、興味津々で槍を覗き込んだ。


「うん。これなら、遺跡の奥まで進めるかもしれない……!」


そう呟いたところで、リィナは満足げに頷くと、あっさり背を向けた。


「へへっ、それじゃあ、あたしはお宝探しの続きに戻るにゃ〜。」


くるりと身を翻し、尻尾を揺らしながら去っていこうとする。しかし——


悠真は思わずその背中に声をかけた。


「ちょ、ちょっと待ってよ。」


「……んにゃ?」

振り返るリィナの耳がピクリと動く。


「このあと、どうするつもりなんだよ?」


「にゃふふ。もう十分稼いだから、出口に向かうつもりだよ」


腰のポーチを叩くと、金属音が軽やかに鳴った。


「でも……まだ敵がウロウロしてるだろ。一人で抜けるのは危なくないか?」


「にゃはは、まさか心配してくれるの? あたし、こういう遺跡は何度も抜けてるから慣れっこだよ」


「いや、そうじゃなくて……」


言葉を濁すと、リィナは意味ありげに尻尾を揺らす。


「ねえ、もしかして――寂しいの?」


「ち、違うよ!」


即座に否定したものの、

頬が少し熱くなるのを止められなかった。


ほんの少しとはいえ、会話が心地よかったのかもしれない——それに、一緒にいた相手が急にいなくなるのは……落ち着かなかった。


「べ、別に。そういうわけじゃないけど……ただ、ほら、一人だといろいろ面倒だろ。」


嬉しそうに笑うリィナ。


「ふふん、優しいんだか不器用なんだか。」


「それにさ」


悠真は少し声を大きくして続けた。


「お前、さっき“その槍があれば奥まで行ける”って言ってたじゃん。」


リィナの耳がピクッと反応する。


「覚えてたんだ。君、意外とずる賢いにゃ」


「だって本当だろ? 俺もこの槍の力をちゃんと試したいし……」


リィナは槍を見つめ、しばし沈黙する。


「……確かに.....

君の持ってるモノ、どう見ても普通じゃないし。」


「だろ?」

悠真は苦笑しながら、槍を軽く振ってみせた。

刃先が空気を切り、リィナの髪がふわりと揺れる。


「うん……ちょっと見たいかも。」


「……じゃあ」


悠真は一瞬迷ったあと、素直に口を開いた。


「一緒に来ないか? お前なら、遺跡の構造とか敵の動きとか、いろいろ教えてもらえそうだ」


リィナの瞳が一瞬、大きく見開かれた。


「なるほど。道案内+観戦要員ってわけにゃ?」


悠真が笑みを浮かべると、リィナは肩をすくめた。


「しょうがないにゃ。

そこまで言われたら付き合ってあげる! 

そのかわり、宝は山分けだからね!」


「ああ、約束だ」


悠真の顔に、安堵の笑みがこぼれた。


こうして、

悠真とリィナは奇妙なコンビを組み、

遺跡の奥深くへ踏み込むことになった。


道中のやりとりは、

意外にも息が合っていた。


罠や仕掛けが幾重にも待ち構えていたが、悠真の慎重な探索とリィナの素早い動きで、それらを難なく切り抜けていく。


「にゃはは、息ぴったりじゃん!」


軽口を叩きながらも、二人の動きは無駄がない。

互いに背中を預けるような感覚が、自然と生まれていた。


(……俺たち、案外、いいコンビかもしれないな)


しかも、以前なら苦戦していた敵も、今は違う。悠真の手には『天穿の槍』があり、その力が彼に自信を与えていた。


リィナの鋭い感覚と相まって、

二人は奥へ進むたびに勢いを増していく。


数体の魔物が現れたが、結果は一方的だった。


ゴブリンの群れが飛び出した瞬間、

悠真は迷わず踏み込み、槍を一閃させる。


ズバッ――


刃先が触れた“その先”まで、

空間ごと切り裂かれたかのように、

魔物は音もなく崩れ落ちた。


「……え、なにそれ……今、触ったよね?」


「たぶん……触れた瞬間、全部無視してる」


「にゃはは、怖すぎにゃ……」


別の通路で出現した装甲持ちの魔獣も同様だった。

硬い外殻を誇るはずの防御が、まるで意味をなさない。


ズンッ――!


槍が突き出されるたび、魔物は“存在の芯”を貫かれ、霧散する。


「防御無視ってレベルじゃない……」


リィナが呆然と呟く。


「にゃ……存在ごと消し飛ばされてるみたい……こわっ」


悠真自身も同じことを思っていた。


この槍は、強い弱い以前の問題だ。

戦いのルールそのものを壊している。


そのときだった。


ゴゴゴ……ゴゴゴゴ……


床が震え、天井から砂埃がぱらぱらと落ちる。


通路の奥から、低く響く地響きとともに、

全身を岩で覆った魔物

――ストーンゴーレムが姿を現した。


かつては手も足も出なかった強敵だ。


だが――


今は違う。


「いくぞ……!」


悠真は槍を構え、一気に踏み込む。


ストーンゴーレムが腕を振り下ろすよりも速く、悠真の槍が突き出された。


ドゴォン!


重い音とともに、岩の巨体を貫いた

しかし異様に軽い手応え。

岩を貫いた感触ではない。

“空気を突き抜けた”ような、虚ろな感触。


ピキ……ピキピキ……!


全身に亀裂が走り、

青白い光が内部から溢れ出す。


そして――


ガラガラガラガラッ!!


巨大な岩の体は、崩れるように粉砕された。


「……一撃、か。」


悠真は思わず息をのんだ。


恐怖の象徴だった魔物が、

まるで紙細工のように壊れた。


「……本当に、防御無視にゃ……」


リィナは目を丸くし、感嘆の声を漏らす。


「これはもう、反則級すぎる……」


悠真は槍を見下ろす。


(これが……進化の力)


強すぎる。

だが、嫌な感じはしなかった。


「これなら……」


悠真は静かに言った。


「これなら……最深部のボスだって、倒せるかもしれない」

第9話、ご覧いただき大感謝です。

次回、第10話『遺跡の王ロックヴァルドと、異世界武具の謎』も是非よろしくお願いします。


いろいろなご意見、お待ちしています。感想もm(_ _)mです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ