表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/86

第38話: 爽快無双バトルに突入。

最初に姿を現したのは、牙を剥いた大狼の群れだった。

リィナが駆け抜けるたび、《雷哭らいこくの短剣》が閃き、稲光が地を走る。巨体が音もなく崩れ落ち、草の匂いに焦げた匂いが混じった。


「軽い! 切れ味もすごいにゃ!」


悠真は雷光の剣を振り下ろし、轟音と共に十数体の魔物を一瞬で灰に変えた。青白い閃光が闇夜を裂き、視界いっぱいに暴れ回る。

「威力は十分。問題なしだ」


 ――だが。


森の奥から、低い振動が地を這うように伝わってきた。

木々が一斉になぎ倒され、闇の中から溢れ出す魔物の群れ。

狼、蜥蜴、巨大な虫、影のような獣――視界の端から端まで埋め尽くすほどの数だった。


リィナの足が止まる。

「……え、ええ〜! これはちょっと、多すぎない?……」


悠真は肩をすくめ、苦笑した。


「腕試しのつもりが……模擬戦どころじゃないな」


「これじゃあ、街が……飲み込まれちゃうよ……!」


それでも、リィナの瞳は怯えよりも熱を帯びていた。

短剣を素早く納めると、背中の弓を引き抜いた。弦を軽く弾き、にやりと牙を見せるように笑う。


「でもさ――こういう無茶の方が燃えるんだよにゃ!」


「同感だ」


悠真は剣を構え、雷鳴を呼び起こす。

青白い光が空を裂き、闇夜を昼のように照らす。


「まとめて灰にしてやる!」


「いくにゃっ!」


リィナは弓を引き絞った。雷迅の弓は、雷鳴丘の残滓が宿ったかのようにしなやかに光を放つ。


 一射目、放たれた矢はまるで稲妻の軌跡を描き、前方の魔狼の頭を貫いた。矢が命中すると同時に、周囲の空気が爆ぜ、二匹目三匹目の魔狼が連鎖するように弾き飛ばされる。


さらに二射目の矢が地面に突き刺さると、雷が駆け抜け後方の群れを弾き飛ばす。

“雷矢変換”と“属性共鳴”――二つの特性が完璧に融合した瞬間だった。


「ひゃっ……これ、本当に私の矢?!」

リィナ自身が目を丸くする。撃った矢が、雷精のように変化し、森を照らしていく。


次々と放たれる矢は木々の間を閃光のごとく走り、魔狼が雪崩のように倒れていく。一人で軍勢を薙ぎ払う狩人の女神のようだった。


「すげぇな……。だが、まだ来るぞ!」


悠真が前に出る。


矢の雨を抜け、なおも魔物たちは突進してくる。

十、二十、三十――際限がない。


「悠真、後ろ! 囲まれる!」

リィナの叫びにも、彼は振り返らない。むしろ口元に笑みを浮かべた。


「いい機会だ。雷光の剣、本気で試してみるか」


剣を天へと掲げる。瞬間、空気が震えた。雷雲もない晴天に、白き稲妻が奔る。


刃を振り下ろす――雷が地を裂き、群れの中心へ突き刺さった。

耳をつんざく轟音。衝撃波が草木をなぎ倒すと共に、魔物たちが一斉に跳ね飛ぶ。

黒焦げの残骸が、雷鳴の残響とともに夜空へ舞い上がった。


「うわっ……!」

リィナは思わず耳を押さえる。鼓膜を揺らし、腹の底まで震わせた。


煙が晴れると、地面には焦げた魔物が折り重なっていた。

ただの一撃で、群れの半分が消えた。


「……一撃で、これ……?」

リィナの声は震えていた。


だがまだ終わりではなかった。後方からさらに大群が押し寄せてくる。


「数が減ったくらいじゃ止まらないよな」

悠真は低く呟き、再び剣を構える。


そして、振り下ろした軌跡は雷そのものだった。前方を薙ぎ払った瞬間、数十体の魔物が宙を舞う。


二閃――数十匹が灰になる。

三閃――大地に亀裂が走り、電撃が根こそぎ群れを焼き尽くす。


雷鳴は終わらない。

もはやそれは一人の剣士の戦いではなく、天そのものが怒りを爆発させているかのようだった。


「す、すご……にゃ……」

リィナがかろうじて声を絞り出す。


それでも彼女の手は止まらない。矢が雷に導かれるように飛び、放つたびに稲妻が奔る。

弓と剣、雷と矢――二つの光が絡み合い、嵐のように大地を覆い尽くす。


それは戦闘というより、もはや“災厄”だった。


やがて最後の雷光が森を貫き、轟音とともに魔物の群れが完全に沈黙した。森には静けさだけが残る。


悠真は剣を地に突き立て、息を整えた。

「……終わったな」


風が抜け、焦げた匂いが遠ざかっていく。

生き残った魔物は、一匹もいなかった。


「う、嘘みたい……」

リィナは弓を握ったまま震えていた。

自分の矢が、こんな力を持っていたなんて夢にも思わなかった。


悠真もまた、剣を見つめた。

刃の奥で、まだ小さく雷がうずくように光っている。


「……俺たち、強くなりすぎてないか?」


「かもね。でも…...悪くない気分だにゃ」


二人は顔を見合わせ、同時に笑った。


雷と矢が織りなした無双の戦いは、彼ら自身にすら驚きを与えていた。


ーーーーー


街はまだ騒然としていた。


魔物の群れを退けた悠真とリィナの名は、瞬く間に広まり、人々は彼らを英雄のように扱い始めていた。


広場を通るたびに「おかげで助かった」「雷鳴の勇者だ!」と声が飛んでくる。本人たちはどこか照れくさそうにしながらも、決して悪い気はしなかった。


「にゃっはっは! 悠真、聞いた? 英雄だってさ!」

リィナが胸を張って歩く。


「いや、浮かれるなよ。俺たちはやるべきことをやっただけだよ。」


「でも、みんな本気で感謝してるにゃ。悪い気はしないでしょ?」


そう言って笑う彼女の表情は、戦場での鋭さとは打って変わって、猫のように無邪気だった。


そんな折、街の宿で一人の旅人と出会った。


雪を思わせる純白のマントは、動くたびにひらりと舞う。

先の尖った帽子には氷の結晶を象った飾りが揺れ、見る者に冷たい気配を与える。


肩まで流れる銀髪は月光のように艶やかで、その腰に携えた黒木の杖には古代文字が刻まれていた。


光沢の美しい深青のローブには大胆なスリットが入り、脚線を美しく見せつつ、戦闘時の俊敏な動きを可能にしていた。


ひと目でわかる――この世界において只者ではない、まさに“魔法使い”だった。


「やっと見つけたわ! あなたが……雷を呼ぶ剣士ね?」

「そして、あなたが、その相棒でしょ?」


彼女はまっすぐ悠真を見つめ、口元に淡い笑みを浮かべた。


「にゃ、にゃんだ?」

リィナがたじろぐ。


息を切らせながらも、彼女は目を輝かせる。

「私はセレス。雪山の村から来たの。お願い、助けて!」


言うが早いか、セレスは勝手に椅子を引いて腰を下ろし、卓上の水差しをぐいっと一気に飲み干した。


「ふう〜、生き返るわ。でね、事情を説明するわ」


悠真とリィナが顔を見合わせる間にも、彼女は早口でまくしたてた。


「雪山の村ではね、このところ異様な寒波が続いてるのよ。それに魔物が妙に活発になってきて、村の外にすら出られりゃしない。食料も底を尽きかけてて、このままじゃ全滅よ! しかもね、村を守っていた『氷の盾』まで消えちゃったの」


そう口にする刹那、彼女が触れた水差しの縁から、ビー玉ほどの小さな丸い氷がこぼれるように生まれていた。


それがテーブルに転がり落ちると、白く濁り回転して消えた。

あまりにも小さい動きなので、注意しなければ見逃してしまいそうだった。


そして、話している最中も、小さな氷の粒が一つ、また一つと現れては、音もなく溶けるように消えた。


まるで彼女の言葉のリズムに合わせて、魔法が無造作にこぼれているかのようだった。


「え?え?...何て?」

悠真は一瞬、粒が気になって頭に入ってこなかった。


「だから〜!私の村、めっちゃ寒くなって、魔物も暴れまくりで、食料もつきてヤバイの。で、『氷の盾』まで消えちゃったの!」


セレスはわざとらしく机をドンと叩いた。

「どう? もう完全に詰んでるでしょ?」


すると、氷の粒もコロンと跳ね、薄い光を放って消えた。まるで彼女の感情の高ぶりに反応したかのような動きだった。


「ちょっと……落ち着けよ」

そう言ったものの、内心ではテーブルに目を奪われていた。


悠真はテーブルに散る氷粒を一瞥し、すぐに顔を上げた。

「つまり――『氷の盾』が消えたせいで、村の防衛が崩壊寸前ってわけか」


リィナも小さくうなずく。

「えっと......村人がすごく困ってるってことだよね」


「そう! そういうこと!」セレスは嬉しそうに手を叩いた。


「それでね、私ひとりじゃどうにもならなくて……あなたたちにお願いしたいのよ」


「にゃ......なるほど〜。」


リィナはうなずきつつも、テーブルの上で消える氷の粒にみとれていた。


どうやら、セレスは無意識に魔法をこぼしているらしい。


セレスの図々しさと真剣さが混じった調子に、悠真は思わずため息をついた。

リィナと視線を交わすと、セレスはにやりと笑って肩をすくめた。


「また面白い話が転がり込んできたにゃ。どうする、悠真?」


「……放ってはおけないな」


「やっぱりね! じゃあ決まりにゃ!」


こうして三人は、雪山の村へと向かう旅に出ることになった。

第38話、最後まで、ご覧いただきありがとうございます。嬉しっす。(^^)


次回は、第39話『偏屈な魔法使いセレス』

新キャラクター登場で、ドキドキしてますが、

ぜひ応援よろしく本当にお願いします。

ブクマ、評価、いっぱい欲しいですm(_ _)m。


そして、いろいろなご意見、お待ちしています。感想もお願いしたいのです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ