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第30話:炎の勇者と烈火の刃

 一真は驚きながらも、悠真の投げた剣を受け取った。

 「お前……!」


 握った瞬間、烈火の刃が眩い光を放つ。


 (やっぱり……勇者が持つと効果が増すのか?いや、それとも、あいつが“炎の勇者”だからか?)


 手の中で、剣はさらに強力な炎をまとい、熱気が戦場を包み込む。

 試すように一閃を放つと、燃える軌跡が弧を描き、目の前の魔族をあっけなく焼き尽くした。


 「ぐ、あぁぁぁ!!」


 一真の表情が一瞬で驚きに変わる。

 「これが……お前の力か……?」


 悠真はにやりと笑う。

 「お前なら、もっと上手く使いこなせるんだろ?」


 一真は数秒だけ黙り込んだが、次の瞬間には再び剣を構えていた。

 紅蓮の刃が唸りを上げ、魔族の群れを切り裂いた。


 美咲の魔法が輝きを増し、健吾の盾が不動の砦となる。

 兵士たちの士気は再び上がり、戦場にわずかながら勝利の気配が漂い始めた。


 だが——戦いは、まだ終わらない。

 戦場の奥深くから、さらなる気配が迫っていた……。


ーーーー


悠真たちが戦況を立て直しつつあったその時、地響きが鳴り響いた。


「……嫌な予感がするにゃ」


リィナが耳をぴくりと動かしながら、瓦礫の先を睨む。


ズシーーン!


直後、地面が揺れ、崩れた建物の向こうから、巨大な影がいくつもゆらりと立ち上がった。


「まさか、また巨人かよ……!」


現れたのは、宿屋街で倒した個体と同じ“造られた巨人”。

しかし、今回はその数が違う。五体、六体……いや、それ以上。


(数が多すぎる……!)


新たに現れた巨人たちは、先ほどよりも明らかに大きく、筋肉は岩のように隆起し、武器も一回り凶悪だ。


それぞれが巨大な戦斧や棍棒を握りしめ、鋭い牙を剥き出しにして唸っていた。


王国軍の兵士たちは、その威圧感に怯え、戦線が崩れかけている。


「下がるな! 奴らの数は限られてる!」


一真が烈火の刃を振るい、士気を高めるように叫ぶ。

その声が戦場の緊張をわずかに引き戻す。


「くそ……!」


烈火の刃を託した悠真は、天穿の槍と風裂の刃を手に構える。

(ここは、勇者たちを生かす戦い方に――)


そう思考を巡らせた矢先、咆哮が轟いた。


「グォォォォォ!!」


巨人の振り下ろした大剣が地を砕き、兵たちが吹き飛ぶ。

戦列が崩れた――


「させるかっ……!」


一真が前へ躍り出る。


「悠真!お前の剣、どこまでやれるか試させてもらうぞ!」


巨人の足元に滑り込み、烈火の刃を振り上げた。


燃え盛る剣が巨人の脇腹を斬る。


「グガァァッ!」


巨人は苦悶の声を上げるが、そのまま拳を振り下ろしてくる。


「一真、右だ!」


悠真は風裂の刃を振るった。


刃から放たれた風の斬撃が、回転しながら風をまとい、巨人の腕を切り裂く。


「っ! 危ねえ!」


一真は咄嗟に身を翻し、炎の剣をもう一度振りかぶる。


「燃え尽きろ——!」


烈火の刃が真紅の炎を放ち、巨人の胸を切り裂いた。


傷口から炎が広がり、巨人の動きが鈍る。


「今だ、美咲!」


「うん!」


美咲がランタンを高く掲げ、澄んだ声で詠唱した。


「聖光照破——!」


眩い光が巨人の顔面に叩きつけられ、巨人は苦悶の咆哮を上げてのけぞった。


「効いてる……!」


悠真は槍を構え、青白い炎をまとわせた。


「決めるぞ——天穿の槍!!」


悠真が跳躍し、全力で槍を投擲する。


槍は巨人の胸を貫き、その穿たれた穴に、一真の放った残炎が流れ込んでいった。

瞬く間に巨躯の全身は、紅蓮の業火に包まれる——。


「グオォォォォ……!」


巨人がついに膝をつき、そのまま崩れ落ちた。

残炎が消え、戦場に新たな敵影が浮かび上がる。


「どうだ、一真。武器の使い心地は?」


「……まあ、悪くないな。」


一真が剣を軽く振ると、刃先に炎が宿りゆらゆらと揺らめいた。

(驚いたぜ……炎の力が、まるで自分の中から溢れてるみたいだ)


「ふーん、お前の言い方にしては珍しく素直だな。」


「勘違いするなよ。武器が優秀なだけだ。」


そっけなく返す一真に、悠真は苦笑を浮かべた。


だが、その剣捌きは、もはや自在に使いこなす者のそれだった。


「なら、わかってもらうまでさ。俺の力を——」


その言葉を皮切りに、新たな巨人たちが襲いかかってきた。


一真が先陣を切る。


「ああ....やるしかねぇ!」


烈火の刃が一閃すると、炎の残像が宙を走る。


ズバァン!!


一体の巨人の脚部を斬り裂き、瞬く間に炎が這い上がった。


「グガァァァッ!!」


巨人が苦痛に叫びながら膝をつくが、すぐに持ち直し、巨大な斧を振り上げる。


「させるか!!」


悠真は、斧を持つ腕を狙った。

鋭い風の斬撃が巨人の腕を切り裂き、一瞬の隙を作り出した。


「くらえ!」


一真が踏み込み、剣を振り抜く。

真紅の閃光が閃き、巨人の首を断ち切った。


ゴォォォォォ!!


爆炎が上がり、巨体が崩れ落ちる。


(いい感じじゃないか……)


悠真は確信する。この一撃で、一真はもう烈火の刃を完全に支配していた。


その一方で、健吾もまた戦い方を変えていた。


ドォオオン!!


「……っ!! くそっ、重い!!」


健吾の守護の砦が、巨人の鉄槌を真正面から受け止める。


通常なら粉砕されるほどの衝撃——だが、守護の砦はびくともしない。

むしろ重圧を水のように受け流し、魔力が波紋となって、健吾の足元を盤石に支えていた。


「これなら……いける!!」


健吾は後方の兵士たちを背に、大きく構える。


「お前ら! 俺の後ろに下がれ! こいつは俺が止める!」


その声に、兵たちは顔を上げた。

誰もが、目の前の男に“勇者”の姿を見ていた。


(……健吾。あいつも、もう使いこなしてる)


悠真が胸の奥でつぶやいたその時、


「悠真、下がって!」

美咲の声が響いた。


彼女は《炎光のランタン》を高く掲げる。

ランタンの炎が周囲の魔力と共鳴し、赤く脈動し始めた。


「水環の奔流!」


呪文が放たれると、巨人たちの足元に大量の水が噴き上がり、瞬く間に渦を巻く。

水は蛇のように這い、巨人の足首を絡め取り、動きを封じていく。


そして、彼女は息を継ぐ間もなく次を紡ぐ。


「蒸気爆発!!」


炎と水が激突した刹那——


ドゴォォォン!!


轟音とともに灼熱の蒸気が炸裂。

白い霧が戦場を覆い、巨人の装甲が赤熱し、溶け落ちる。


「グォォォォ!!」


巨人たちが咆哮し、のたうち回る。

焼け爛れた臭気が立ち込め、熱風が兵士たちの頬を打った。   


美咲の額に汗が光る。

それでも彼女の瞳は、一点の揺らぎもなく敵を見据えていた。


「今よ、一真!!」


「わかってる!!」


一真が地を蹴る。

烈火の刃が紅蓮の弧を描き、閃いた。


「燃え尽きろ!!」


ゴォォォォォ!!


炎が巨人の胸を貫き、内側から炸裂。

紅蓮の柱が天を焦がし、巨体たちが音を立てて崩れ落ちていった。


 ……静寂。


焼け落ちた巨体の間に、風が通り抜ける。

兵士たちは呆然と立ち尽くし、やがて、歓声が沸き起こった。


「勝ったぞ……! 勇者たちが……勝ったぞ!!」


「すげぇ……あの怪物どもを……!」


歓声が波のように広がる中、悠真はようやく肩の力を抜いた。


一真たちも息を整えながら立っている。

どの顔にも、静かな自信と誇りが宿っていた。


「すげぇな、お前ら。もう俺の武器を使いこなしてる。」

悠真は息をつきながら、一真たちを見回した。


一真は烈火の刃を肩に担ぎ、薄く笑う。

「さあな。少なくとも、武器に振り回されるほどヤワじゃねぇ。」


それは悠真の能力を完全に認めたわけではない。

だが、十分に理解している発言だった。悠真は苦笑しながらも、一真の言葉を受け入れた。



しかし——


その瞬間、戦場に冷たい風が吹いた。


悠真の背筋がぞくりとする。


「……なんだ?」


遠く、戦場の奥から、異様な気配が近づいていた。


「……まだ終わっちゃいねぇ。」


兵士の一人が、信じられないものを見る。


それは——

第30話、最後まで、ご覧いただきありがとうございます。嬉しいです。


次回、第31話:『魔王直属の将バルグ=ゾルダ』も

是非【応援よろしくお願いします。】

ブクマ、評価、お願いします。


うまく書けてるのだろうか....不安っす(^◇^;)

いろいろなご意見、お待ちしています。感想もm(_ _)mです。

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