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第10話:遺跡の王ロックヴァルドと、異世界武具の謎

二人が最後にたどり着いたのは、これまでとは比べものにならないほど広大な空間だった。


天井は高く、まるで空洞化した山の内部のようだ。

四方の壁には古代文字と複雑な魔法陣が幾重にも刻まれ、淡い青白い光が脈打つように流れている。


その中央に鎮座していたのは――


「……でかすぎにゃ」


リィナが思わず呟く。


通常のストーンゴーレムとは次元が違う存在。

全身を覆う岩は黒曜石のように黒く、

硬く、鈍い光を放っている。


胸部には巨大な魔法陣が刻まれ、その中心で青白い魔力核が心臓のように脈動していた。


その存在感は、

まるで古代の神像のようだった


「ロックヴァルド……遺跡のボスにゃ」


その名を聞いた瞬間、

悠真の背筋に冷たいものが走る。


圧倒的な存在感。

まるで“この空間そのものが、

この魔物の支配下にある”かのような錯覚を覚える。


次の瞬間、

ロックヴァルドが目を開いた――!

ーー遺跡全体が震える。


ゴゴゴゴゴゴ……!!


「くっ!」


悠真は『天穿の槍』を構えた。


遺跡の奥、石造りの祭壇で、

その巨体がゆっくりと立ち上がる。

身長は優に3メートルを超え、

手足の太さは丸太のように大きい。


その威圧感に、

悠真は思わず息を呑んだ。


「……怪物かよ!」


心臓が高鳴るのを感じた。

足元が震えそうになるのを必死でこらえる。


ズシン……ズシン……!


一歩踏み出すたび、

地面が割れ、振動波が走る。


崩れた石片が四方に飛び散り、

天井から砂が降り注ぐ。


「こいつ、強いにゃ……」


「でも……やるしかない」

悠真はゴクリと唾を飲み込む。


その瞬間――


……ドォン!!


ロックヴァルドの巨腕が振り下ろされた。


「うわっ!」


悠真は横に飛び退る。

拳が地面に叩きつけられ、

岩盤が爆発したかのように砕け散る。


深いクレーターが生まれ、

衝撃で体が浮いた。


「まともに喰らったら、

跡形も残らないにゃ!」


「分かってる......!」


息を荒げながら間合いを取る。

圧倒的な力の差――だが、退くつもりはなかった。


「少し時間を稼ぐにゃ!」


「時間?」


リィナはポーチに手を伸ばした。


「ふふん、いい作戦があるよ!」


そう言うやいなや、リィナはポーチから小さな黒い球を取り出した。


「それは……?」


「即席の爆弾にゃ。これでヤツの注意を引く!」


そう言って、リィナは迷いなく投げつけた。


ボンッ!!


爆音とともに、

ロックヴァルドの顔面が煙に包まれる。

視界を奪われた巨体が、

一瞬だけ動きを止めた。


「今にゃ!!」


「……っ!」


リィナの声に反応し、悠真は一気に跳躍する。


目標はただ一つ。


煙の向こう、胸の奥で青白く脈打つ、

魔力核の位置を感覚で捉えた。


槍の穂先が黄金色に輝く。


「――貫けぇぇぇぇぇぇっ!!!」


全力の一撃が、一直線に突き出された。


ズブゥゥッ!!


槍はロックヴァルドの装甲を容易く貫通し、その奥にある魔力核を突き破る。


バキィィンッ!!


砕け散る魔力核。

瞬間、ロックヴァルドの体から青白い光が溢れ出し、動きが完全に止まる。


「……やった、のか?」


槍を引き抜いた、その直後――


ゴゴゴゴ……ドォォォン!!


壮絶な轟音とともに、ロックヴァルドは巨体を揺らしながら崩れ落ちた。


悠真は大きく息を吐き、槍を地面に突き立てた。


「……勝った」


「……勝ったにゃ」


二人の視線が交わり、次の瞬間――


「やったぁぁぁ!! 凄いにゃ!!」


リィナが歓喜の声を上げながら、

勢いよく悠真に飛びついてきた。


「わあっ!」


悠真はその勢いに押されて尻餅をつく。

見上げると、

リィナが満面の笑みを浮かべていた。


「ふふ、君、めっちゃカッコよかったよ!」


「お、おう……」


悠真は恥ずかしそうに頭をかき、

軽く笑って誤魔化した。


この距離、この温度、この鼓動。

戦いの緊張が解けた今、

やけに意識してしまう。


ロックヴァルドが崩れ去った広間には、

しばらく砂埃と静寂だけが残っていた。


やがて、

ゆっくりと視界が晴れていく中で、

瓦礫の中心に青白く輝くものが見えた。


「……あれ」


悠真は立ち上がり、慎重に近づく。


それは拳ほどの大きさの魔法石だった。

透き通るような青の中に、

細かな光が星屑のように閉じ込められている。


「魔力核の残骸……いや、

凝縮された結晶体にゃ」


リィナが目を輝かせる。


「超レア品だよ、それ。

下手したら家一軒買えるにゃ」


「……そんなに?」


「にゃはは、控えめに言っても一等級だよ」


悠真は思わず苦笑しながら、

それを拾い上げた。


ずしり、と重い。

だが物理的な重さ以上に、

圧倒的な“力”を内包しているのが分かる。


「これが進化の能力かよ……とんでもないな.....」


悠真は深呼吸し、

握りしめていた槍をゆっくりと下ろした。


「でも……倒したぞ」


「すごいよ! あんな化け物を一撃でやっつけちゃうなんて!」


リィナが目を輝かせて悠真を見上げる。

尻尾が小さく揺れ、ニーハイに包まれた細い足が弾むように動いた。


「ま、まあ、槍の力がすごかったってだけだろ。

それに、俺一人じゃ無理だった」


「にゃはは、謙遜しちゃって。

君って結構シャイなんだね?」


リィナはくすっと笑うと、

ぴょんっと悠真の目の前に飛び出した。


「そういえば、ちゃんと名乗ってなかったね。あたしはリィナ・フィオナ! 冒険者兼、行商人兼、トラブルメーカー!」


「最後のいらないだろ……」


悠真は呆れながらも、リィナの笑顔につられて口元を緩める。


「俺は篠崎悠真。ただの冒険者だ」


「ただの冒険者が、

あんなすごい槍を持ってるわけないでしょ」


リィナはニヤッと笑いながら、

悠真の槍をじっと見つめる。


「ま、詳しいことはおいおい聞くにゃ。

でも、とりあえずこれから、どうするの?」


「……そうだな。もう探索は終わったし、一旦街に戻ろうかな」


悠真がそう言うと、

リィナは尻尾をピンと立てて顔を輝かせた。


「にゃふふ、それならあたしも一緒に行く!」


「おいおい、

遺跡を出るまでの約束じゃなかったっけ?」


「当然でしょ!

こんな面白そうな人、逃がすわけないって!」


リィナは腕を組み、

満面の笑みを浮かべる。


悠真は少し考えたが、すぐに肩をすくめた。


「……まあ、別にいいか」


「決まり!」


リィナは嬉しそうに飛び跳ねる。


悠真は立ち上がり、ロックヴァルドが崩れ去った広間をゆっくりと見渡した。


瓦礫の隙間には、

古びた武器や防具の残骸が散らばっている。

どれも、

これまで見てきたものとは明らかに違っていた。


形も質感も異様で、

まるでこの世界の理から外れたような、

不思議な雰囲気を放っている。


「ここ、本当に不思議な遺跡だよね……」


リィナが落ちていた剣を拾い上げ、

光にかざす。


刀身の表面に、

淡い青の紋様が浮かび上がった。


それは生きているかのようにゆらめき、

刃そのものが呼吸しているようにも見えた。


悠真もまた、自分の手にある「天穿の槍」をじっと見つめ直す。


(同じような青い紋様……

俺の進化能力で変わった武器と、

ここで発掘されたもの……どこか似ている)


そう感じた瞬間、

リィナがぽんっと手を叩いた。


「そうだった! この遺跡、実は、

“異世界の武具”が眠ってるって噂があるんだよ!」


「異世界の……武具?」


悠真が首をかしげると、

リィナは得意げに尻尾をピンと立てた。


「あくまで噂だけどね。昔、この場所で異世界から来た戦士たちが壮絶な戦いを繰り広げたらしいの。


そのときに使われた武器や防具が、

今でもあちこちに残ってるって言われてるにゃ!」


「戦いの……名残か」


悠真は壁に刻まれた謎めいた紋様や、

岩肌を走る光の筋を改めて見つめた。


確かに、ただの遺跡とは思えない

“息づかい”のようなものが漂っている。


「そうそう! 

その戦いがあまりにも激しかったせいで、

空間そのものが歪んでるんだって。


だから普通じゃありえない強力な武具が、

たまにポロッと出てくるの!」

 

リィナの言葉を聞きながら、

悠真は槍を軽く握り呟いた。


「異世界の武具……。

もしそれが本当なら、

俺の能力とも関係があるのかもしれない」


「やっぱり悠真の力、普通じゃないよ。もしかして、悠真自身が“異世界の戦士”だったりして?」


冗談めかして言うリィナに、

悠真はドキッとしながらも肩をすくめた。


「どうだろうな。俺にも分からないよ」


――だが、胸の奥に微かな違和感が残った。

それは、言葉にできない引っかかりのようなもの。

そして、今はまだ触れるべきではないと、本能が告げていた。


「とりあえず、街に戻ろっか。

あとで詳しく調べればいいさ」


「賛成! お腹も空いたし!」


リィナがにっこり笑うと、

悠真も少しだけ口元をほころばせた。


二人は崩れた石段を登り、

光の差し込む出口へと向かう。


振り返れば、静寂に包まれた広間の奥で、

砕けた魔力核がかすかに青く瞬いていた。

第10話、ご覧いただき大感謝です。

次回、『第11話:疑念を持つ強者たちとの対決!』も

是非よろしくお願いします。


いろいろなご意見、お待ちしています。感想もm(_ _)mです。

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