クローズド・スペース ~イン・スクール~
「…ねぇ!起きて!起きて!」
体を揺すられて目を醒ます。
机に上体をうつ伏せる形だったから体が痛いや。
顔を上げれば、目の前に女の子、確か…佐東ミズキさんだ。
いつもの茶髪で束の短いポニーテールはそのままだけど、ちょっと怒ってる?
「大変だよ!」
「たい、大変ってなに?」
「学校に閉じ込められちゃったの!」
「え、ええ?!」
僕が起きたことでミズキさんは話をしてくれた。
それは寝起きで聞くには驚くようなことで、あまり理解ができなかった。
「とにかく!出るために動こう!」
「わ、わかったよ!」
ミズキさんに手を引かれて、その勢いで立ち上がった。僕は怪我をしないよう、そのまま引かれる。
外はもう真っ暗で、校舎内も暗い。
でも、あまり感じなかった月の明かりがすごく明るく感じた。
「すごい静か…」
「もうこんな暗いもの!とりあえず…はいこれ!」
「わ!…ホウキ?」
「私が持ってても意味ないもの!キミが使って?」
「う、うん。」
ミズキさんに手を引かれるままに教室を出たけど、他の生徒の声もしないくらい静か。
ミズキさんは時間のせいだって言ってるけどそうなんだろうか?
そう考えていたらミズキさんから掃除用の、T字ホウキを渡された。いったいどこから?
でも、渡されたものは仕方がない。
「他の子はいないの?」
「私が見つけたのはキミだけ。」
「他にも同じ子はいないのかな…」
「もしかしたらいるかも知れないわね、探しに行きま…?」
「ミズキさんどうした…の」
ミズキさんに他の生徒を見てなかったが聞いたけど、ミズキさんは僕しか見つけてないみたいだった。
もしかしたら同じような子がいるかも知れないと思うと不安だ。
ミズキさんも同じように思ってくれたみたいで、他の子が居ないか探しに行こうと言ってくれた!
でも、廊下の先を見て固まってしまった。僕も同じところを見る。
廊下の先は電気が着いていないから暗い。暗いけど少し先なら見える。
その見えるところに、制服じゃない人が立っていた。
先生が着る洋服みたいな。黄色いポロシャツで、青いズボンで。
でも、でも。
「な、なんで首か上が無いの?」
「し、知らないわよ!」
その人は、ポロシャツから見えるはずの首まわりから上が真っ黒いモヤモヤで無い状態になっていた。
なんだか、歩いているような。いや、ようなじゃない!
「こっちに来てる!」
「ちょ、ちょっと!どうにかしてよ!」
「ど、どうにかって?!」
「ホウキ渡したでしょ?それでどうにかしてよ!」
「えぇ?!」
ミズキさんに言えば、逆に相手に向かわせられるように背中を押されてしまった。
どうにかしてと言っても得体の知れない相手にどうしたらいいんだ!
それを口に出せば、ミズキさんはさっき渡したホウキのことを言った。それでどうにかなる相手なの?!
でも、だんだん相手は近づいてきて、もう目の前だ!やるしか無い!
「えぇっと~~~っわかんない!来ないで!」
どうしたらいいかわかんなくて、どうにかなってほしいから、ホウキの持ちてを掴んで、近づいてくる相手に向かって、ホウキを振る。
1、2回相手に当たったと思ったら、相手は煙みたいに居なくなってしまった。
人、殴っちゃった。しかもホウキで。どうしよう。
「ねぇ!何してるの!」
「へ?」
「消えた内に逃げるわよ!」
「ど、どこに?」
「図書館!キミを見つける前に開いてるの確認してるから。」
まだ殴った感触がちゃんとしている手を、ミズキさんに掴まれる。
ボーっとしてたみたいで、ミズキさんが気づかせてくれたみたいだ。
ミズキさんは、教室を出たときみたいに僕の手を引いて、煙みたいに消えた相手とは別方向に走っていく。
ホウキを握ったまま、どこに行くのかを聞くと、僕もよく行く場所だった。
図書館は、静かで安心できる場所だ。今も、そうだと良いけど。
連れられて図書館に来たら、通ってきた廊下とは違ってすごく暖かくて、変わらず安心できる場所だと一瞬でわかった。
持っていたホウキを図書館の出入り口に立てかける。
「はぁ…ここはいつも居心地が悪いわ。」
「そう?」
「そうよ。かび臭くて…あまり来ないからかも知れないわね。」
「そうなんだ。僕はよく来るんだ。本好きだし。」
「そ。…何か使えるものが無いか探しましょ。私カウンターの中探すわ。」
「うん。」
ミズキさんは、腕を組んで図書館があまり好きではないことを教えてくれた。
僕にとっては学校の中で一番良く居る場所だから、好きなんだよなぁ。
でもミズキさんはそうではないみたい。初めて知ったな。
そのまま、学校を出るために必要なものを探そうと二手に分かれた。
僕は、山岳関連の本が並ぶコーナーで、脱出の手立てになるような情報はなさそうだ。
他の本で何かあるかな…
「ねぇ!ちょっと来て!」
静かな図書館の中、ミズキさんの声が響いた。
驚いて、呼んでいた本を落としそうになったけど、どうにか落とさずに済んだ。
元に戻して、ミズキさんのところに行く。
行けば、カウンターのところで、ミズキさんが赤と青の正方形の小さい箱を触っていた。
「ミズキさんどうしたの?」
「これ拾ったの。キミ開けれない?」
「何これ?」
「わかんない。ね、気になるから開けてみてよ!」
「わかった。」
ミズキさんにどうしたのか聞けば、触っていた箱を見つけてくれたみたいだ。
僕も赤い箱を触ってみる。ちょっと光ってるようにも見えるけど、なんでも無い箱に見える。
ミズキさんは中身が気になるみたいで開けてほしそうだった。
だから開けてみようとは思うけど、僕の力で開くのかな?
箱の上下をそれぞれ両手で掴んで引っ張って見る。
すると、箱は割と簡単に開いた。
不思議なことに、箱から強い光が出てきて目が開けられなかった。
「わっ!!」
「何?!」
光が落ち着いて、目をもう一度開けた時、箱は消えていた。
代わりに、ゴミを拾うためのハサミが置いてあった。
「…何で出てきたの?」
「…わかんない。赤い箱だと…ホウキみたいなのが出てくるのかも?」
「えぇ?」
「ねぇ、こっちは?こっちも開けてよ!」
僕もミズキさんも、何で赤い箱からこのハサミが出てきたのかわからなかった。
それより、ミズキさんはもう1つの箱も開けてほしいみたいで、ウキウキしていた。
楽しそうだし…いいか。
言われた通りに、同じように開ける。
青い箱も、赤い箱と同じように強い光が出てきて、目が開けられなかった。
光が落ち着いて、目を開けたら、箱は消えていた。
代わりに、包帯とガーゼ、消毒液のセットが置いてあった。
「不思議な、箱だね。」
「コレで怪我しても治せるね!」
「そうだね。」
「どっちも持っててよ。キミが使うほうが良いと思うし。」
「良いの?」
「うん。私もちたくなーい。」
赤も青も。どっちも不思議な箱だったな。
ミズキさんは今置かれた物を全部僕に持っておくよう言った。
ミズキさんの身を守れるものが無いけど、ミズキさんは可愛らしく持ちたくない理由を教えてくれた。
ミズキさんとはあまり話したことなかったけど、こんな子だったんだなぁ。
とりあえず、怪我を治すためのセットをポケットに。ハサミは…ホウキと一緒で手に持とう。
「あ、ね。探してて思ったんだけど、職員室行かない?」
「職員室?」
「そう。職員室なら、カギたくさんあるでしょ?」
「あ~確かに!」
「決まり!じゃあ行こう!」
道具を持っていたら、カウンターからミズキさんが提案をしてくれた。
それは、脱出の手がかりの一歩になりそうなことで、とても良い提案だと思った。
それを伝えたら、ミズキさんは嬉しそうに次の行動を決めて、カウンターを飛び越えて僕の隣に着地した。
嬉しそうなミズキさんは僕のては引かずに歩き始めた。
もしかしたら、またさっきみたいな相手がいるかも知れないと思って急いでミズキさんの後を追った。
もちろん、ホウキもハサミも忘れずに。
特に誰とも会わずに、人も見つけられずに職員室まで来ることができた。
でも、問題が起きた。
「なぁにこれぇ…」
「すんごいモヤね。」
職員室は、室内がさっき戦わざるを得なかった相手みたいなモヤで包まれていて、中が確認できなかった。
カギもしまっていたらどうしようと思って触らないでいれば、ミズキさんが思い出したような顔をした。
「そういえば!私これも図書館で拾ってたの。」
「…お札?」
「これ効くかも!えいっ!」
スカートのポケットから、真っ赤な長方形の小さめの紙を取り出した。
紙の1面にはよくわからない文字や模様が描いてあって、表すならお札みたいなものだった。
それをそのまま聞いたが、ミズキさんは特に返答もせずにそれを職員室のドアにある窓ガラスに貼り付けた。
すると、モヤがお札に吸い込まれて、職員室の中が見えるようになった。
お札は、粘着力がなくなったみたいで、窓ガラスから剥がれ落ちた。
「すごい!でも入れるかな?」
「あ、いてるわ!入りましょ!」
「うん!」
モヤが無くなったことに喜んでいたが、もし入れなかったら…と口にしたらミズキさんが進んで開くことを確認してくれた。
職員室なのにカギがかかってないのはどうなんだろうと思ったけど今は非常事態!
気にせずに職員室に入る。
職員室に入ってすぐ、カギがあるところを一緒に見に行く。
すると、普段ならたくさんカギがあるはずの場所にはカギが1個しかなかった。
「体育館…だけだね。」
「いつもあんなにカギあるのに。」
「ここしか無いし…行こうか。」
「そうね。」
体育館のカギを取れば、ミズキさんは文句を言った。
僕もそう思うけど、無いものは仕方ない。
そのまま行こうとミズキさんを誘って職員室を出る。
体育館に行くまでに通った教室を見れば、職員室と同じようにモヤががって中が見えない教室が何個かあった。
ミズキさんが持ってたものがあれば入れるんだろうか?
そう考えていれば、校舎の外、体育館の前についた。
「じゃあ、開けるよ?」
「うん。」
職員室から持ってきた体育館のカギを挿して回す。カギが開いた音がした。
スライドするタイプのドアなので持ち手を持って、力いっぱい引く。
片側だけ、開けることが出来た。それだけでも十分入れる。
でも外と中じゃ明るさが違うくて暗い。
「…早く、入ってよ。」
「う、うん。」
暗くて、怖かったけど。ミズキさんに言われたのでホウキとハサミを重ねて持って、中に入る。
「どりゃあああ!!」
「うわあああ!!」
中に入った途端、右から大きな声が近づいてきて驚いてその方を向いて同じくらい声を出す。
近づいてきた人にそのままぶつかって、押しつぶされる。
でも、冷たくないし…あったかい?
「どうした…大丈夫?」
「ミズキさぁん」
「変なヤツ…と思ったら人?やだ!ごめんなさい!」
声を聞いてミズキさんが体育館に入ってきてくれる。
僕を押しつぶした人は、僕が人であることをわかったみたいで謝りながら慌ててどいてくれた。
僕はミズキさんの手を借りて立ち上がる。
「本当にごめんなさい。カギ閉めて立てこもってたからまさか人が来ると思わなくて…」
「大丈夫だよ、ええっと…金銅メグミさん、だっけ?」
「そう。怪我ない?」
「大丈夫。ありがとう。」
立ち上がってピンクの短髪で、ジャージの上着にスカートの下から体育ズボンを履いた女の子、金銅メグミさんは頭を下げて謝ってくれた。
名前の確認をしたら、怪我を心配をしてくれたので大丈夫だと伝える。
少ししたら、メグミさんの後ろから、同じピンク色の髪の毛の小さい男の子が出てきた。
男の子は出てきてすぐメグミさんの後ろに隠れながらこちらを見ていた。
「この子は弟のナオ。一緒にここで隠れてたの。」
「そうなんだ。はじめまして。」
「はじ、めまして。」
男の子の紹介もメグミさんがしてくれて、挨拶をすれば恥ずかしそうにしながらも挨拶を返してくれた。
姉弟で学校に閉じ込められたんだ、と可哀想に思っていれば、メグミさんが僕の持っているホウキとハサミに目を引かれていた。
「…ねぇねぇ!キミの持ってるそれさ…ちょっと貸して!」
「え?」
「お願い!返すし、悪いようにしないから!」
「う、うん。」
「ありがとう!」
キラキラとした目で、僕の持っているホウキとハサミを貸してほしいと強く言ってきた。
勢いがすごくて、思わず頷いて、そのままその2つを彼女に渡した。
彼女はそれを受け取ると嬉しそうにしてナオさんが出てきたところに戻っていった。
「…おねぇちゃん、作るの好きだから。何か思いついたのかも。」
「そうなんだ!」
「うん。変なのもいるし、身を守れる手段持とうって言ってウキウキで色々作ってる。」
「…そっか。」
ナオさんは、メグミさんの行動について教えてくれた。
もしそうなら、アレがどうなるのか楽しみだな。
でも、メグミさんは学校から出れなくて大変!っていうより、状況を逆手に取って自分がしたいことをしているようにも思えた。
ちょっとして、メグミさんが奥から戻ってきてくれた。
「ふぅ~お待たせ!はい!」
「わ!」
「2つどっちも持つと大変でしょ?だから一緒にした!」
「ありがとう!持ち運びしやすいー!」
「掃くところにハサミを合わせたから、ぶつけたら痛いよ~!」
「金属だしね…痛そう。」
戻ってきたホウキとハサミは、ホウキの掃く部分が動いて完全に棒状になっていた。
そこをハサミを合わせて、それをガムテープでぐるぐるに巻いて1つの棒にしてくれていた。
ちょっと強そう。でも、また殴るかもしれないのか…いやだなぁ。
「二人はどうするの?」
「ワタシ達はここにいるよ。今の所ここは安全だから。」
「わかった。」
「キミは?」
「僕は出れる手段を探すよ。」
「そう。もしわかったら教えてよ。あと、もしソレみたいに組み合わせたいとかあったら、ワタシのとこまで持ってきて。組み合わせたいから!」
「わ、わかったよ。」
ともかく、見つけた2人がどうするかを聞いたらこの場に居るみたいだった。
2人がそうするないいか、と無理に一緒に行くことはしなかった。
僕らのことを聞いてきたので教えてあげる。
そうしたらやっぱり脱出したいみたいで、情報が欲しいということだった。
それに、自分の好奇心というか、やりたいことをしたいことも。
むしろそっちが主題みたいだ…
言葉のままに受け取って、体育館をミズキさんと出る。
出た同時にドアがまたしまって、カギがかかった。
「すごかったね…でも!ホウキがホウキバサミになったよ!」
「なにそれ。ま、いーんだけど…」
「次どうしようか。一度図書館に」
「ね、次屋上行こうよ。」
勢いが凄かったな、という話をミズキさんにしつつ、片手で持てるようになったホウキバサミを自慢する。
ミズキさんには鼻で笑われたけど、僕としてはとても凄いことなんだけどなぁ…。
それより、カギがもう無いから、どうしようかと話をした時、ミズキさんは次の場所を提示してくれた。
屋上。普段なら絶対にいけない場所だ。
「でも、屋上なんて行けないよ?カギ立ってないし…」
「あるよカギ。」
「え!?」
「さっき…図書館に落ちてた。」
「言ってよぉ!」
「ごめんごめん。行く?」
行けない場所だって伝えれば、ミズキさんは屋上のカギであろうものを見せてくれた。
そんなの持ってたなんて!
驚けば図書館に居た時に拾ってたみたいだ。
それにも驚けば、笑いながら謝られて、行くかどうかをまた提示された。
正直行きたい。こんな状況だけど、屋上がどんなところか見てみたい。
「行く。行ってみたい!」
「…わかった。じゃあ、行こう。」
僕の思いを伝えたら、手を出して誘ってくれた。
もちろん、その手を取って、ミズキさんに引かれるままに校内に戻る。
校内に戻って、階段を何段も登って、屋上前のドアにつく。
ドアの前は何か靄がかかっているようにも見える。気の所為だろうか?
「ミズキさん。モヤがすごそうだけど…」
「大丈夫。開けるよ。」
モヤについて伝えたが、階段の1段前に居るミズキさんは振り返って笑顔で大丈夫と言った。
そして、ドアに向き直ってドアノブにカギを挿して回した。
カギの開いた音がして、ミズキさんがドアノブに触れて回した。
ドアを引いて、ドアが開いて、風が校舎内に入ってきた。
「わ…ぁ…!」
ミズキさんが屋上に入るのに続いて、僕も屋上にゆっくり入る。
風は強い。でも、それ以上に入ったことのない場所に入った興奮、空を見上げたら満点の星空と強く光る月。
ここはこんな綺麗な世界が見れる場所なんだって初めて知れた!
それが凄い感動的で、すごくて。
「どう?初めてきた感想は。」
「すごい!すごい綺麗だよ!嬉しい!」
「本当に嬉しそうだね。」
「もちろん!…ミズキさん?」
広い屋上で僕の少し先に居るミズキさんは僕に声をかけてくれた。
素直に感想を伝えれば、笑っていた。
本当のことだから仕方ない!とミズキさんを見ていれば、笑った顔がすぐに真顔になった。
どこかおかしくて、名前を呼ぶ。
…アレ?ミズキさんって。学校に居たっけ?
そもそも、「佐東さん」って名字の人、居たっけ?「佐藤さん」はいるけど…
それに、なんで屋上のカギが、図書館に落ちていたの?
あのモヤをどうにかできる物もなんで持っていたの?
アレ?
「どうしたの?そんなに不思議な顔をして。」
「…ねぇ、ミズキさんは、ミズキさんなんだよね?」
「…」
「ミズキさん?」
「もーダメだったかぁ。私もまだまだだなぁ。」
ミズキさんが僕の様子を見て、問いかけてくれた。
だから、僕の疑問をなんとなくで伝える。
それにミズキさんは答えなかった。顔を下に向けていて、表情が読めない。
名前を呼んだら、今度は顔を思いっきり上げて、残念そうな声を上げた。
ダメだった?何が?
「まだまだ?」
「そう。ちゃんと、擬態できなかった。結局はアレと同じ。」
「ぎ、擬態?それにアレって?」
「擬態は擬態だよ。アレは…キミが起きてすぐにぶん殴ったアレ。」
「あ、アレ?アレと、ミズキさんが、どういう関係が…」
「それもどうでもいいよ。もう。」
「え?う、あ…?」
ミズキさんと質問と解答をしていたけど、全然繋がりが出てこない。
頭をグルグルさせていたら、視界もグルグルして、立っていられなくなって、ホウキバサミを支えするけど、それも難しくて膝から地面に倒れてしまう。
「ミズキ、さん?」
「まだ力が足りないみたいだから、キミの生命力もらうね。それを力にして、もっと擬態する。擬態して、キミらの中に紛れ込むんだ。」
「どういう、なんで」
「知らなくていいよ。お休み。」
ミズキさんの足が、目に映るけど体を起こせない。
目線だけ上げると、ミズキさんがしゃがんで僕をみていた。
初めて感じる目眩の中、ミズキさんが言うことを理解しようとしたけど全然理解が出来なかった。
理解が出来なかった僕の顔にミズキさんの手が当てられる。
だんだん、目眩なのか眠気なのかわからなくて、目が開けられなくて。
意識も
「…ふう。よし。これでもう一回できるかな。次は…」
「次は、男の子で行こう。名前は…同じでいっか。居るでしょ。」
「えーっと。次はあの教室で寝ている子で試そう。」
「もっと、ちゃんと擬態しないと。」