乾きと飢え
カラッとしています。
暗雲が垂れ込む午後の空、僅かに陽光が大地を掠めては去る。
気付いたら男は荒野にポツンと立っていた。
自分が誰だか分からない、記憶も何も無い。自分には何も無い、そんな孤独に苛まれる。ーー腹が減った、分かる事はそれだけ。ぐうぅとお腹が鳴った、何かを口に入れなければ、そう思った。
食べ物を求め、男は荒野を一人歩き続けた。誰も居ない、周囲を見ても荒地が拡がっているだけ。こんな場所で男は食べ物を求め彷徨い歩いている。酷く虚しい気持ちがした、ただ虚しくなっても腹が減るだけだと男は自身を鼓舞し、歩けば地平線の彼方にきっと食料があるだろうと希望を持ち続けた。
男は次第に喉も乾いてきた。水も何も無い、そんな状況に置かれ男は絶望感を抱いた。喉の乾きは空腹と共に脳を侵食する。水、一滴の水が欲しい、そう切に願い、男は歩みをやめ地面に寝そべる。硬い土がゴツゴツと男の身体を支える感覚が状況の厳しさを物語る。
やがて男は次第に意識を無くしていき、寝そべったまま動かなくなった。ーーそんな時だった。
ザッザッと、遠方から何かの群れが規則正しく音を立てている事に気付く。は、と我に返った男は渾身の力を込め立ち上がる。おい、と声を出そうとしたが、あまりの喉の乾きと飢えで力が出ない。ザッザッという音は次第に近付いてきた。目が霞んでよく見えないが、何かの影が規則正しく蠢いていることだけが視界に入る。
男はそこで力尽き、意識を失くした。