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後方腕組親面

「ちょっと入り浸りすぎじゃないですか?」


 ここのところ毎日昼から夕方にかけて我が家に来て時間を潰す部長を見かねて、ぼくはさすがに注意することにした。


「えー、だってアカメちゃんのこともっと観察したいし、可愛いし、構いたいし。そもそも弘明くんがアカメちゃんの情報を送ってくれないのが悪いんでしょ!」


 なぜか逆ギレされた。


「一応送ってるじゃないですか。この前だって、やっぱり日光に当たるとやばいらしいって、新しい情報を送ったわけですし」

「そこは映画を見て怯えてるアカメちゃんの動画を送るところでしょー?」


 部長は「わかってないなー」と肩をすくめた。


 その動画のどこに吸血鬼要素があるんだ。ただのホームビデオじゃないか。


「まあ百歩譲ってここにくるのは良いとして、学校の奴らにはバレないようにしてくださいよ」

「えーなにそれ、彼氏面―?」


部長は「勘違い乙でーす」とケタケタと笑った。本当、一回、いや二、三回はぶん殴っても罰は当たらないんじゃないかと思う。


「部長がぼくの部屋に入り浸ってることがバレたら、刺されるのはぼくなんですよ。あんた、自分が人気者ってこと自覚してるでしょ」

「大丈夫だよー。そもそも弘明くんがこのアパートに住んでることを知ってる人すらいないと思うし。君、友達とかいないでしょ?」

「いますよ。学校で話す相手くらい」

「でも家に来るような仲の子はいないんでしょ?」

「今はいませんね」


 ぼくはこれからの未来に希望をはせ、「今は」の部分を強調した。


「だから、わたしが跡をつけられるくらいしなきゃバレっこないから大丈夫大丈夫」


 部長はアカメの髪型をいじりながら呑気に笑った。この人、男子をその気にさせるプロだから、ストーカーの一人くらい平気で居そうなのが怖いところだ。


「そういえば、部長の家の周りの不審者問題、どうなったんですか?」

「お母さんが言うには不審者の目撃情報がピタッと止んだんだって」

「よかったですね」

「まあねー」


 部長はどうでも良さそうに答えた。


「あー」


 部長から逃げてキッチンの方に行ったアカメが、両手にそれぞれコップを一つずつ持って帰ってきた。


そのコップを部長とぼくの前に置く。


「いつもあんなに嫌がってる風に見えるのに、麦茶を入れてくれるなんて、アカメちゃんはツンデレさんだなあこのこの」

「うー!」

アカメの頬に頬ずりする部長を押しのけて、アカメはまたキッチンの方へと逃げていった。


「もー、アカメちゃんはつれないなー。でもそこも好きぃ」


デュフフフと気持ちの悪い笑みを浮かべ、部長はアカメが入れてくれた麦茶をごくごくと飲み干す。


あのアカメがぼくらに麦茶を入れてくれた。その心遣いに、ぼくはなんだか涙が出そうになった。ぼくは渡された麦茶を大事に、ゆっくりと、最後の一滴まで飲み干した。


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