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日報受取人  作者: 智天斗
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人見秀一の黙秘録-episode15-オツレサン③

オツレサン③





《オツレサン》なる怪異が消えてから数時間後────


「おい、大丈夫だったか?」


「それはこっちのセリフっす。本当に無茶しましたよ」


彼は小ノ上病院に運ばれていた。


これは、後から来馬に直接聞いた話だ。

来馬龍作がなぜ病院に運ばれたのか。それは彼があの時自分のあたまにボールペンを突き刺したからだ。なぜそうしたのか、それは僕に答えを言うため。頭、頭が痛いと。『オツレサン』は憑くもの。恐らく、そのヒントとなることを言ったら来馬の方が『オツレサン』に連れていかれていた。だから、嘘はつけない。なら、本当に頭が痛いということにすれば良い。そういう結論のようだ。

来馬の機転で僕はこうして来馬のために病院に来れている。もちろん、僕の受けた傷を治すためでもあるが。

これで『オツレサン』との事象は終わった。


「それで、具合は?」


「大丈夫っす。それしか方法なかったですし、それしか伝えられなかった。あれは僕の考えた"運"の怪物。本当は3択なんです、ただの3択。頭は吉、体は凶で手は大凶って。でも、俺的に先輩が連れていかれるのは違うかなって。だから今回は答えを教えたんすよ」


「そうか、本当に助かったよ」


言霊と言うべきか。彼が創作した怪異が現実に現れたことはたまたまだったのだろうか。彼の言う例のサイトを閲覧したものにも起こっていた可能性は十分にある。

面白おかしく"怪異"を造ることは結構だがそれが現実に現れては困るものだ。


「いえ、先輩がいなくなるのは悲しいから。だって先輩って言っても友人なんですからね」


「あぁ、そうだな」


病室を後にしようとした時、彼が聞いてくる。


「先輩、スマートフォンでの間違いはなくなりました?」


「あぁ。嘘のように無くなったよ。来馬のおかげだな」


「先輩ならそう言ってくれると思ってました」


病院を後にして帰路に着く。

人見秀一は思う。

今回の件を誰かに教えることは出来ない。なぜなら教えれば『オツレサン』はまた現れるだろうから。彼は言わなかったが、それは分かる。


『オツレサン』の効力は続いているのだろう。誰かに教えれば『オツレサン』に連れていかれる。


ただ、謎は色々とある。


まず、なぜ彼の造り話が具現化し僕を襲ってきたのか。


そういえば彼は言っていた。


「今回は答えを教えたんすよっか…」


"今回は"という言葉。多分、あれは何人か連れていかれたことを知っているのだろう。いや、連れていかれたではない、連れていったと言った方が正しいか。それを確信するのはまた少しあとのことだった。


それは僕が通っていた大学であり、現在来馬かま通っている大学で謎の行方不明者が3人も出たという話を聞き、その話を聞くために大学に訪れていた時のことだった。


「ひ、人見先輩?」


「七海か。久しぶりだな。卒業ぶり…か」


そこに居たのは来馬龍作の彼女である七海涼子。そして、彼女が僕を呼び出した人物でもある。彼女も来馬と同じくらいの付き合いではあるが、大学卒業してから携帯を変えたため、連絡をすることは無かった。


「せ、先輩!あの…!」


何故かすごく悲しそうな顔で七海が僕を見る。


「先輩があの3人と組んでるのは本当なんですか?」


何の話をしているのか分からず、七海涼子に問いただす。

そして、僕は七海涼子に話を聞いた。全ての話を。


「そうか…。ありがとう、助かったよ」


「はい、先輩…」


来馬龍作はどうやら酷いいじめあっていたらしい。

そして行方不明となった3人組の男は来馬龍作を虐めていた3人組だったらしい。

来馬がいじめにあっていたということも知らなかった僕は友人として情けない限りだった。



七海が来馬に聞いた話によるとどうやら、あの交通事故も彼らが引き起こしたらしい。金持ちの3人は金や地位で脅し、来馬龍作に暴行を加えたりと言うのが日常だったそうだ。


七海涼子もまた、来馬龍作のいじめに立ち向かい、そして、3人組の標的にされた人物。

正直彼女が何をされたのかは言いたくない。それほどまでに酷いことだったからだ。


そしてあの日、僕が『オツレサン』に会った日。彼が財布を見せなかったのは3人組にどうやらお金を取られていたからとも聞いた。その時、七海も一緒に行くと言った時こういったそうだ。


「涼子、大丈夫。もうこれで終わるから」


悲しそうな目でそう伝えていた。


「七海、お前も辛かったんだな」


「いえ、私より龍くんの方がずっと辛かったんです」


「まず、謝らせてほしい。気づけなくてすまなかったと…」


「いえ、謝らないでください。謝るのはこちらです。人見先輩があのクズ3人と組んでいたって龍くんが言っていたので。嘘なんですよね?」


どうやら僕が奴らと組んで2人を標的に暴力を行っていたという話みたいだった。そんな事実はない。恐らく、行方不明の3人が嘘を来馬に伝えていたのだろう。


「あぁ、それは嘘だ。まずそいつらを俺は知らないから」


「私、最初にそれを龍くんに聞いて絶対嘘だって言ったんです。でも、龍くん聞く耳を持たなくて。だから、先輩に直接聞こうと思ったんですけどすでに先輩携帯を変えていたらしくて聞けてなくて」


「その件は悪かった。でも、来馬の方は僕の携帯の番号を知っていたようだが」


「え!?本当ですか?」


僕と七海が話をしている時、来馬龍作が来た。いつも通りの元気な姿で。


「せ、先輩…」


「来馬、良くなったみたいだな」


「せ、先輩…俺、俺は…」


泣きながら来馬龍作は俺の方へと来た。


「すみませんっす…。俺、俺もう分からなくて…2人で話をした時絶対に違うってわかってたのに…。なのに俺……。あとから店員さんに俺の頭の心配してくれてたことを聞いて…それでわかったんです」


「気にするな。お前が俺を信じてくれたからこうして俺はいるんだから」


「どう言うことですか?」


七海に聞かれ、来馬は答える。


「なんでもないよ。ただ、絶対に人見先輩そんな人じゃないってわかったんだ」


涙を拭って来馬は伝える。


「そっか…そうだよね。龍くん」


その日は3人で久しぶりに談笑した。



僕は彼が創作した怪異『オツレサン』についてその日、七海の話を聞いて確信した。


『オツレサン』は来馬の恨み辛みと言ったことが怪異を生み出したのかもしれない。そう考えれば、言霊というものは現実にあるのだろう。

恨みというのは呪いに繋がるものだから。

彼が世に解き放った怪異は形となり、今も誰かを連れていこうとしている。

恨みというのは、たとえ良い事が起こったとしても無くならない。一度傷つけられた心はそう簡単に戻る訳では無いから。

だから僕はこの話を黙秘録に記録する。もう、これ以上被害者を出す訳にも行かないから。



そして数日後、僕と来馬の2人はあのカフェにいた。


「聞いたよ、あの店員さん。僕が去って直ぐにつたえていたらしいな」


「はい。先輩は優しい人だって分かってたっす。でなければ俺のいない所であんな配慮はしてくれない。だから、あの時に気づいて後悔していたんっすよ」


「知っていたなら電話してくれればよかったのに」


「それは出来ないっす。その…先輩からの連絡がないとでられないっす」


そういうルールと言うべきなのだろうか。彼の『オツレサン』についてはもう触れるべきではないだろう。


「そうか。なら運が良かったな」


「はい。先輩と一緒にまた話せて良かったっす。疑って申し訳ないっす…」


すると、来馬龍作は清々しい顔で言う。


「でも、あいつらは俺のことを笑ってたっす。最期まで…」


「そうか、やっぱりお前がな」


「はい。でも、もう、それ以上は踏み込んでは行けないっすよ。それ以上はもう…」


「あぁ。わかってるよ」


2人は話した。話し込んだ。あの時以上に。

僕と来馬はまた大学生の時のように話す。


「七海から連絡きてるな」


僕、来馬、七海の3人のコミュニーケーションアプリのグループには七海から「2人ともどこいってるんですか?」と連絡があった。


「僕が返しておいていいか?」


尋ねると来馬は言う。


「どうぞっす。次は3人できましょうよ」


「あぁ、そうしよう」


2人は大学生の時よりも深い友人となっていた。だから、僕はこの話を人には話さない。

『オツレサン』が憑いてしまうかもしれないから。


僕はグループにメッセージを送る。すると、来馬が言う。


「先輩、打ち間違えて送ってるっす」


「あっ、また打ち間違えた」


そして、人見秀一は笑った。







episode15.オツレサン、終幕────。

オツレサンは伝染する怪異、それ以上でもそれ以下でもない。話をするから伝染する、ただそれだけの事。

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