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日報受取人  作者: 智天斗
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人見秀一の黙秘録-episode15-オツレサン①

オツレサン①




僕ってやつはさ、スマートフォンを使うんだがその時にたまにあるだろ、間違えて押してしまうこと。例えばサイトの広告だとか、検索する時のタッチパネルで間違えて変換するだとか。

僕はそう言うのすごく嫌いなんだ。何故かって?同じことを繰り返すってのが嫌なんだよ。

今はこれをしたいって時に間違えたら何となくストレスが溜まる。それが2度や3度続いてみろ、僕はもう我慢できずスマートフォンを投げているかもしれないな。

だから、細心の注意を払っている。時は金なりって言葉がある通り、人間の人生なんていつ終わるか分からない。なら、少しでも間違えをなくして、有限な時間を活用しようって訳だ。



「最近、やたらと間違えるんだ」


「何がすか?」


昼。カフェの店内で話をしていたのは眼鏡をかけた青年。名は来馬龍作(らいばりゅうさく)小ノ上大学(このうえだいがく)の3年生だ。大学の後輩であり、サークルで知り合い、意気投合した。しかし、卒業してから全く連絡はとっていなかったが急に連絡が来たため、僕は彼と会うことにしたのだ。

僕もちょうど最近の悩みってやつを聞いてもらおうと思っていたので了承したわけだ。


「スマートフォンで押し間違えってやつだよ」


「あーそうすか。それはどんまいっす」


「話を少しは聞かないか。君だってあるだろ?」


「そりゃーありますよ。人間、間違えて成長していくってどっかの誰かが言ってた気がしたなー」


上の空で全然話を聞いてくれる気配はない。彼とは普通に大学の先輩後輩の仲と言うだけの話だ。だから、特に僕の方も気にしない。まぁ、元々そういう性格なのはもちろん理解した上で仲良くしている訳だが。


「で、人見先輩はどれくらい間違えてるんですか?」


「頻度でいえば1日50回くらいってとこだ。それが日に日に増えている」


スマートフォンで50回も間違えては毎日が面倒だ。皆も考えて見てくれ。毎日押し間違えを50回もやってみろ。連続ミスを何回もやってみろ。スマートフォンを投げたくなるほど手を呪ってしまう気がする。


「なんすかそれ。それが本当なら先輩なんか変っすね。何かいいことでもありました?」


「いいことって今進行形で悪いことなんだが。まぁいい。それでなんだが、君は何か対処法を知らないか?」


「それ、仲が良いって言っても学生に聞きます?」


それは至極当然だ。しかし、彼は少し違う。彼は私と同じく都市伝説やらそういった話に目がないからだ。


「あぁ。でも、君なら…分かるだろう?」


「先輩は乗せるのが上手いっすね。いいっすよ。てか、それなら僕、聞いたことあります…痛っ」


「大丈夫か?」


「はい、いつものやつですよ」


来馬龍作は僕が大学四年生の頃、目の前で交通事故に会い頭部を損傷した。そのため、今も通院中の身で今日はその予定もないため、会う約束をしていた。


「大丈夫なのか?きつそうならこの話は後にして、病院に行くか?ついて行くけど」


「だ、大丈夫っすよ。心配性っすね、先輩も」


「そうか。なら良いが。それで、聞いたことあるって?」


彼は迷惑とは感じていない。不思議な何かに惹かれるただの大学生なだけだ。


「はい。多分それは『オツレサン』のせいですよ」


お連れさん?オツレサン?


「お連れさんって僕は一人で来ているが」


「やだなー。社会に出てから訛ってますか?先輩ー」


彼がそういうのも無理はない。もう卒業してから2年はたっている。少しかわったとおもうのもふしぎではないだろう。


「じゃあ、『オツレサン』って奴のせいで僕はこうなっているのか?」


「そうです。『オツレサン』だと思いますよ」


「それで、その『オツレサン』ってのはなんなんだ?」


彼は語る。


「『オツレサン』それは分かりません。なんなのかと言われれば分からないと答えますね。いわば『オツレサン』は憑くものなんですよ。なんと言えばいいのかなー。もう妖怪とは違う概念なのかほかの次元の何かなのかそれは分かりません」


「おいおい、それじゃあ答えが出てないじゃないか。『オツレサン』ってなんなんだ」


「言えないんですよ。『オツレサン』に関しては」


「どういうことだ?」


「先輩、最近悪いこと多いでしょ。こちらから言えるのはここまでなんすよ。『オツレサン』ってさっき憑くって言ったでしょ?つまりは僕に『オツレサン』が憑く可能性があるんですよ。『オツレサン』という名前まではいいんです。でも、それ以外はいけない。それが『オツレサン』なんです。名前は教えました。あとはご自分で」


「『オツレサン』ね…。あぁ、君の言い分は分かったよ」


確かに彼の言うことは最もだ。自分に憑いては仕方ない。

彼が身構えるのも分かる。僕でもそうしていたから。


彼は言った。「気をつけてください。『オツレサン』は別に悪いものじゃないんです。ただ、歪なだけです」と。


とりあえず、今日は帰ろう。人見秀一はそのことだけを聞いて立ち去る準備をした。


「ありがとう。とりあえず帰るよ」


「はいっす。さよなら」


そう告げる彼はなんだか悲しい顔をしていた。


「お金どうする?」


「すみません。財布落としちゃってて」


「そうか、なら今回は僕の奢りでいい」


「本当ですか!ありがとうございます!」


まだ店内に残るという来馬龍作にお金を渡す。店を出る時、来馬龍作の後ろポケットに財布が見えたが、奢ってもらいたかったのだろうとあまり気にしなかった。そして、店員さんを呼んだ。


「すみません。あそこにいる彼。彼がまた頭を抑えたら救急車を呼んでください」


そう店員に告げて、僕は外に出た。


これからどうしようか。


日が僕を照らす。今日の予定は来馬と会った後予定は無い。ひとつあるとすれば、ある地域に生息する"大量の宝を腹に持つ魚"について調べようとしていたことくらいだ。昔発刊された雑誌で画像を見た記憶がある。


帰路に着く人見秀一は少し歩いた先、横断歩道の前に立つ男に目を惹かれた。なぜ惹かれたのかは分からない。やせ細った男に見えた。


黒いスーツをきており、杖をついている。そして黒いハットを被っている。スーツもハットと高そうなものだった。夕日が照らし、僕はさっさと帰ろうとしていた。

しかし、何故か見られている感覚がある。気のせいだろう。


「帰るか」


そして、前にある横断歩道が青に変わる。

すると、黒いスーツの男は横断歩道を亘りこちらに近づいてくる。

普通の人間ならば素通りするだろう。ただ、何か嫌な予感がして振り返って横断歩道を渡らずに別の道を歩くことにした。


「なんだ、何か寒気がした」


目の前の交差点を曲がると、何故か黒いスーツの男は追ってくるように来ている。


「気のせいだろうな。『オツレサン』ってのが何か分からない以上気にするのも仕方ない」


黒いスーツの男はやはり追ってきている。こちらが目的地なのかを確かめるため、先程黒いスーツの男が来た道の方へと続く横断歩道があるため、そこを渡る。


「どうだ…」


すると、やはり黒いスーツの男はこちらを追ってきていた。杖を着いて、高そうなスーツを着て。確実に僕を追っているように思える。


「な、なんなんだ…」


先程渡った横断歩道を渡り、こちらに近づいていくる。横断歩道を歩いて道を一周したところでさすがに人見秀一も不思議に思う。


「くっ…」


もう一度、次は男がこちらに来た時に使用した横断歩道を渡るとやはり、スーツの男はこちらを追ってきていた。ぐるぐると横断歩道を使い同じ道を回る。それを2度繰り返し、追っていることを確認した上でどう撒けばいいのかを考える。


「あれが『オツレサン』なのだろうか」


具体的なことは全く聞けていない人見秀一にとって『オツレサン』というものがなんなのか検討もつかない。


彼の言い方からして僕の最近のスマートフォンでの打ち間違えが関係あると思うが。


足早に目の前にあった横断歩道を渡ろうとする。

その時だった。青信号にも関わらず、車が突っ込んできた。


「な、何ッ!!!!!!」


それを間一髪のところで避けた。


「はぁはぁ」


「だ、大丈夫ですか?申し訳ない。急に視界が悪くなってしまって」


その間にも、黒いスーツの男はおってくる。


「いや、大丈夫だ。詫びなら少し、車に乗せて欲しい」


「それは一向に構いませんけど」


「頼むよ」


人見秀一は自分を引きそうになった男に頼み、車に乗せてもらった。


「どうかしたんですか。すごく顔色悪いですけど」


「僕を追っている男がいるんだ」


「えぇ!?嘘でしょ、どこに」


「さっきいただろ。あの黒いスーツにハットを被った男が」


すると、僕を引きそうになった男は答える。


「いえ、いませんでしたよ。誰も。というかあの横断歩道にはあなた以外誰もいなかったですし」


「何!?」


あの男は他の人からは見えないらしい。


すまない、もういいあそこでおろしてくれ、そう言おうとした直後だった


ふと、ミラーに目を向ける。それは車の外のミラーではなく、車内にあるバックミラーだ。


「な、何!?」


ミラー越しに写る。黒いスーツの男は車内にもう入り込んでいた。


「おいおい、嘘だろ!」


この時点でもう人間じゃない。これはもう、幽霊とかでもなければこんなことはありえない。


「ど、どうしたんですか?」


「見えないのか、後ろだ後ろ!後部座席にいるだろう、黒いスーツの男が!」


「な、何言ってるんです!?そんな人いるわけないじゃないですか」


運転手は車の真ん中に着いているミラーを見てもなんの反応も示さない。


「何もいないじゃないですか。どうしたんです?」


やはり、僕以外には視認できないらしい。


「いや、もういいどこでもいいから止まってくれ!」


運転手はそれに従う。


「ちょ、あれ?なんで、なんで!?」


「ど、どうした?」


「いや、ブレーキが効かないんですよ!ブレーキが!」


「これは、この黒いスーツの男のせいなのか…?」


「言ってることはわかんないですけど、これまずいですよ!車が止まらないから、段々とスピードが上がってます!」


50キロ、60キロ、70キロ、80キロ……


幸い直線の一本道。


「だが、何とかしなくては!」


すると、背後で座る黒いスーツの男は立ち上がり、こちらに手を伸ばしてくる。

顔はとても裕福そうなふくよかな男なのに伸ばしてくる手はしわしわなおじいさんのようだった。それによく見るとスーツ、体つきはとても痩せている人のようだった。

身体の構造がおかしいとしか言えない。


「こいつ、なんなんだ!」


「ちょ、危ないですよ!そこ…!」


すると、ガチャりと車の扉が開いた。まだ車のスピードは下がってもないのに。


「な、何ッ!!!!!?」


「だ、大丈夫ですか!?」


勢いそのままに人見秀一は車から落ちた。

落ちる瞬間黒のスーツの男が声を発した。


"えらんで"


その声を聞いた直後、茂みに入り、運転手の目から消えた。


「あ、うぁぁぁぁ!!!!」


運転手が叫ぶ。と、同時にミラーにはもう黒いスーツの男はいなかった。


「やばい、ブレーキ踏まないと!」


人見秀一が車から落ちたあと、何事も無かったようにブレーキが効き始めた。


「な、なんだったんだ。あの人大丈夫かな…運が悪いんだろうな…」


運転手は関わるまいと落ちた人見秀一を置いて、足早に去っていった。












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