鈍感主人公とツンデレ後輩が結婚するまで
「先輩、チョコ誰からも貰えなかったんですかー? 可哀想な先輩に可愛い可愛い後輩が義理チョコあげちゃいますよ」
「お、本命?」
「ななな、先輩、からかわないでください! 女子の間でも男子にあげたチョコの数でマウントがあるからあげるだけですっ!」
「義理チョコ配ってる女子の闇を聞いてしまった……」
「あれ、先輩、その類いの女子たちからのチョコは?」
「女子に優しい俺は女子の懐のために普段から存在感薄めてるからな」
「急に頭撫でたくなる話するのやめてくれませんっ!?」
「お前が思い出させたんだろ……」
おい、ガチで慰めようと頭に手を置くな。
身長低いこと再認識させられて余計悲しくなるだろ
「てか、それなら俺じゃなく、桜井も義理チョコをクラスの男子たちに配れば良いだろ。高嶺の花の令嬢様から貰えたら男子ども大歓喜だぞ」
負けず嫌いな性格な桜井は女子たちの男子へのチョコ渡したマウントに対抗したいんだろし。
「……………」
「おい、なんで俺の頭撫で始める」
「先輩が意地悪なこと言うからです」
「やっぱ本命だったりするのか?」
「デリカシーない男は嫌われますよ」
「好意に気が付かないフリをする鈍感よりはマシだろ」
「私はそっちの方が好きです」
「じゃあ義理チョコ確定だな」
「ちなみに本命だったらどうするんですか?」
「泣いて謝って土下座して彼女になってもらってラノベ主人公に……」
「ぼっちインキャの成り上がりラブコメのヒロインにしないでください!」
「いろんな方面に喧嘩売ること言うなよ」
「うわぁ……ラノベ主人公が読者の存在を匂わすやつガチでやっちゃってるよこの彼女いない歴=年齢18歳友達0人155センチの先輩」
「後半必要だったか!? 殺傷能力高すぎだろ令嬢様」
「先輩がそうやって煽ってくるからですよ、わたしただの女子高生ですし」
いや、実際某大企業のお嬢様だろ……
それ言われるの嫌なの知ってるからこれ以上は言い返さないけども。
「ただの女子高生様が俺みたいななめくじに関わるのはなんでなんだろうな」
「先輩って自信家風なのに実は自意識低すぎるのなんでなんですかね!??」
「ごめん、なめくじ様に失礼だったわ」
「もうツッコまないですよ」
「はぁ……先輩ってなんでモテないんですかね」
「ツッコミの代わりにナイフ投げるのやめない? もう俺のライフはゼロだぞ。なんか一周回って撫でて慰めてくれ」
「良い意味で言ったんですけどね……」
「え? なんて言ったんだ? ナイフが刺さった耳が使いものにならなくて聞こえなかったわ」
「バイクが爆音で走り去って行っただけですよね!?」
「その理由は鈍感主人公ぽくて嫌なんだよ」
「先輩が鈍感主人公アンチなの、自分嫌いだからじゃないですか?」
「嫌なことに気が付かせるなよ」
「まぁ鈍感主人公な先輩が30歳になっても独身だったら私がもらってあげるので安心してください」
そう言ってドヤ顔してくる桜井。ラノベヒロインぽいこと言うなよ。本気になりそうになるだろ。
「ふっ、俺が30歳になる前に桜井はどこぞのイケメン社長と結婚してるだろうから無理だな」
「まぁ? 私は先輩と違ってモテますしね〜」
さっきのドヤ顔と同じ表情なはずなのに苛々するな。
「殴らせろ」
「うわー可愛い可愛い女子に暴力なんて先輩サイテー」
そう言いながらケラケラと笑って走り出した桜井は、高嶺の花と呼ばれてチヤホヤされている普段より何倍も美しく可愛く見えた。
【12年後】
「先輩、もう三十路ですね。結婚しないんですか? あ、相手がいないか〜」
会社の後輩先輩になった桜井と俺は、会社終わりに俺の30歳の誕生日会を居酒屋で開催していた。
「2個下で美人の桜井が結婚してない方がおかしいけどな」
「どっかの誰かが40歳の太った社長との結婚から助けてくれなかったら結婚してましたけどね」
「他にもっと良い相手を桜井なら見つけられると思ったからな」
「その結果が今なんですけど」
「撫でてやろうか?」
「ちっ、先輩のくせに身長逆転したのずるいです」
「何年前の話だよ」
懐かしくなって本当に桜井の頭を撫でてみる。
人の頭を撫でるってこんな感じなんだな。
「先輩、女子は別に撫でられても嬉しくないんですよ?」
顔を少し赤くした桜井が上目遣いで睨んでくる。
やりすぎるとセクハラで訴えられそうだし辞めておく。
「でも桜井も昔俺を撫でてただろ。ただの仕返しだよ」
「あの頃の先輩はちっちゃくて可愛いかったのに」
「可愛いとか思ってやがったのかよ。殴らせろ」
「男女平等を掲げる俺カッコいいムーブやめた方がいいと思いますよ」
「桜井、お前っていつになっても色んな方面に喧嘩売るよな」
「今だにラノベ主人公のつもりなんですか? 鈍感主人公アンチなのに」
「酔ってるからってことにしといてくれ」
「うっわ、汚い大人になりましたね」
「それは昔からだ。ほんとお互い変わらないな」
いつまでも子供の頃のままだ。
「先輩は身長が25センチも伸びましたけどね」
「桜井は令嬢様じゃなくなったけどな」
「誰のせいだと……はぁまぁおかげ様で楽しい一般OLをやらせてもらってますよ」
「ところで一般OLさんよ、これ以上酔わないうちに催促しておくけど俺への誕生日プレゼントは?」
「誰からも誕生日プレゼントを貰えない先輩に仕方なく慈悲であげるんですからね? 感謝してくださいよ」
そう言っていつものようにツンツンしながらカバンから小袋を取り出し渡してくる。
「珍しいな。いつもは誕生日に可愛い可愛い私と居れることがプレゼントですっとか言うだろ」
「……28歳の私がそれ言っちゃうのって寒くないですか?」
「27歳でも変わらなかったと思うけどな」
「……過去の私は忘れました」
「汚い大人だな」
「お互い様です」
「早く開けてみてくださいよ」
言われるがままに袋を開けると出てきたのは小さな箱だった。いや、これは箱というより───
「渡す物間違えてないか?」
「間違えてて欲しいんですか?」
「俺と桜井は釣り合ってない。さっきも言ったがお前ならもっと良い奴を見つけられる、血迷うな」
「私、先輩と一緒にいる時が1番楽しいんです」
「からかってるんだとしても本気にしちゃうぞ」
「本気になってくださいよ。いつまでも私が大好きな先輩を先輩が否定しないでください」
本気なのか。本気で俺なんかが好きなのか。
もしかしたら、とはずっと思っていた。だけどずっと気が付かないフリをしていた。
「俺は自分のことが嫌いだった。誰からも必要とされない自分が大っ嫌いだったんだ。だけど、桜井に絡まれるたびに俺は必要とされている気になれた。自信を持てた。楽しかった。だからずっとずっと前から桜井のことが好きだった」
「ならなんで私の前ではいつも自虐するんですか」
「そんなん決まってる。俺は桜井からしか必要とされてないからだ。沢山の人から必要とされる人気者の桜井と俺は釣り合ってないし、お前の前では自信を持てなくなる」
「子供みたいな考え方ですね」
「成長しないんだよ俺は」
「じゃあ成長しましょうよ一緒に」
「俺はともかく桜井の成長ってなんだよ」
「鈍感先輩に12年間も告白出来なかったツンデレな私がプロポーズをしたことです」
「ツンデレの自覚あったのかよ。ラノベヒロインじゃねぇか」
「ラノベ主人公の鈍感先輩にピッタリなお嫁さんだと思いませんか?」
「本当に俺で良いんだな」
「まぁ昔約束してましたし」
「アレに関しては絶対からかい文句だと思ってたわ」
「ふふ、今だに覚えてる時点でちょっと本気だと思ってましたよね」
「それは可愛い桜井が悪い。あの時のドヤ顔にトドメをさされちゃったんだよきっと」
「なーんだ。そんな昔から私たちって両想いだったんですね」
「ダイジェストでお送りしてもらわなきゃ読者がブチギレそうだな」
「その前にそろそろ私がブチ切れそうです」
「大好きだ。俺と結婚してくれ姫乃」
「初めて下の名前聞きましたよ」
「ツッコむところそこ?」
「照れ隠しだって察してくださいよ旦那様?」
「変わらない毎日になりそうだな」
「変わりますよ、今日からは甘々な私が見れるんですから」
「糖分過剰摂取で糖尿病になる未来が見えるな」
「お互い介護し合いましょうね?」
「頭撫でたりしてな」
「してきたら噛み付いてやりますよ」
「どんな老婆さんだよ」
「先輩、老後の話より早く箱開けて指輪付けてみてください」
「これ俺が付けるのか?」
銀色の輝く指輪にキラキラと輝くダイヤ、高そうだ。
流石は俺の紹介で入社したくせに一瞬で俺より出世した課長様。
「多様性の時代ですからね、先輩もプロポーズしたんですし私宛ての婚約指輪も楽しみにしてますよ?」
「この指輪を見た後だと怖いんだけど、給料の差って分かってるよな?」
「生意気な後輩は強欲なんですよ?」
「副業頑張るか……」
「裸エプロンで応援してあげますから頑張ってください」
「頑張らせる気ないだろ」
「私、子供はたくさん欲しいんで」
「ぐっ、急にその話するのかよ」
「ふっ、魔法使いの先輩には刺激が強かったですか?」
「経験豊富なお嫁さんに任せるよ」
「ぐっ、わわ私には経験豊富な友人がたくさんいますからねっ! ぼっちな旦那さんと違って」
「お互い大の大人なのに情けないな」
「先輩のせいです」
「その言葉そっくりそのままお返しするよ」
「「はは……ラブコメ長引きさせすぎたなぁ」」
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