97 四神 3
「させません!」
アオイの頭から白虎の顔に跳び移るサスケ
そして身体全体を使って目の前を覆う
「ちょ、前、見えないよ!?」
バランスを崩して倒れる白虎
巻き込まれないようサスケは離脱する
「いったあ~~~」
ザスッ!
「え?」
「壊鬼激喰!」
倒れた隙を狙って二本目の壊鬼激喰
「ふにゃあ~」
地面に腹ばいで動けなくなる白虎
「わたしたちの勝ちでいいですよね?」
白虎は少し不貞腐れたような顔をする
だがすぐに笑顔になる
「うん、キミたちの勝ちだよ♪
いやあ、面白かったよキミたち、また遊んでね♪」
「ありがとうございました、あの、回復薬飲みますか?」
「いらないよ」
「でも、魔力と体力がかなり失われているはずだし」
「ふふーん、ボクは自然回復力も高いんだよ♪」
そう言ってゆっくり起き上がる白虎
すでに50パーセントほどは回復していた
「うええっ!?」
「それではまだ戦えたのでは」
「うん、だけどキミたち気に入ったからここで終わりにしとくよ」
楽しく戦う、それが白虎のポリシー
アオイとサスケ、白虎に認められ決着
「序列一位様はガイド精霊のトップだからさぞ強いんだろう?」
「基本能力は高いと思うけど強いかどうかはわからないわ」
「自慢して偉ぶると思ってたが意外と謙虚なんだな」
「驕りと油断は大敵ですよ」
「そんじゃ、どこからでもかかってこい」
「では遠慮なく、ポチャ、行きますよ」
「うん♪」
アンナとポチャは左右から攻撃を仕掛ける
左からポチャが体当たり
右からアンナが殴りかかる
ドンッ! ガスン!
「いたっ!」
「何かに阻まれた? 結界?」
玄武のまわりに見えない壁が展開されている
「俺の自慢のクリスタルシールドだ
お前らの攻撃は俺に届かねえぜ」
「なるほど、固いですね」 コンコン
アンナが軽く叩いて確認する
「でもあなたも攻撃できないんじゃ」
「シールドを外せばできるぞ」
「それだと防御ができなくなるわよ」
「攻撃が来たら瞬時に展開できるから問題ねえよ」
アンナは少し考える
「では攻撃をし続ければ私たちは攻撃されませんね」
「いやそうだけどよ、攻撃しても無駄だろ?
むしろそっちの身体がいかれちまうぞ?」
「心配してくれなくても大丈夫よ」
「まあ好きにしたらいいさ」
(トップのくせにおつむが弱いのか?)
「僕もこんなシールドなんかに負けないぞ!」
ポチャが飛びかかろうとする
「ポチャ、やめなさい!」
ポチャが急ブレーキを掛ける
ゴン! 頭がぶつかる
「いたい、、、 急に止めないでよお姉さん」
「ごめんなさい、でもポチャは下がっていて」
「どうして?」
「ポチャではどうしようもないからよ」
「どういうこと?」
「ポチャ、あなたではこのシールドは破れません
ちょろちょろうろつかれても邪魔です
だから離れていなさい、足手まといよ」
「ひ、ひどいよお姉さん!」
(なんだこいつ、仲間に対してひどくねえか?)
「たしかにその犬には荷が重いだろうが
そんな言い方はないんじゃねえか序列一位さんよ」
「事実を言っただけよ」
(こいつ、気に入らねえ)
「う、うわ~~~ん!」
走り去るポチャ
「これで心置きなく戦えるわ♪」
「序列一位ってのも大したことねえな」
「そう思いたければ思えばいいですよ♪」
「お前だって俺のシールドは破れないぜ?
犬のこと言えねえんだよお前も!」
アンナはやれやれと言ったポーズをとる
そして小さく深呼吸して
『お前じゃなくて、アンナですよ?』 ギンッ!
全開の闘気を放ち玄武を見据える
「ぬ、ぅ、、、」
殺気にも似た闘気を浴びせられ一瞬怯む玄武
(これが序列一位の本気ってやつか?)
「それじゃシールド壊しちゃいますね♪」 ニッコリ
闘気を引っ込め満面の笑顔で言うアンナ
「やれるものならやってみろ!」
「では♪」
物理攻撃力はガイド精霊の中では最も高い
序列の差は基本能力に大きく反映されている
アンナは身体強化を最大率で掛ける
高い物理攻撃力がさらに高くなる
ハードニングを拳に掛ける
さらに攻撃力が増す
「いきますよー♪」
(俺のシールドは砕けやしねえ、、、)
威力を増幅している拳に少しばかりの不安を覚える玄武
構えるアンナ、そして
コン
「は? なにしてんだ?」
「なにって、小突いてるのよ」 コン、コン
そう、小突いているのだ
全力で撃ち込んでくると思った玄武はポカンとする
「いやいやいや、おかしいだろ!」
「どう殴ろうが私の勝手ですよ?」 コン、コン、コン
「そんな小突くぐらいで砕けるシールドじゃねえぞ!」
「誰も一撃で砕くなんて言ってませんよ?」 コン、コン、コン
(結局こんなものか、くだらねえ)
コン、コン、コン、、、 コンコン、コンコン、コンコン、、、
(まあ全力でやっても砕けないがな)
コンコンコン、コンコンコン、コンコンコン、、、
(小突き疲れるまでやらせとくか、しまいにゃ諦めるだろうよ)
コココココ、コココココ、コココココ、、、
「ちょ、なんだ!?」
小突く速度が次第に速くなっていった
まるでキツツキのように連打していくアンナ
速過ぎて腕が見えないほどに
「たしかに超硬度のシールドですね
でも絶対に破壊できないシールドではないですよね?
たんに破壊しづらい、破壊するのが至難だと言うだけです」
コココココココ、コココココココ、コココココココ、、、
(そうだ、だから砕けられる奴が現れるなんてことは、、、)
ビキッ! コココココココココココココココ、、、
「なっ!?」
ビキッ! ビシッ、ビシッ!
シールドに亀裂が入る、その一点に向かって
「とどめです♪」
小突くのを止めて腰をひねり全力の右ストレート
ズガンッ!! バキィィィンッ!!!
粉砕! 砕け散るクリスタルシールド
「はい、おしまい♪」 ニッコリ
あまりの衝撃に硬直する玄武
「このまま、ダイレクトアターーーック♪」
「はっ! させるかっ!」
ガツン!
「すぐに張り直せるんですね」
「くそっ、やるじゃねえかアンナ」
クリスタルシールドを再度展開した玄武
「ではもう一度砕きましょうか♪」
「亀裂が入る前に何度でも張り直すぜ!
アンナの魔力と体力が先に尽きるだろうから諦めろ!」
「砕く手段が一つとは言ってませんよ?」
「はあ? さっきのキツツキ以外にまだあるのか!?」
拳の状態は身体強化とハードニングを掛けたまま
その拳に闇をまとわせる
「なんだそりゃっ!?」
「知らないんですか? お兄さんの応用です♪」
「知らねえよっ!」
「光を貫く一筋の闇!」
シールドに拳が当たる
そのままシールドを拳の闇が貫き細く長く伸びる
ザクッ!
「うぐっ!」
玄武の額にギリギリ届く
少しだけ刺さり血が垂れる
「残念、浅かったみたい」
シールドは砕けてはいない
だが砕かなくても通せる攻撃が存在したことに驚愕する玄武
(やばいぜ、シールドが通用しねえ)
「降参したらどうですか♪」
「うぬぅ」
迷う玄武、シールド無視の攻撃をする相手
もはやこれまでかと思い始めたが
「アンナ、なんのマネだそりゃ」
「あはは、魔力切れ、体力切れですねー♪」
仰向けに五体投地していた
「いやそれ敵に言っていいのか?」
魔力体力が尽きたことを敵に教える奴はいない
「言わなくてもこの状態見たらわかるでしょ」
「ちっ、残念だったなアンナ
悪いが決着は着けさせてもらう」
シールドを外す、あってもアンナには通用しない
そもそもアンナはもう攻撃できない状態だ
「あとで犬に謝っとけよ、仲間は大事にしろアンナ」
「してますよ?」
「いや犬を邪魔者、足手まとい扱いしただろうが」
「ええしましたね、でもアレ嘘ですから♪」
「は?」
そのとき、玄武の身体が真下から突き上げられた
腹部に何かが思いっ切り激突したのだ
「ぐばっ! なんだあっ!?」
突き上げられ宙に浮き上下逆さまになる玄武
そして落ちる
「やったー! 大成功♪」
「ポチャ、ありがとう♪」
「い、犬? お前どっか行ったんじゃねえのかよ!?
それにその身体、どうなってやがる!」
戦闘形態になっているポチャ
「お姉さんの作戦だよ♪」
「作戦?」
「ポチャにはあなたの真下へ潜り込んでもらいました」
「いつのまに?」
「最初のシールドを破壊したときですよ」
「こわれたから急いで入ったよ♪」
「全然気付かなかったぜ」
「そりゃポチャのことを意識から外させてましたからね」
アンナは役立たずと言ってポチャをこの場から立ち去らせる
立ち去ったフリをして玄武の後方へ回り込むポチャ
玄武は仲間を蔑ろにしたアンナへ怒りを向けていた
この時点でアンナにだけ意識が向いていた
ポチャは退場した者として自然と意識から外していたのだ
そしてアンナのシールド破壊で動揺する
ポチャが真下に潜り込んだことにすら気付かないほどに
さらにアンナが倒れたので完全に油断していた
そのタイミングでポチャは戦闘形態になる
そのまま腹部に全力で体当たりして玄武を突き飛ばす
「そんな作戦いつ打ち合わせたんだよ、俺のシールドは初見だろ?」
「私、念話が使えるので考えるフリしてポチャに伝えていたの」
念話、いわゆるテレパシーである
「なるほど、俺は最初から踊らされていたわけか」
「私、最初に言いましたよね?」
「何をだ?」
「驕りと油断は大敵ですよ♪」
(あれは俺への警告だったってことか、まいったぜ)
「だけど俺の真下にいてよく潰れなかったな」
「何度か潰れかけたけど頑張ったよ♪」
「危ねえな! そんなん頑張るなよ!」
「頑張るよ? 僕を信じて任せてくれたんだから」
「ええ、ポチャは仲間ですからね♪」
「だったらよ、演技とはいえ仲間を役立たずとか言うなよな」
「そうですね、もう言いません、ごめんねポチャ」
「ううん、僕は全然気にしてないよお姉さん」
(大したもんだぜ序列一位ってやつは、犬っコロもな)
「さてと、ずっと逆さまってのはいい気分じゃないぜ」
引っくり返った亀状態である
甲羅を揺らし回転させる
そして甲羅で地面を蹴るように跳ぶ
上下を戻して着地する
「自力で戻せたんですね」
「すごーい」
「アンナは動けねえよな、ポチャはシールドを破れねえ
ポチャじゃ俺には勝てないと思うぜ
これは驕りでもなく事実だ、どうする?」




