9 アシュラ・バスター 後編
チューリアルボス、アシュラ・バスター
ゲームでの攻略法はこうだ
六本の腕から放たれる各属性の魔法攻撃を防ぐ
顔が変わる前に落とせるだけ腕を落としていく
顔が変わる瞬間は逃げ隠れする
第二の顔のときも同様に残った腕の攻撃に耐える
第三の顔に変わる前に残りの腕を落としていく
変わる瞬間はまた逃げ隠れる
最後の顔のときに腕が無ければ頭部に一斉攻撃
まだ腕が残っていれば腕の攻撃に耐える
最終的に腕を全部落として頭部を破壊すれば倒せる
ゲームとリアルの違い
倒すためのパターンは恐らく同じだろう
だが顔が変われば腕が復活する
落とした腕は最後っ屁攻撃になる
今のところこの二点がゲームとの違いだ
もしかしたらまだあるかも知れない
俺の知識外のことが立て続けに起こっている
ボス戦だけではない
レベルや能力値がステータスにないこと
レベル1なのにゲームのときに覚えた魔法やスキルが使えていること
FPOの世界なのに異なる点がかなり多い
「もうすぐ六本目の攻撃が終わるがどうする?」
ガバスさんが攻撃を頑張って防いでくれている
ライツとミッドは動けない
レフティは結界のため動けない
チケットさんは倒れている二人を守っている
「攻撃は俺がやる」
「一人で大丈夫か?」
「不安もあるけど攻撃可能なのが俺だけだからな
それに俺の思い上がりのせいだから責任を取る」
「私が責めたことを気にしているのか? だとしたら」
「いやガバスさんは間違っていない、俺が俺自身を赦せないだけだ」
アシュラがダークボールを撃つ
俺は左腕の真下に回り込む
「そんな場所、危険だぞ!」
レベル1だけど覚えている魔法とスキルは使えている
だからきっと大丈夫!
<グレートアースウォール>!
地面から薄く圧縮した土壁を左腕の真下から伸ばす
一気に三本の左腕を斬る
<ブラックホール>!
落ちる三本の腕を闇の結界に封じる
中で爆発する音がかすかに聞こえるが外への被害はない
まだ第三の顔に変わるまで20秒ある
すぐに反対側、右腕真下へ移動する
同じくグレートアースウォールからブラックホールのコンボ
右腕も全て消滅させる
あと10秒、残るは頭部の破壊だけだ
しくじればまた腕が元に戻る
そうなるとイタチごっこになってしまう
<フライ>
一気に頭の高さまで飛ぶ
収納庫から一本の大剣を出す
<死招剣>を装備
名前はFPOらしくふざけているが特殊能力付きの激レア武器だ
読んで字の如く死を招く剣
これで斬られると50%の確率で即死させる
即死耐性無効化も備わっている優れものだ
「これで終わりだあぁっ!!」
死招剣をしっかり握り身体を回転させる
そのままアシュラの首を斬り飛ばす
頭部が弱点だから即死効果は意味無かったけどね
念のため斬った頭もブラックホールで消滅させる
「ケンタ、お前一体、、、」
地面に降りてガバスさんたちのところまで戻る
「ケンタさん、こんなに強かったんですね」
「これだったらケンタだけでよかったのではないか?」
「いや一人じゃやっぱり無理だよ」
チケットさんとガバスさんが無理じゃねーだろという顔をする
「それより二人は大丈夫か?」
ミッドとライツの方を見る
二人とも気が付いていてこっちを見ていた
「ケンタさん、強過ぎでしょ!」
「そうだよ!」
ミッドが俺をさん付けしている
二人とも今の戦闘を見ていたようだ
「ガバスさんの言うようにケンタさんだけで討伐出来ましたよね」
「レフティまでそんなこと言わないでくれ」
一人じゃ無理なのは本当だ
腕が爆発したり復活することは知識外だった
ゲームの知識だけで戦っていたら爆発にやられていた
「腕が爆発することは知らなかったんだ
知らずに戦っていたら俺はミッドたちと同じになっていたよ」
「じゃ俺らのおかげだね♪」
「そういうことだな」
知らなかったとはいえ大怪我させたのに怒りもしない
ミッドは思ったより器がでかいのかもな
「え、あの、ちょっと、、、」
レフティが慌てている
「どうした―――――」
振り向くとアシュラがゆっくりこっちに近付いて来る
頭と腕は消滅したままだ
頭部を破壊すればアシュラは死ぬはずだ、なぜ動ける
ゲームと違うところがまた一つ
こんなのどうすればいいんだよ!
「どうするケンタ」
「さすがに俺もわからない」
「動きは遅いし攻撃はしてこないみたいですね」
チケットさんの言うようにゆっくり歩いて近付いているだけだ
これなら足を斬れば止まるかも
でも足も爆発するのかな?
胴体だけで這いずって来られるかもしれない
それは気持ち悪いな
「ほっといて逃げるわけにもいかないよな」
ミッドの言う通りほっとくと村まで来るだろう
「よし、足を斬って、胴体も斬り刻む」
「なるほど、では私たちは援護に回ろう」
「どう援護すればケンタさんは動きやすいですか」
ガバスさんとチケットさんが援護を申し出る
「俺一人でやるからみんなは村へ帰ってくれ」
「何言ってんだよ、回復したから俺たちも戦えるぜ」
「そうよ、やれることはあるはずよ」
ミッドとライツが文句を言う
「多分、足や胴体も爆発する可能性が高い
みんなが巻き込まれると思うから俺一人でやるんだよ」
「さっきの黒いので包めば大丈夫なんだろ?」
「斬り刻むって言ったろ
バラバラに散らばるから全部を回収できないと思う
いくつかは間に合わず爆発するだろう
だからそんな危険地帯にみんなを連れて行けない」
「それはケンタだって危険だろう」
「俺の知識不足と思い上がりでみんなを危険に晒した
冒険者として男としてケジメを付けたいんだ
だからガバスさん、頼む」
俺はガバスさんを真っ直ぐ見据えて言う
「仕方がないな、みんな村へ戻ろう」
「ガバス、いくらなんでもそれは」
「チケットさんもお願いします」
「ケンタさん」
三人組の方を見る
「せめて回復のためにわたしだけでも」
「レフティ、村へ戻るぞ」
「ミッド、それは薄情じゃないの?」
「ケンタさんの言ってることがわかるからだ
俺だって男だからな、ケジメは大事だ」
「まったく男ってめんどくさいわね」
「めんどくさくて悪かったな」
三人はいいパーティーのようだ
なんだかんだでまとまっている
俺はベンケイさんたちのことを思い浮かべた
俺たちもいいパーティーだったな
「それじゃ村で待ってるからなケンタさん」
「おう、待ってろ」
みんなは村へ向かった
「アシュラ・バスター、いやアシュラ・バスター改
最後のバトルを始めようか」
やっと主人公らしいことができました
次回、アシュラ戦決着!