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愚者の楽園に転移したけどまったく問題ない  作者: 長城万里
2 永遠の混沌

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89 有名人

俺たちはオシリペンペン街へ帰ってきた

西門から入って領主邸へ向かう


領主邸に到着して領主様へ報告をする

報酬は前回と同じくすでに口座に振り込んでくれていた

ほんと仕事が早いな領主様


領主邸を出て宿屋へ向かう

今回は宿屋を引き払わなかった


宿屋の主人が依頼でいない間の宿泊料はなしにしてくれた

継続して泊まって欲しいからだそうだ


宿屋の主人に挨拶をして部屋へ行く

ギルドへは明日行くことにする




翌朝、朝食を食べながら話す


「ギルドへ報告済ましたら今日はお休みだ

 それぞれで自由に過ごしてくれ」


「ケンタはなにするんだ?」

「俺はゴロゴロする」

「お兄さん、休日のお父さんじゃないんだから」

「いいじゃん、ほっとけ!」


宿屋を出てギルドへ向かう



ギルドに着いて中に入る

いつものように視線が集まる


いつもならすぐに視線は外れるがなかなか外れない

なんだか注目されている


「ただいまベルさん」

「おかえりなさいケンタさん、みんなも」


シリウス様とシシリーの護衛依頼の達成報告を済ます

少しだけ減ったがまだ注目されている


「ベルさん、なんか俺たち注目されてるんだけど」

「そりゃそうでしょ」


注目されて当たり前って感じに言われた


「あなたたち永遠の混沌(エターナル・カオス)はもう有名人よ」

「なんで俺たちが有名人なんだ?」


少し呆れた顔をされた


「まず、領主様からの指名依頼をこの一ヶ月で二度達成してます

 領主様からの指名依頼なんて滅多にいただけませんからね」


「たしかにそうだな、でもそれだけでこの注目度はおかしい」


「次にベンケイさんがメンバーにいること

 祭りの影響は大きいわよ、名前も顔も知れ渡ってるわ

 特に主催者で全勝したベンケイさんは超有名人です」


「うん、納得した、観戦者多かったし盛り上がったからね」


「そのベンケイさんが加入したパーティーだもの有名にもなるわよ

 しかもベンケイさんと良い勝負したでしょメンバー全員」


アオイくん、アンナ、俺とベンケイさんの勝負のことか


「アオイちゃんの速さを活かした戦い方も目立っていたわ

 結構印象に残っているみたいよ」


「ベンケイ殿には結局通用しませんでしたけどね」


アオイくんが苦笑いする


「アンナちゃんが一番有名かも知れないわ」

「なんで私が!?」


「だってすごい魔法攻撃でベンケイさんを追い詰めたじゃない

 それと、その、試合後に観戦者を張り倒していたでしょ

 そんなことがあったらアンナちゃんを忘れるわけないわよ」


パンツを見た奴らへの鉄拳制裁か

たしかに色んな意味で忘れないわな


アンナが真っ赤になって俺を睨む、睨むな!


「ケンタさんもベンケイさんを倒す寸前までいけたじゃない

 ベンケイさんの必中の攻撃も捌くし受け切るし、すごいわよ」


「だろ、ケンタはすごいやつだろ♪」


やめて、褒め殺しはやめて!


「そんなわけであなたたち全員有名人よ」

「まさか祭りの影響がここまでとは」


「あとパーティーのランキングも急上昇してるわよ」

「え、じゃ100以内に入れたのかな」


「すでに10位よ」

「待って、なんでそんなに上がってるんだよ!?」


そんなに功績上げた覚えがないぞ?


「さっきも言ったけど領主様の指名依頼よ

 しかも悪徳貴族の捕縛に貢献したらしいじゃない

 それとアマ草も短期間で大量に採ってきてくれたし」


バッカーの件も含まれていたのか

領主様の指名依頼の功績点は大きいようだ

アマ草も入手困難だからな


「それにしても上がり過ぎだよ」


「いいんじゃない? 指名依頼も増えるわよ

 それに冒険者ランクも上げやすくなるし」


指名依頼が増えたらゆっくりできんじゃないか

ランクは上げたいけど


「当分は注目されるでしょうね」

「そうだな、慣れるしかないか」


あまり目立つのは苦手なんだけど仕方がない


「じゃ俺たちは帰るね」

「ええ、またね」


俺たちはギルドを立ち去った

それからそれぞれで自由に行動する


俺は宿屋へ戻って当初の予定どおりゴロゴロした




翌日以降、軽い討伐依頼をしたり雑用依頼をしたり

しっかり休んで無理のない生活を続ける

定期的にパンティさんのことも確認する

だけどなかなか現れない


「どうしようかねベンケイさん」

「やっぱ他の街とか村とか巡った方がいいんじゃね?」

「そうですよね、全然来ませんから」

「どこかで引きこもっているのかもパンティ殿」


だが闇雲に捜し歩いてもと思うからなかなか旅立てない

本当にどうしたものか


「よし、今月いっぱいはこの街で待とう

 それで来なかったら捜しに旅立とう」


「おう」「そうですね」「はい」


パンティさん捜しの方針が決まった

今は7月だから8月になったら旅立ちだ


そういや今日は7月7日、七夕だ

もちろんこの世界には存在しない


しかしあっちの世界から来た俺は短冊を書きたい気分になってしまう

今だったら「仲間が全員揃いますように」だろうな


7月7日、当たり前だが明日は8日

7月8日、なにかあったような、、、


「あっ!」

「お兄さん?」

「ケンタ殿?」

「どしたん?」


「いや、なんでもない、今日は七夕だなと気付いただけだ」

「なんだそりゃ」


とりあえず誤魔化しておく


そのあと、こっそりアンナにあることを伝えておく




翌日、7月8日である


「今日はお休みだからみんな自由に過ごそう」


アンナはポチャと広場へ、アオイくんはサスケと街へ

ベンケイさんはソロ狩り、って休めよ!



俺はギルドへ行く


「おはようベルさん」


「おはようございますケンタさん

 今日はお休みじゃなかったの?」


「今日、仕事何時ごろ終わるの?」

「いつもどおり16時に交代ですよ」


「じゃ19時に広場の噴水前に来てくれる?」

「なぜですか?」


「食事しに行こう」

「え? あ、は、はい、、、」(やっとお誘いきた!)


「食事に誘う約束してたでしょ

 もしかして今日は都合が悪かった?」


「い、いえ、全然! 今日はしっかり空いてます!」


「それじゃ19時に広場の噴水前で待ってるね」

「はい♪」


なんか機嫌良いな?






ケンタさんからやっと食事に誘ってもらえました

忘れられてるんじゃないかと思ってましたよ


でも嬉しいな♪


16時に交代して急いで家に帰ります

わたしの家はギルドから近いのですぐに着きます


お風呂に入って身支度をします

べ、別にそういうことを期待とかしてませんよ?


うーん、何着ていこう、悩む

でもケンタさんはお洒落なところへは行かなさそう

カジュアルな感じでいいかな


オフショルダーの水色ブラウス

胸元に水色のリボン

膝下丈の黒フレアスカート

頭に白カチューシャ

靴はミルク色のパンプス


あれ? カジュアルじゃなくなってる

変に気合い入れてる女って思われたらどうしよう


あ、もう18時、仕方がないからこれで行こう

薄く化粧して髪も整えて服もチェックして家を出ます


待ち合わせ場所が近付くにつれてドキドキしてきました


広場の噴水前にケンタさんが立っています

普段とあまり変わらない姿です


これじゃわたし、浮かれてる女みたいじゃないですか!


「ベルさん、来てくれてありがとう」

「約束ですから」


ケンタさんがわたしを見る


「ベルさんの私服姿、初めて見たけど大人っぽくて良いですね

 って大人だから当たり前なんだけど」


時節的にこの時間でも明るいので表情がわかる

ケンタさん、照れています


「そうですよ、わたし大人ですもの

 でも、変じゃないですよね?」


「全然、似合っていますよ、綺麗です」


ケンタさん、大雑把なくせにこういうとこ直球でくる

わたしも照れてしまいます


「それじゃ行きましょうか」

「はい、、、」


数分後、わたしは浮かれた自分とケンタさんを呪った






昼過ぎに狩りから帰ってギルドで換金する

なんかベルの機嫌が良かった


ギルドから出てぶらつく


「昼メシでも食べに行くか」


向こうからケンタがやって来る


「ベンケイさん、おかえり」

「ただいま、どしたん?」


「今日の夕食だけど外食にするからその連絡をしに来た」

「そんなの夕方宿屋に戻ったときでもいいんじゃね?」


「俺は宿屋に戻らず直接行くから今伝えとこうと思って」

「そっか、じゃ仕方ないね」


ケンタから時間と場所を伝えられる


「それじゃお店で!」

「おう」


忙しなく去って行くケンタ、休みだってのに忙しそうだな

休みなのに狩りに行ってる私が言うことじゃないけど


さて、昼メシは何にしようかな

店じゃなく屋台で軽くつまむか


広場の屋台で簡単に済ます


そういやアンナとポチャは広場で遊ぶって言ってたよな

でも見かけないな、あいつらも昼メシに行ったのかもな


集合時間まで時間があるので少し街をぶらつく

アオイとサスケもぶらついているはずだよな

どっかでバッタリ会うかも


とか思っていたら見つけた、しかもケンタと一緒だ

ケンタめ、忙しなかったのはアオイと遊ぶためだったのか

アオイが楽しそうに笑っている、よかったなアオイ♪


アオイがケンタのことを好きなのは丸わかりだ

ケンタは気付いとらんけどな


店に入って行く、ファンシーショップかよ

あの二人が入る店じゃねえな


アオイは時代物、相撲関連のグッズしか買わないし

ケンタがファンシーグッズ買うとも思えない


気になるがアオイの邪魔をしたくないからほっとくか


・・・・・あのショップ、今度寄ってみよう



指定された時間は20時、今は19時50分を過ぎたところだ


指定の店はベルクカッツェ亭

あっちの世界で言うところの欧州料理の店

私の好きな店だから今日はたらふく食べようと思っている♪


店の前でケンタが待っていた


「中で待ってりゃいいのに」

「いや個室だから案内しないといかんから」


この店は一階が通常のテーブル席

二階と三階に個室が数部屋ある

個室は団体客やペット連れなどが利用する


「ああ、一応動物がいるからな」

「そゆこと」


二階の個室へ案内されてケンタが扉を開く


私とケンタは中に入る、そして宴が始まる

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