88 相棒
シシリーとリディアはショッピングや公園などで遊ぶ
前回同様、アンナとアオイくんも一緒に遊ぶ
遊びながらでも周囲に気を配っている
俺とベンケイさんは少し離れて周囲を警戒しながら見守る
今日はシシリーを優先しているようで俺の方へ来ない
たまにチラチラ俺の方を見てるけど来ない
「ケンタ、断ったんだってなリディアの告白」
「な、なんで知ってんの!?」
「リディアから聞いて全員知ってるぞ」
「リディアから? 普通は告白断られたことなんて言わんだろ」
「いや告白の結果は報告するという約束で私ら協力してたから」
「やっぱり全員グルだったか」
「理由が年齢とはケンタらしいと思ったよ」
「だって30男が14少女となんて俺らの世界じゃアウトだろ」
「もうこの世界の住人なんだから気にしなくていいんじゃね?」
「30年あっちで生きてきたんだぜ?
あっちの倫理観が根付いてるから今更切り替えれない」
「そうだな、簡単に切り替えできないよな
でもこの世界で何年か過ぎたら考えも変わるかもな」
そりゃこの世界に順応するだろうしな
5年後、10年後、俺も変わるのだろう
「でも今はまだ無理だよ」
「だけどリディアは諦めないみたいだな」
「5年後には他に好きな人ができるに決まってるよ」
5年後だと俺は35だから尚更だ
「でもさ、あれだけ慕ってくれてるんだ
少しは真剣に考えてやれよ」
「それはわかってるけどさ」
「まあ私は誰が相手でもいいんだけどな
ケンタと一緒に幸せになってくれれば♪」
「そんな相手が見つかるかなあ」
「そりゃお前次第だ」
「厳しいねえ」
「頑張れよ♪」
ほんとにベンケイさんには感謝しかない
いつも優しさと厳しさを与えてくれる
悩みを聞いてくれる、励ましてくれる、怒ってくれる
一緒にバカなことしてバカ笑いしてくれる
最高で最強の相棒だよ
「ありがとうベンケイさん、気持ちが落ち着くよ
うん、リディアのことは真剣に考えるよ
でもすぐには応えられそうにないけどな」
「それでいいさ、ケンタのペースでやればいい」
お嬢様方が移動し始めたので俺たちも動く
ベンケイさんのおかげで心が晴れた
少しずつでいいからリディアに応えていこう
夕刻少し前に屋敷へ戻った
スーパーカブをしまって屋敷の中へ入ろうとしたら
「あ、そうだ、お前ら証明してやるから見てろ♪」
「証明? なんのですかお姉ちゃん」
「昨日、私が言ったことが事実だってことだよ」
アンナ、アオイくん、シシリー、リディアがザワつく
「ケンタ、ちょっと来い」
「ベンケイさん?」
呼ばれたので行ってみる
「ケンタ、とりあえず私を扉のところまで運んでくれ♪」
「「ベンケイさんっ!?」」
慌てるシシリーとリディア
「ベンケイさん、足でも痛いのか?」
「痛くないけど、運んでほしいだけだ♪」
よくわからん、でもそれぐらいなら
ヒョイ
俺はベンケイさんを抱えて扉のところまで運ぶ
「ケンタ殿、そんなあっさり!?」
「お兄さん、本当に躊躇なくやるとは」
「ケンタ様、まったく意識していませんね」
「ケンタさん、その抱き方の価値を理解して欲しい」
キミたちはなにを言っているんだ?
抱えて運んだだけだろう
「ベンケイさん、どういうこと?」
「わはは、面白れえ~♪」
昨日、俺のこの抱き方の話をしたそうだ
お姫様抱っこが俺には運びやすいだけだ
でもリディアたちにとっては憧れだったらしい
そんなん知るか!
「価値観の違いなだけじゃん」
「そうかも知れませんけど」
リディアがうな垂れる
「よし、もう一つ見せつけてやる♪」
「ベンケイさん、まだなにかするつもりですか!」
シシリーが珍しく声を荒げる
「ケンタ今度は背負え♪」
「いいけど?」
「「「「いいのっ!?」」」」
ベンケイさんを背負う
ベンケイさんが首に腕を回してしっかり掴まる
落ちたら危ないからな
お嬢様方がなにしてんのという感じで俺を見てる
そっちこそなんなの?
「お兄さん、なんで動けるんですか」
「そうですわ、それだけ密着していますのに」
「ケンタ殿、全然照れても恥ずかしがってもいません」
「背負ってるだけでなんで恥ずかしいんだよ」
「ベンケイ殿、嘘つきましたね」
「密着し過ぎて動けないって言ってたじゃないですか!」
アオイくんとリディアがベンケイさんに文句を言っている
密着? しっかり張り付いてないと落ちるだろ?
「いんや、嘘言ってねえぞ」
「でもケンタさん、平然としてますよ」
「んじゃリディアを背負ってやれよケンタ」
「・・・・・は? いや無理だよ? 駄目だよ?」
リディアがポカンとしている
「な、なんで私は無理なんですかケンタさん!」
「いや、だって、その、、、 当たるし、、、」
「え?」
「胸とか当たると動揺するんだよなケンタ♪」
「ちょ、ベンケイさん、そんなはっきりと!」
バラさないでよベンケイさん!
「待ってケンタさん、私が駄目なのはわかりました
じゃなぜベンケイさんは背負えるんですか?
ベンケイさんの、その、当たっていますし、、、」
んん? そういやそうかも?
「ベンケイさんが密着しても別に気にならないんだよね」
お嬢様方がすごくショックを受けた顔をしていらっしゃる
(そんな、ベンケイさんは私より胸があるのに)
(ケンタ様の基準が理解できません)
俺はベンケイさんを下ろす
「ケンタ様はベンケイさんを女性と思っていないと言うことですか?」
「なに言ってんの? ベンケイさん、女子でしょ」
「お兄さん、そこ理解してて胸を意識しないのがわかりません!」
アンナが指摘するが俺はちょっとカチンときた
「ベンケイさんは俺の相棒だ、そんな目で見るわけないだろうが!
男とか女とか関係ねえんだよ! 馬鹿にすんなっ!」
「う、ごめんなさい、、、」
しまった、つい怒鳴ってしまった
「すまんアンナ、でもそんな風に思わないでくれ」
「はい、、、」
(逆に考えれば私はそんな目で見てもらえているということですね♪)
なんかリディアが笑顔になってる
「落ち着けケンタ、お前らも」
「誰のせいだよ」
「わはは、私かー♪」
ベンケイさんが抱け背負えと言ったからこうなってるんでしょ
「よし、ラストは肩車だ♪」
「「ベンケイさんっ!」」「お姉ちゃんっ!」「ベンケイ殿っ!」
お嬢様方に全力で止められるベンケイさん
肩車ぐらい構わないんだけどな
(((( 肩車なんて頭を足で挟むじゃないですか!))))
ようやく場が落ち着いて夕食にありつけた、腹減った
夕食後、お風呂の女子会
「お前ら怒り過ぎ、焦り過ぎ、もっと余裕を持てよ」
元凶が諭す
「お姉ちゃんのせいでしょうが」
「ケンタ様の基準が本当に理解不能です」
「肩車を阻止できて本当によかっでござる」
「肩車なんてしたら太腿が、、、
さすがにケンタさんもそれは動揺するはず」
普通ならそうである
「しないだろうなケンタは
マジでそんな目で見ていないからな」
「ベンケイさんの方はどうなんですか
さすがに恥ずかしいでしょ」
「別に? 私もまったく気にしてないし」
少しは気にしろと4人は思った
風呂から上がり各々部屋へ戻る
精神的に疲れたようで全員早々に就寝した
翌朝、オシリペンペン街へ帰る支度をする
「シシリー、また来て下さいね」
「もちろんですわリディア、貴女も街へ来て下さいね」
「ええ、長期連休になったら(絶対)行きますね」
俺はスーパーカブを出す
荷台をタンデムシートに変更する
「ケンタ、私は馬車だから相乗りできねえ」
「そうなの? じゃ誰が」
「お兄さん独りですよ」
「ひでぇ」
いいやい、独り寂しく走ってやる
「ケンタさん♪」
「リディア」
ギュッ 手を握ってくる
「あれ、避けないんですね」
「ああ、避けるのはやめた」
真っ直ぐリディアを見て言う
「そ、そうなんですね」
「あ、でもアレは駄目だからな」
「アレ?」
「ええと、ほら、キスとか、、、」
照れてしまう
リディアも赤くなる
「も、もう、そんな風に言われたらできないじゃないですかっ!」
「だから、すんなっ!」
リディアが手を離す
「先日言ったように私は諦めません
絶対にケンタさんに好きになってもらいます♪」
「そうだな、5年経っても変わらなかったらいいぜ」
「え?」
「俺も真剣にリディアのことを考えるってことだよ」
「ケンタさん、、、」
ちょっと涙目になるリディア
泣くのは早いぞ、まだ受け止めていないんだから
頭を撫でてやる
「ひゃっ、ケンタさん?」
「ありがとな、リディア」
「ズルいです、、、」
「これまでの仕返しだ♪」
リディアが恥ずかしそうに離れる
「また会いに来て下さいねケンタさん
私も街へ遊びに行きます♪」
「おう、いつでも来い!」
色々あったが迷いはなくなった
そして俺たちは街へ向かって出発する
野営地で夕食、そしていつものように見張りをする
アンナ、アオイくん、ベンケイさん、俺の順だ
身体を持ち上げられて立たされる
「びっくりした!」
「交代だぜケンタ♪」
「なんちゅう起こし方するんだよ」
「揺すっても起きなかったからな」
「それはごめん」
もう陽が昇って少し明るい
みんなが起きてくるまでの見張りだ
「ケンタ様、おはようございます」
「おはようシシリー、早いね」
「少しよろしいですか」
「いいよ」
左隣に座ろうとしてやめて右隣に座るシシリー
アオイくんと同じことしてる
「なんで変えたの?」
「左側は左頬がありますから」
当たり前だろ、謎解きか?
「やはり鈍感さは健在ですね」
「なぜ貶されているんだ俺は」
座ったけど特に会話もない
「ケンタ様、私は可愛いですか?」
「唐突だな、シシリーは可愛いぞ」
「そうですか、ありがとうございます」
そう言って立ち上がるシシリー
「それではテントに戻ります」
「おう」
自分のテントへ戻って行った
なんだったんだ?
俺の見張り時間が終わる頃、みんなが起きてくる
朝食を食べて街へ再出発した
「アオイくんを乗せるのは初めてだね」
「はい」
アオイくんが相乗りしてくれた
「街に帰ったらなにします?」
「またのんびりしたり軽めの依頼かな」
「そうですね、ゆっくりしましょう」
遠目に街が見えてきた、もうすぐだ
帰って来たぜ、俺たちの街へ




