85 リディア・フレンダ 2
「うひょー、広いじゃん♪」
ベンケイさんは体も洗わず湯船に入ります
なんて大雑把な方なのでしょう
「これは泳がずにはいられないっ!」 バシャバシャ
「お姉ちゃん、恥ずかしいからやめて、、、」
アンナさんが困っています
本当にはしたないです、なんなのでしょうこの方は
見た目は可愛らしいのに女子としては駄目過ぎです
言動行動が雑で乱暴です
いえ、むしろ私にとっては好都合?
いくら仲が良くてもケンタさんは異性としては見ないでしょう
よし、恋敵には成り得ませんっ!
それにしてもやはり私より大人ですね
胸が私とシシリーよりわずかですが大きく形も良いです
私とシシリーは同じぐらい、アオイさんは敵ではありません
まあとにかく、今は身体をキレイにして、夕食をしっかりいただき
しっかり眠って、明日の戦いに備えましょう
明日は私の恋の決戦日ですから!
風呂から上がり夕食をいただく
上座にフレンダ男爵
上座から見て左側、上座に近い順からシシリー、アンナ、アオイくん
対面、上座に近い順から俺、リディア、ベンケイさん
俺の正面がシシリーで右隣がリディア
俺が上座に近くていいのか?
「リディア、俺が真ん中に座るよ」
「いいえ、その席にお座り下さいませケンタさん」
「でも俺が上座の近くはおかしくないか?」
「構わないよケンタさん」
「そうで御座いますケンタ様」
フレンダ男爵とパトさんまで問題ないと言う
まあ屋敷の主人が許可しているのだからいいか
俺はその席に座る
(真ん中だと反対側にも女性が座ってしまいます、阻止します!)
世間話をしながら食事が進んでいく
「ケンタさん、お口の端にソースが」 拭き拭き
「ちょ、自分でやるよ!?」
恥ずかしいからやめてほしい
ベンケイさん、ニヤニヤ見ないで!
(子供っぽいところも可愛くて好き♡)
食事を終えて各自の部屋へ行く
部屋でくつろいでいると扉をノックされる
「入ってよろしいですか?」
「リディア? どうぞー」
リディアが入ってくる
別に二人っきりではないので問題ない
ポチャ、サスケ、ヨシツネもいるからな
あれ? この部屋ガイド精霊多過ぎ?
「どうした、明日の予定でも言いに来たのか?」
「はい♪」
別に当日どこへ行っても構わない
俺たちは付いて行って護衛するだけだから
「わざわざ言わなくてもいいよ?」
「いえ、大事なことなので伝えに来ました」
なにか特別な場所にでも行くのかな?
「明日は私を護衛して一緒に出掛けて下さいね♪」
「ん? おう、護衛のために来ているんだからな」
言い回しが変だぞリディア
「約束ですからねケンタさん」
「ああ、わかった約束だ?」
約束? 約束もなにも依頼を受けているんだから護衛するぞ?
「ふふ、よかった♪」
まあ機嫌が良さそうなのでいいか
「・・・・・それで、なにか感想はありませんか?」 ドキドキ
「感想? なんの?」
リディアが右手を顔に当ててガックリ俯く
「ど、どうした!? 大丈夫か?」
「い、いえ、大丈夫です、、、」
顔色は悪くないし、軽いめまいとかかな?
「おやすみなさいケンタさん、、、」
「おう、おやすみ、ゆっくり休めよ」
フラフラと部屋を出るリディア
ほんとに大丈夫か?
ケンタさんの部屋を出てフラフラと自室へ戻ります
ケンタさんが鈍感なのはわかっていました
それでも、少しぐらいは意識して下さいよケンタさん!
私は少し膝上丈の薄いピンクのノースリーブワンピース姿
髪をアップしてうなじをアピール
これで、なぜ、まったく、意識しないんですかーーーっ!
私に魅力が足りないと言われているようで悔しいです
こうなったら絶対明日は意識させてあげます!
部屋に入ります
「おかえりなさい、どうでした?」
「シシリー、私の様子でわかるでしょ」
「・・・・・そうね、わかりましたわ」
二人して大きくため息をつきます
「鈍感にも程がありますわね」
「そうです、乙女心がわかっていません!」
「ではもう諦めるのかしら?」
「いいえ、そんなところも好きです!」
「盲目は駄目と言われたでしょう?」
「ケンタさんなら良いのです!」
(見事に暴走していますわね、面白いですわ)
「それで明日の約束は取り付けたのですか?」
「それはしっかり取り付けました♪」
「そう、では頑張ってねリディア」
「シシリー、抜け駆けばっかりしてごめんなさい」
「構いませんよ、私は競り合う気はありませんから
最終的に私の横にケンタ様がいれば良いのですから」
くっ、やっぱりシシリーが一番の強敵かも
明日は本当に頑張ろう、、、
翌朝、シシリーとリディアが出てくるのを門前で待つ
「ケンタ、まあなんだ、今日は頑張れよ」
「ベンケイさん、どうした?」
ベンケイさんも護衛なんだから一緒に頑張ろうぜじゃないのか?
「お兄さん、節度は守って下さいね」
「アンナ、なにを言っているんだ?」
節度? お出掛けの邪魔するなってこと?
護衛なんだから見守るだけだぞ
「ケンタ殿」
「アオイくんもなにかあるの?」
「・・・・・なんでもないでござる」
なんか動揺してるっぽいけどどうしたんだ?
そして元気がない
「ケンタ様、こちらを参考になさって下さい」
「パトさん、これは?」
パトさんがメモ帳を渡してくれる
中を見ると王都の観光スポットの情報が書かれていた
「俺じゃなくてリディアに必要なメモじゃないのか?」
「いえ、ケンタ様に必要なメモでございます」
わけがわからないよパトさん
「お待たせしましたケンタさん♪」
フリルの付いたほんのり桜色のブラウス
膝丈の薄いグレーのフレアスカート
腰には金のチェーンベルト
髪の後ろに青のリボンバレッタ
足元はクリーム色のパンプス
右腕に俺が贈った銀のブレスレット
同じく青い魔石のネックレスが胸元で輝いている
リディアが気合いを入れてお洒落している
お洒落に疎い俺でもわかるほどだ
やはり特別な場所にでも行くのだろう
しっかり護衛して楽しむのをサポートしよう
「ふふ、どうですかケンタさん、この装い似合いますか?」
「似合ってるよ、少し大人っぽいね、キレイだ」
「・・・・・・・・・・ありがとうございます」
俺に背を向けてスタスタとパトさんのところへ行くリディア
どうしたんだ?
「な、天然だろ?」「呪われろ」「転べばいいでござる」
「なんで!?」
ベンケイさん、アンナ、アオイくん、なんなの?
「そろそろ行きましょう」
シシリーが馬車に乗り込む
「呪われろ」
アンナが呪詛吐きながら馬車に乗り込む
ことあるごとに呪うな!
「ケンタ殿の草履取り」
捨て台詞を吐いて馬車に乗り込むアオイくん
わけがわからないよ?
「ほんと頑張れよ♪」
ニヤニヤしながら馬車に乗り込むベンケイさん
今日はスーパーカブに相乗りしないのか?
しょうがない、一人寂しくスーパーカブで移動しよう
スーパーカブを出して準備する
ガチャン
馬車の扉が閉まる
「おい、リディアがまだ乗ってないぞ」
「当たり前です、リディアと私は別行動ですから」
二人で遊びに行くんじゃないのか?
俺以外の護衛が全員馬車に乗っている
じゃリディアは俺一人で護衛しろってことか?
そりゃ守る自信はあるけどさ
「お待たせしてすみませんケンタさん」
パトさんのところからリディアが戻ってきた
「えっと、みんなあっちの馬車だけどリディアはどうするんだ?」
「ケンタさんに乗せて行っていただきます♪」
「まあ構わないけど」
「ありがとうございます♪」
荷台をタンデムシートに換える
ちょこんと座るリディア
「それでは私たちは行きますわね」
「またねシシリー♪」
シシリーたちの馬車が走り出す
「えっとリディアはどこへ行くんだ?」
行き先を聞かないとさすがに出発できない
「ケンタさんが連れて行って下さい」
「うん、だから行き先を教えてよ」
「ですからデートコースはケンタさんにお任せします♡」
「・・・・・・・・・・ん? 今なんて言った?」
「デートコースです♪」
思考停止中、しばらくお待ち下さい、、、、、
「デ、デデ、デートーッ!?」
「はい♪ デートです♡」
なにを言っているんだいお嬢さん?
あ、さっきのみんなの反応と態度!
あいつら知っていたな!
「待てリディア、なぜデートなんだ?」
「昨夜約束しましたでしょう」
「それは護衛するってことだろう」
「一緒に出掛けて下さいねって言いましたよ私」
たしかに言ってた、理解した
あの言い回しはこういうことだったのか
「約束、破るのですか?」
少し悲しそうな顔で俺を見上げる
くっそ、可愛いじゃねえか!
覚えているだろうか、俺が妹萌えだということを
こんなの抗えるわけがない
「わかった、デートな、、、」
「はい、デートです♡」
鈍感な俺でもさすがにわかる
リディアは俺に好意を寄せてくれている
だけどそれは大好きなお兄ちゃん的な感情だろう
仕方がない、お兄ちゃんとしてデートしてやろう
「パトさんのメモ、このためだったんだな」
とするとパトさんもグルだ
俺は全員にトラップを仕掛けられたらしい
「ケンタさん、そろそろ行きませんか?」
「お、おう、でもどこに行こう」
パラパラとメモを見る
王都はゲーム時代に何度も来ている
だから大まかだがなにがあるかは把握している
でもデートで回る場所って言われると悩む
いつもギルドとか宿屋とか買い食いとかしかしていなかった
観光スポットも少しはわかるがデートとなると難しい
俺たちが遊んでた場所ってデート向きじゃないし
「あの、私、ケンタさんを困らせていますか?」
不安そうに聞いてくるリディア
ああもう、楽しく遊ばせてやるつもりだったのに
「あのさ、デートっぽくない場所でも勘弁してくれるか?」
「ケンタさんと一緒ならどんなとこでも構いません♪」
よくできた妹だ
「よし、それじゃあ出発するぞ」
「はい♪」
「行ってらっしゃいませ、お気を付けて」
パトさんに見送られスーパーカブは走り出す
俺とリディアの兄妹デートの始まりだ!
次回、デート、そして・・・




