82 ベンケイ対シリウス
ベンケイさんとシリウス様の対戦が決まった
今回はベルさんの邪魔も入らない
シシリーも渋々許可してくれた
「ですが他の方々のご迷惑になります
野営地から離れたところでお願いしますね」
「それじゃ移動しようかシリウス様」
「はい、行きましょう♪」
「それじゃ俺が立ち会いするよ」
「ケンタ様、私も連れて行って下さい」
まあ構わないか
ベンケイさんとシリウス様は馬に乗って移動する
俺とシシリーはスーパーカブで移動する
アンナとアオイくんは馬車や荷物があるので待機
野営地から少し離れた林を通り過ぎて拓けた場所に来る
「ルールは祭りと同じでいいよな?」
「もちろん♪」
シリウス様は格闘戦は弱く、魔法が得意らしい
逆にベンケイさんは格闘戦オンリーだ
じつは闘将を職業にしていると魔法が使えない
魔力は全て気力に変換される
ベンケイさんは格闘、シリウス様は魔法
対照的な二人の戦いである
「ケンタくん、合図を頼むよ♪」
俺が合図を出すことになった、まあ俺しかいないけど
シシリーにやらせるわけにはいかないからな
「そんじゃ、始めっ!」
合図と同時にシリウス様が消える
ベンケイさんの背後に一瞬で移動した
「ウインドブラスト!」
ドバンッ!
風の塊がベンケイさんの背に当たり爆発する
「うおっ!?」
転倒するがすぐに起き上がるベンケイさん
「やっぱりこの程度では仕留められませんよね」
「びっくりした、いつの間に後ろに来たのかわかんなかった」
アオイくんやアンナのように走ったわけではない
それだとベンケイさんは相手がどこに回り込むか瞬時に判断できる
しかしシリウス様の場合は走って移動したわけではない
転移系魔法<瞬間移動>
さすがにベンケイさんでもどこに移動されるか判断できない
足さばきも見えないし、動く音もないから
「こりゃ厄介だな」
「でもまだ余裕そうだねベンケイくん」
転移系魔法は一部を除いてどの職業でも覚えられる
但し、修得難易度が非常に高い
シリウス様は魔法が得意と聞いていたがここまでとは思ってなかった
「シリウス様こそ一発撃っただけで追撃しないのは余裕だからか?」
「いいや私の魔法が通用するか試しただけだからさ」
「そうかい、でも小手調べなんかしてたら勝機を逃すぜシリウス様」
「ご忠告ありがとう♪ あとシリウスって呼び捨てでいいよベンケイ」
「貴族らしくなくて面白いねシリウス♪」
ベンケイさんの熱血少年漫画スイッチが入ったな
ついにシリウス様のことも呼び捨てになった
「ごめんなシシリー、ああいう人なんだよ」
「こちらこそ叔父様がすみません」
シシリーがしみじみ言う
苦労してるなシシリー
「では行きますよ♪」
連続瞬間移動で四方八方に移動するシリウス様
「ファイアボール」「アイスランス」「ウインドカッター」
「アースバレット」「サンダーアロー」「ストーンブラスト」
移動しながら攻撃魔法を次々と撃ちまくる
使える属性が多いし魔力量も多いようだ
連続瞬間移動に連続魔法攻撃なんて魔力量が多くないと無理だ
かなりの魔力消費量のはずだから
火雷神で火属性と雷属性は吸収できる、ができない
どこから撃ち込まれているかわからないから火雷神を向けられない
また他の魔法も撃ち込まれているのでそれらだけに構っていられない
「これでも倒れていないかもね」
様々な攻撃魔法により土煙や水蒸気でベンケイさんの姿が見えない
だが土煙や水蒸気が吹き飛ぶ
「危なかったな今のは」
少しダメージを受けているが立っている
身体がほんのり輝いていた
<気合い>で凌いだらしい
「すごいね君は、ベンケイ!」
「あんたこそだ、シリウス!」
「今度はこっちの番だ」
「それは楽しみだ♪」
ベンケイさんは固有スキルを発動する
「サンドバッグ!」
ベンケイさんの固有スキル<サンドバッグ>
全ての攻撃が10回まではクリーンヒットする
避けようとしても相手は吸い寄せられるように攻撃を受ける
同一の相手への攻撃は一撃ごとに攻撃力が増幅する
貫通力と攻撃力が上昇していて防御は可能だがダメージは大きい
1日に3回まで使用可能(繰り越しなし)
すなわち連続して30発の攻撃をクリーンヒットできる
俺のように捌いたりも可能だが連続攻撃だと捌き切れない
しかも同一対象には一発ごとにダメージが増幅する
タイマン勝負だとかなり有効な固有スキルだ
「吸い寄せられる攻撃だったね」
シリウス様は連続瞬間移動する
「転移する相手には通用するのかい?」
ベンケイさんが薙刀を投げる
もちろんシリウス様はあちこち移動している
ズゴンッ! 「うぐっ!」
シリウス様の胸部に薙刀が当たる
瞬間移動している相手にも有効なの?
「すごいねそのスキル、いたた」
「移動して出たところで引っ張られたろ?」
なるほど、移動後に吸い寄せられたってことか
「吸い寄せられているとき転移しようとしたけどできなかったよ」
「吸い寄せられているときは転移系を封じれるからな」
すげーなサンドバッグ
「それじゃまだまだ行くぜ!」
薙刀で突く
シリウス様が攻撃に吸い寄せられる
「多重結界!」
二重、四重、、、十枚の結界を自身の前方に張る
「結界を破れるかも知れないがこの枚数ならどうだい?」
ズガンッ! 「あいたっ!」
全ての結界を突き破りシリウス様の左肩に当たる
突き破ると言うかすり抜けていた
「いたた、なるほど、結界を無視するんだねソレ」
「そういうこと♪」
「それなら攻撃自体させなければいいかな♪」
「そんなん無理だろ?」
「バインド!」
「んげっ!?」
捕縛魔法<バインド>
魔法の鎖で拘束されるベンケイさん
「悪いけどこれで一方的に攻撃させてもらうよ」
「そうはいくかよっ! <気合い>っ!」
バキンッ!
バインドの拘束を消し去る
「うっわ、それズルい!」
「これも私の力だからズルくねーよ」
<気合い>は魔法や攻撃を弾くことができる
俺のグレートトルネードも破壊されたしな
「悪いがこっちが一方的に行くぜ!」
薙刀を投げる、シリウス様に当たる
シリウス様は魔法はすごいが通常戦闘はダメダメである
だから俺みたいに捌いたりできないのでクリーンヒットする
残り7発の攻撃がシリウス様を襲う
もちろんすべてクリーンヒット
「いや、そっちのがズルいだろうシリウス」
「はっはっは、魔法は私の力だからズルくないよベンケイ♪」
シリウス様は平然と無傷で立っていた
どうやら一発喰らうごとにヒールを掛けていたようだ
「魔法使いが魔法を使うのはズルくないでしょ?」
「うぐぐ、たしかにそうだけどさ!」
回復魔法を使うのはズルではない
ていうかヒールを使う発想が俺にはなかった
シリウス様は魔法での戦い方が巧いな
俺も見習おう、性格は見習いたくないが
「サンドバッグ!」
本日二回目のサンドバッグ
でもまたヒールでダメージ回避されたら意味ないぞ
薙刀を置いて殴りに行くベンケイさん
「え、ちょ、それは!」
ベンケイさんの急所撃ち十連打
鳩尾、顔面ど真ん中、首、顎などを殴りまくる
格闘戦が不得手なシリウス様は捌くことができない
サンドバッグの能力で避けられない
連打でヒールを掛ける暇がない
まさにサンドバッグ状態!
ラストの全力アッパーで空高く飛ばされるシリウス様
時間を見たら5分過ぎていた
「地面に落ちたら終わりだ、ベンケイさんの勝ちだな」
5分後は上半身のどこかが地面に着いたら敗けである
シリウス様が落下する
地面に、着かないで、浮いたまま止まる
「いたー、滅茶苦茶痛いよベンケイ」
「あちゃー、その手があったかー」
浮いたまま身体を縦に戻すシリウス様
ついでにヒールを掛けまくってらっしゃる
そして着地する
フライで浮かせていたのだ
「これも私の魔法だからズルくないよ?」
「わかってるよ、まったく厄介だな魔法って」
サンドバッグはあと一回しか使えない
同じやり方をしても駄目だろう
<気合い>は体力を消耗する
シリウス様にはヒールがある
まだ魔力もかなりありそうだ
ベンケイさんが敗けるのか?
「サンドバッグ!」
「何度やっても同じだよ?」
ベンケイさんは初撃から全力アッパーを繰り出す
しかも<気合い>を乗せて
ガゴンッ! 「ぐぶっ!」
シリウス様が宙に飛ばされ落下するがフライで止まる
「だから同じだ、と、ええっ!?」
横向き仰向けで浮いてるシリウス様
その上空からベンケイさんが落ちてくる
アッパーで飛ばしたあと、ベンケイさんは跳び上がっていた
「喰らえぇっ! 九連気合い突きっ!!」
ズガガガガガガガガガッッッ!!!
「ぶげふぅっ!」
落下の勢いと気合いを込めた全力の必中突き九連打
シリウス様の身体に叩き込まれる
ズドォォンッ!
シリウス様の身体が地面へ押し込まれる
着地するベンケイさん
「・・・・・ひ ・・・・・ひーるぅ」
弱々しくヒールを掛けるシリウス様
「わたしの勝ちだっ! ふんがーっ!」
両手を上げて叫ぶベンケイさん
「ああ、ベンケイさんの勝ちだっ!」
俺はベンケイさんの勝利を宣言する
「お、叔父様っ!」
シシリーがさすがに慌ててシリウス様へ駆け寄る
「だ、大丈夫、ヒールで回復したから」
「ですが、、、」
さすがにヒールだけでは心許無いのか回復薬も飲むシリウス様
「ふひぃ、さすがに疲れたぁ、、、」
ペタンと座り込むベンケイさん
「いやあ強いねベンケイ、敗けた敗けた、はっはっは♪」
軽くて掴みどころがない人だけどさっぱりした人だ
「まあさすがに私も焦ったけどね、へへ♪」
俺もヒヤヒヤしたけどな
俺たちは少し休憩して野営地へ戻った




