8 アシュラ・バスター 前編
[サイショノ村ラストクエスト/村長からの依頼]
レンシュウ草原に棲み付いた魔物を討伐せよ!
ボスエリアまであと10メートルまで来た
「ガバスさん、みんな、ちょっと待ってくれ」
みんなが足を止めてくれる
「どうしたケンタ」
「俺は探索が使える」
「へえ、魔導士ってすごいな」
「ずっと探索を掛けながら来ていたんだが
あと10メートル進んだところに魔物がいる」
「だが姿が見えないぞ」
「10メートル先なら見えるはずですが?」
ガバスさんとチケットさんが確認する
「地中に隠れているんですよ」
「なるほど、それなら見えないわけだ」
「なので戦闘準備をここでしておきましょう」
「わかった」
武器を手に持ちアイテムの確認も済ます
地中からいきなり現れてもいいように慎重に近付く俺たち
ボスエリアに入った
地面が揺れてボスが現れる
「うおっ、本当に出やがった!」
ミッドが慌てながらも身構える
「何だあの姿は、禍々しいな」
ガバスさんの言う通りではあるがFPOプレイヤーたちには受けていた
一般的な20代男性の身体を10倍ぐらいに巨大化した身体
筋骨隆々に仕上がったボディと三つの顔に六つの腕を持つ魔物
それがFPO最初のボス
その名も、アシュラ・バスター!
FPOプレイヤーたちからはバカ受けだった
しかし初ボスなのに仕様が異常だった
こいつを倒さないと先へ進めないのに倒せない
序盤で出すかこんなの! とあちこちで大ブーイング
少しして攻略組が攻略法を拡散した
みんな倒せるようになって収まった
わかってしまえば実は大した敵ではなかったのだ
しかし何も知らない状態では強敵である
ミッドたちは苦戦するだろう
でも安心しろ、俺は攻略法を知っているからな
「ファイアボールが来るぞガバスさん!」
「うぬ!」
左腕上段がファイアボールを放ってくる
ガバスさんが盾で防ぐ
「すごいな、何でわかったケンタ」
「この魔物は以前見たことがあるんだよ」
そういうことにしておく
「なるほど、攻撃手段を知っているのだな」
「ああ、だからみんなも俺の指示に従ってくれると助かる」
「わかりました」
「わかったぜケンタ」
「わかりましたケンタさん」
「おっけー」
よし、俺の指示を聞いてくれるようだから勝てる!
「このあと左腕中段、左腕下段、そして右腕も上段から順に攻撃が来る
それをすべてガバスさんが防いでくれ」
「おいおい、俺一人で大丈夫なのか?」
「大丈夫だ、攻撃はボール系を各一発ずつだからな
ただ左右下段だけは要注意だ」
左腕上段からファイアボール、アイスボール、フラッシュボール
右腕上段からアースボール、サンダーボール、ダークボール
アシュラの腕はそれぞれ違う属性の魔法攻撃を扱う
左腕の上段が火、中段が水、下段が光
右腕の上段が土、中段が雷、下段が闇
チュートリアルのボスで六属性使いは酷過ぎる
チュートリアルだからプレイヤーは全員レベル1
攻略情報なしで勝てるわけがない
FPOの仕様が如何にクソなのかよくわかるだろう
たくさんのプレイヤーの犠牲の上に攻略法が確立されたのだ
「それぞれ威力は大したことはないから盾で充分防げる」
「たしかにファイアボールを受けたが大したことはなかったな、っと!」
アイスボールを防ぐガバスさん
「たしかにこいつも大した威力はないな」
次にフラッシュボールが来る
「そのまま防いでいいけど、みんな、目を瞑れ!」
盾にフラッシュボールが当たる
眩い光が拡散する
「んぎゃっ! 目がっ!」
ミッドが目を瞑り損ねてのた打ち回る
<状態異常回復>で治してやる
「あれ、治った?」
フラッシュボールは受け止めても光が爆散するのだ
「レフティ、結界は使えるか?」
「え、はい、小規模でしたら」
「ならサンダーボールが来たらガバスさんの盾の前に張ってくれ」
「はい」
アースボールをガバスさんが防ぐ
続いてサンダーボールが来る
「今だ!」「はい!」
ガバスさんの盾の前に結界が張られる
サンダーボールがぶつかり雷が霧散する
「あれぐらいなら私の盾だけで充分なのでは?」
「いや盾から流れてガバスさんに雷撃が当たる」
「そいつは嫌だな」
「次のダークボールも厄介なので結界はそのままにしてくれ」
「はい」
ダークボールは盾をすり抜けてダイレクトアタックするからな
結界はすり抜けないのでこのままだ
「ダークボールが撃ち込まれたらすぐに反撃だ
ミッドは左腕、ライツは右腕のどれでもいいから落としてくれ」
「よし、ぶった切ってやるぜ!」
「わたしは拳だから千切ればいいのかな」
「やり方は任せる」
ダークボールが放たれる
ライツとミッドが同時に左右へ散って腕を落としに行く
「気付いたんだが腕の攻撃は間隔があるな」
ダークボールが結界にぶつかるのを見ながらガバスさんが呟く
「初見で気付くとはすごいねガバスさん」
ガバスさんの言う通り一発撃ったら次の腕の攻撃まで約5秒ある
「とりゃあっ!」 ミッドが左腕上段を斬り落とす
「せいっ!」 ライツが右腕上段を拳でぶち抜き千切る
二人とも思ったより強かったんだな
じゃヒットアンドアウェイで戻して次のパターンだ
「すぐに戻って―――――」
戻れと言おうとしたが
ドバンッ!
「うわあっ!」
斬られた左腕上段が爆発して炎が飛び散る
ミッドが炎に包まれて吹き飛ばされる
ズガンッ!
「え、なにっ!?」
千切れた右腕上段が爆発して無数の石つぶてになる
ライツが至近距離から石つぶてを喰らって吹き飛ばされる
二人ともこっちの後ろまで飛ばされて戻って来た
「ううぅっ、、、」「い、いだ、、、」
二人とも至近距離から喰らっているから大ダメージだ
レフティは結界を張っているのでチケットさんが回復魔法を掛ける
「ケンタ、今のは何だ!?」
「いや、俺もあんなのあるなんて知らなかった!」
落ちた腕が最後っ屁かますなんて想定外だ!
俺の知らない攻撃だ、FPOでアシュラにこんなの無かったぞ
どうなっているんだ?
そのときアシュラの第一の顔が光る
やばい、腕の攻撃が終わって30秒したら次の顔に変わる
このとき全体攻撃を放つのだ
フェイスフラッシュ!
普段ならそのネーミングに笑ってツッコんでいただろう
今の状況ではシャレにならない!
<ダークエリアシールド>!!
俺を中心にして指定範囲をすべて覆う闇属性のシールド
これだとアシュラの光属性の全体攻撃を相殺できる
ゲームのときはセーフティーゾーンに逃げるしか手はなかった
レベル1プレイヤーが使える魔法じゃないからな
って、今の俺レベル1なのに何で使えてるんだ?
いや今はそんなことはどうでもいい、この場を何とかしないと
ミッドとライツは起き上がれないようだが回復が効いて生きている
「ケンタ、お前こんなすごい魔法が使えるのか?
だったら攻撃魔法もすごいのを使えるんだろ」
「一応、、、」
「ならばなぜ指示だけで動かなかったんだ!」
ガバスさんが怒っている
「俺が動かなくても倒せると思っていたんだよ!」
「それは信頼か? ただの奢りか?」
「う、、、」
何だよ、俺が悪いのかよ! くそっ!
アシュラの全体攻撃とシールドが相殺されて共に消える
アシュラは第二の顔になって左右の腕が復活していた
これもゲームと違う
顔が変化しても落とした腕は復活しなかった
「ガバス、ケンタさんを責めるな
ケンタさんの指示が無ければ腕の攻撃に対処出来なかったんですよ」
チケットさんが庇ってくれる
「、、、そうだな、すまんケンタ、動揺して酷いことを言った」
「いえ、ガバスさんの言ったことは間違っていないから
俺の見通しが甘かったことは事実です
そのせいでミッドとライツが負傷しました」
俺も責められて腐ってしまっていた、反省だ
そしてアシュラの腕の攻撃が再び始まる
ようやくボス戦です、ボスの名前はアシュラ・バスター!
※アイスボール(氷玉)、氷系も本作では水属性扱いです




