73 シズカ対ケンタ
アンナは強かったがシズカさんの勝利
アンナを上手く混乱させると言う作戦勝ちだ
いよいよ俺の番だが勝てる気がしない
これまでの戦いから策を練るが勝利への糸口が見つからない
仕方がないのでやれることを片っ端からやっていこうと思う
当たって砕けろだ!
ベルさんとシズカさんがなにか話している
ベルさんは疲れているようだが安堵の表情を浮かべる
シズカさんはいつもどおりの様子だ
アンナがこっちに来ないで観戦者たちの方へ向かう
歩きじゃない、ハイスピードで向かっている
バシンッ! バシンッ! バシンッ!
次々と平手打ちを喰らう観戦者たち
なにしてんの!?
逃げようとするがアンナのスピードからは逃げられない
地獄絵図が繰り広げられていく
しばかれてない者もいるから標的は決まっているのだろう
しばき終わって俺のところに来る
「なにしてんだよアンナ」
「制裁です」
悪い予感がするのう
「お兄さん、言い残すことはありますか?」 ニッコリ
制裁、おそらくアレに対してだな
仕方がない、大人しく受けるとしよう
「ナイスホワイト!」
満面の笑顔でサムズアップ!
「地獄へ落ちろおぉーーーっ!!」
ドベギャッ!
ハードニングで硬質化させた拳
身体強化最大による物理攻撃力
まさに必殺の一撃が俺の顔面に撃ち込められる
「ぼげりゃっ!」
ブッ飛ばされて転がり屍になる俺
俺、これから戦う予定なんですけど?
アオイくんが冷ややかな目で回復薬を飲ませてくれる
みんなヒドイ、泣くぞ?
「なんで俺だけグーパンなんだよ」
「八つ当たりです!」
「八つ当たりかよ!」
シズカさんが中央に立つ
そろそろ時間か、俺も行かないと
「突然で悪いがこの一戦で祭りを閉幕する
まあ元々一週間ぐらいと決めていたからな
都合が合えばこの訓練場で挑戦は受けるから許してくれ
本当にすまない!」
シズカさんはみんなに頭を下げる
でも誰も文句は言わない
むしろ拍手が鳴り響いた
「みんな、ありがとう!」
ということは俺が祭り最後の挑戦者ってことか?
無様な敗け方したらラストバトルにケチがつく
責任重大じゃないか俺!
しょぼい戦いになったらブーイングの嵐になっちまう
あいつしょぼい奴だぜとかいい笑い者にされちまう
なんで俺で終わりにするんだよ!
「おーいケンタ、早く来いよ」
シズカさんは悪くないけど俺をラストにしないで欲しかった
トボトボと中央に行く
「どしたん? 体調悪いのか?」
「いや、大丈夫」
「ならいいけど」
仕方がない、やれるだけのことはやろう
戦う前から疲れたよ
ふと、ベルさんを見ると笑顔だった
さっきまで疲れていたのにどうしたんだ?
「ベルさん、なにか良いことでもあったのか?」
「これで祭りが終わるから嬉しいんです♪」
ベルさんぶっちゃけた
よっぽど辛かったんだね
「始める前に伝えることがある!」
シズカさんが声高らかに話し出す
「ルールを変更する!」
最後にルール変更?
「5分の制限はなしだ! 時間無制限だ!」
まあ瞬殺されるかも知れないから時間はいいか
「戦闘不能か降参や敗けを認めたら終了だ!」
まあ瞬殺されるかも知れないから問題ないな
「徹底的にやり合おうぜケンタ!」
「お、おう」
「手抜くなよ?」
「抜いたら秒で俺が死ぬ」
「なんだよ弱気だな、もっと自信持てよ」
「やれるだけやるさ」
「ケンタはやればデキる子なんだからさ、頑張れよ♪」
「そりゃどーも」
ん? なにか思い出しかけたがよく思い出せない
ま、いいか
「二人とも準備はいいですか?」
「いいよー♪」
「いいですよ」
ベルさんが俺たちから少し離れて
「それでは、始めて下さい!」
戦いのゴングが鳴った
シズカさんが念を込めるように薙刀を構える
俺は距離を取る
吸い込まれるように攻撃がヒットする固有スキルかな?
だが一定以上の距離が離れていたらどうだろう
薙刀を投げてきた
吸い込まれる感じはしない
固有スキルではないようだ
避けるか? 捌くか?
結界は駄目だ
アンナの結界を突き破ったんだから俺の結界では防げない
俺の結界は小規模範囲で強度が弱い
避けてみる
薙刀は通り過ぎていく、目で行く先を追ってみる
消えた、そしてシズカさんの手に戻っている
なるほど、自在に手元へ戻せるようだ
FPOにはそういう武器がいくつかあるから納得だ
捌いても掴んでもシズカさんの元に戻るから奪えない
もう一つ確認してみるか
「サンダーボール」
雷球を三発放つ、薙刀の刃先に吸収される
アンナのときと同じだ、返されてくる
結界で防ぐ、このぐらいは俺の結界でも防げる
気になっているのはそれだけじゃない
「ファイアボール」
炎の玉を三発放つ、薙刀の刃先に吸収されて返される
同じく結界で防ぐ
「アイスボール」
氷の玉を三発放つ、薙刀で捌かれる
吸い込まず捌いた、俺の推測どおりだ
だがたまたま捌いただけかも知れない
だからもう一手確かめてみる
間合いを一気に詰めて銀の短剣で斬りに行く
「やっと接近戦に来たか!」
「またすぐに離れるよ!」
ガキィン!
銀の短剣を薙刀で受けるシズカさん
「お、銀の短剣か?」
「薙刀消しますよ、決壊死!」
消えない、推測が大当たりだ
一旦離れる
「残念だったね♪」
「いや、大当たりだ」
あの薙刀は普通の薙刀ではない
「それ、火雷神という神レア武器だよね」
神レア武器、FPOのガチャで最高ランクのレア武器だ
引き当てる確率が10億分の1と言うクソ仕様なレア武器
まさに神の力でも借りなければ当たるわけがない代物
火雷神、破壊不可能で譲渡不可
火属性と雷属性の魔法は全て刃先に吸収できて返すことができる
それ以外の属性魔法は吸収できないが弾くことはできる
破壊不可能だから盾代わりにもなるしね
「さすがケンタ、そのとおりだよ♪」
楽しそうだなシズカさん
「それじゃ、こっちからも攻撃するぜ♪」(ボソボソ)
聞き取れなかったがなにか呟いた
あの吸い寄せられる固有スキルだろう
間合いを詰めて薙刀の柄で突いてくる
まだ離れているがお構いなしだ
身体が勝手に薙刀の間合いに向かって行く
たしかに吸い寄せられている
だが
バシッ!
右手で柄を弾いて攻撃を防ぐ
「おっと、もう見切られたか」
「この手のスキルならいくつか対戦経験があるからね」
吸い寄せられているからと言って防げないわけではない
別に身体を操られてもいないし自由に動けないわけではない
間合いに引き寄せられているだけで手足は動かせる
躱すことはできないが捌くことは可能だ
初見だと吸い寄せられたことによって思考が混乱する
だから冷静に対処できなくなり攻撃を喰らう
「だけどこれならどうだ?」
連続で突いてくる
バシッ! バシッ! ゴスッ! ドスッ! ベシッ!
二発は防げたが三発喰らう
「たしかに、いてて、連打は全部防げないな」
心なしか喰らうごとにダメージが大きくなっている
やっぱりこのスキルはアレかな
「休んでる暇はないぞ!」
また連続で突いてくる、四発
考え事してたから四発全部喰らう
一気にシズカさんから離れる
「いたた、やっぱもらうダメージが一撃ごとに大きくなってる」
薙刀を地面に突き刺すシズカさん
「そんじゃあ次は殴り飛ばそうかな♪」(ボソボソ)
タフなストックさんでさえ倒した拳、受けたくねえ!
それより今また呟いた?
「フライ」
俺は上空へ逃げる
「無駄だよ♪」
拳を放つ
空から引きずり降ろされ拳にぶつかる
ボゴォッ!
「ぐはっ!」
「空に逃げても攻撃に引き寄せられるだろ♪」
考える暇すらない
なら作ればいい!
「グレートトルネード!」
巨大竜巻にシズカさんを巻き込み閉じ込める
固有スキルにも色々ある
常時発動、ほっといてもずっと発動しっ放し
条件発動、条件に当てはまっていると発動する
任意発動、発動したいときに任意で発動させる
シズカさんは呟いて発動させてるから任意発動だ
だが一度発動させたら解除するまでは再発動させなくていいはず
だけど再度呟いていた
だとすると制限型の任意発動だ
制限型、一定の回数や時間などが決められているタイプ
例えば3分しか使えないとか一度の使用可能回数が3回とか
攻撃に引き寄せられる回数かな?
再度呟くまでの攻撃回数、、、 10回だったな
10回、引き寄せられる、ダメージが増幅
これらの条件から導き出される答え
なるほど、わかったよシズカさん
あのセリフも思い出したよ
まったく、すぐに思い出せないなんてやっぱ駄目だな俺は
「うおりゃあっ!」
ドバァンッ!
竜巻が爆散して四方八方に突風が起こる
シズカさんが竜巻を破壊した、すげえなアンタ
「今のは良い攻撃だったぜケンタ♪」
「それを破壊した人に言われても」
俺の考えはまとまった、だけどまだ確定じゃない
だから確かめる!
「じゃ続きだ!」
シズカさんが拳を繰り出す、引き寄せられる
さっき1回喰らったからあと9回のはずだが8回かも知れない
竜巻を対象に攻撃したかも知れないからだ
腕でブロックしながら耐える
9発喰らった、竜巻は対象にしなかったようだ
ではどうやって竜巻を破壊したのか
おそらくシズカさんの職業で覚えられるあのスキルだろう
「やっぱ見切られてるから防御されちまうな
でもダメージは通っているだろ?」
「ああ、たっぷり喰らっているよ」
ガードしている腕がボロボロだ、痺れているし切れて血も出てる
「まだまだ行くぜ♪」(ボソボソ)
三度目、10回ごとに発動し直したな!
俺の考えが当たっているなら四度目はない!
耐える、ひたすら耐える!
そして10発終了、もう腕が上がらない
腕が上がらなくても魔法は撃てるから問題ない!
「やっぱやればデキる子だよケンタは♪」
そのセリフにはいつも元気付けられていたよ
「だけど30発耐え抜くとは思わなかったわ、やるじゃん♪」
「そりゃどーも」
いつもこう素っ気なく返していたな
「シズカさんのステータスの職業ってさ」
「私の?」
「<闘将>だよね?」
「お、バレた?」
闘将が覚えられるスキル<気合い>
集中してその名のとおり気合いを入れる
それを放出することによって魔法や攻撃を弾く
また攻撃に気合いを乗せることによって結界を破れる
アンナの結界を突き破ったのも俺の竜巻を破壊したのもこれだ
固有スキルに職業特性と神レア武器、厄介極まりない




