71 ベルさんは苦労人
凄かった、派手さはないが熱い殴り合いだった
俺だったら一発目で沈んでいただろう(断言)
結果はシズカさんが勝ったが二人とも医務室行きになった
今日の最終戦だったから祭りはそのままお開きである
見舞いに行こうかとも思ったがやめておく
医療班に回復されているだろうけど疲れているはず
俺たちは宿屋へ帰る
「お風呂入ってきます」
「アンナ、風呂でアオイくんに聞き出そうとかするなよ」
「しませんよ」
「本当か?」
「お兄さんは私を信用してくれないんですね」 ムスッ
「いやそういうわけじゃ」
アンナが落ち込んだ
「悪かった、もう言わないから機嫌直してくれ」
「じゃデザートにケーキ3つ下さい」
「太るぞ」
「デリカシー!」 バチン!
俺を引っ叩いてプンスコ怒りながらアオイくんと風呂へ行った
身体を洗い流して湯船に浸かる二人
「アンナさん、その、色々ごめんなさい」
「なぜ謝るんです?」
「シズカさんのこと何も言えなくて」
「その件はもういいですよ、なにかシズカさんと約束したのでしょう?
約束を簡単に破るような方は私も嫌いですから」
「うん、ありがとう」
アンナはシズカのことをアオイから聞きだすことはしない
「明日は私自身で戦って答えを見つけます」
「気を付けて下さい、シズカさんの攻撃は回避できませんから」
「そういう固有スキルはいくつかありますが特定が難しいですね」
風呂から上がる二人
心にモヤモヤ感が少し残っているアンナ
「よし、お兄さんに八つ当たりしてきます!」
「うえぇっ!?」
ケンタの部屋へ行くとケンタはベッドで横になってくつろいでいた
「とうっ!」
グキャッ!
「ふんがっ!」
横になってるケンタの上にエルボーをかますアンナ
うつ伏せだったので背中にクリティカルヒット
背中を押さえてもんどりうつケンタ
「先に食堂に行きますね、お兄さん♪」
清々しい笑顔で去って行くアンナ
「こ、この、クソガキぃっ! ふぐぅっ、、、」
回復薬を飲んで食堂へ向かうケンタ
アンナを叱らずいつもどおり明日の予定を話し合う
(少しは怒ったらいいのに)
「明日はシズカさんに挑戦しようと思う」
「そうですか、私もそうしようと思ってました」
「え、アンナも?」
「アオイさんが挑戦して何かを掴んだようなので
挑戦すれば何かわかることがわかりましたからね」
「うう、ごめんなさい」
「責めているわけではないので謝らないで下さい」
「じゃ明日は俺とアンナが挑戦だ」
「「はい」」
夕食も終わりそれぞれ部屋へ戻る、その途中
「お兄さん、あの、さっきはごめんなさい」
「気にすんな、でももうちょっと手加減してくれな」
苦笑しながらアンナの頭を撫でるケンタ
「はい、、、」
そして決戦前夜は更けていく
翌日、シズカさんは完全回復して祭りを開催する
アオイくんとストックさんは観戦だ
俺とアンナは挑戦権を奪うため中央に近い位置に陣取る
昨日までの戦いで挑戦しようとする者はかなり減っていた
だからライバルは少ないが油断はできない
そして挑戦者を募る口上
アンナがアオイくん並の速さで中央に向かう
俺も身体強化でスピードアップ
だがアンナよりも早く中央に降り立った奴がいた
そう、上空から降り立ったのだ
どこから来てんの?
シズカさんもポカンとしてた
「諸君、すまないね、私が一番手をいただくよ」
長身で中肉中背の身形がいかにも貴族の男
琥珀色の瞳と短めでクセ毛のある金髪
20代後半ぐらいでイケメン寄り
なんか似た人を知っている、誰だっけ?
「どうしましたお嬢さん、私が相手ではいけませんか?」 ニッコリ
「あー、いや、早い者勝ちだから構わないよ
てかなんで空から?」
さすがにシズカさんも困惑している
「フライで上に待機していたのですよ
すぐにここへ来れるようにね」 ニッコリ
なんだろう、すごいイラッとくる
結局、この男、アンナ、俺の順になった
ん? ベルさんが固まっていた
審判の仕事しなさいよ
「ベルどうした? 合図してくれよ」
はっと我に返るベルさん
「えっと少しお待ち下さい」
「どうしたんだいベルくん、合図してくれたまえ」 ニッコリ
「え、でも、それは、、、」
ベルさんと知り合いか?
「ベル、こいつのこと知ってるの?」
「ちょ、シズカさん! こいつ呼ばわりは駄目です!」
「うわっ、怒られた!?」
「はっは、ベルくん構わないよ、こいつで結構♪」
「で、ですが!」
「なあベル、こい(睨まれる)、この人、誰さん?」
「あの、言っても宜しいですか?」
「いいよ、ベルくんを困らしたくないからね」 ニッコリ
「すでに困っているのですが、、、」
あの笑顔うっざいな
「この方はシリウス・ペンペラン子爵様です
領主オシリス様の弟君でシシリー様の叔父にあたります」
ああ、似てるわ領主様に!
性格は違うけど領主様を少し若くしたらこんな感じだ
やべ、うざいって口に出さなくてよかった
不敬罪だったよ
「なるほど、たしかにこいつ呼ばわりは駄目だね」
「えー、いいのに」 ニッコリ
軽いなシリウス様
「でもさ、さすがに貴族様をフルボッコにできないよ
悪いですけど挑戦権はなしです、すみません」
「困ったね、戦うのを楽しみにしていたんだけど」
さすがにシズカさんも貴族様を殴る蹴るできないようだ
「シリウス様、お願いします、ここは諦めて下さい」
「ベルくんまで酷いなあ、本当に楽しみだったんだよ?
3日前から観戦していてやる気になったって言うのに
別に大怪我しても不敬罪とか言わないからやらせてよ」
「うーん、そんなに楽しみにしていたんなら」
「駄目です! ギルドが責任取らされます!」
「そうだよね、ベルにこれ以上迷惑かけたくないし」
「ギルドにも責任を問わないよ?」
「それなら」
「だーめーでーすー!」(涙目)
必死だなベルさん、可哀想になってきた
というかギルマスのキットさんは止めないのか?
キットさんの姿が見当たらない、逃げたな
「んー、それじゃあ」 ニヤリ
うわ、悪い顔してる
「戦わせてくれないと関係者一同不敬罪にしちゃうよ」 ニッコリ
ひでぇ、この貴族ひでぇ!
ベルさんが愕然として俯いた
しょうがない、ベルさんを助けよう
と言っても何も策がないなあ、どうしようか
ん? ベルさんがゆらりとシリウス様に近付く
「ベルくん? どうしたんだい?
そうか、戦いの合図をしてくれる気になったんだね♪」
ベルさんがシリウス様の首根っこを掴む
何してんのベルさん!? 不敬だよ?
「シリウス先輩、いい加減にして下さいませんか?」
目が据わっていた、額に怒りマークの幻が見える
「べ、ベルくん? 首、首がちょーっと痛いかなー?」 ニッコリ
「このぐらいで痛い? そんな人がよく戦おうとしていますね」
「落ち着いて、話し合おう、うん、そうしよう」 ニッコリ
「こ、れ、が、落ち着いて、いられますかーっ!」 うがー!
襟首を掴み直して見事なまでの一本背負いで投げ落とす
ベルさーん!? 不敬罪ですよー!
シズカさんも驚いていた
観戦者たちも驚いていた
そりゃもう誰だって驚くさ
「べ、ベルくん、話せばわかる、いだだだっ!」
投げ落とした後、左腕を後ろに引っ張り込む
「わたし程度の女にこの体たらく
それで冒険者と戦おうなんてバカじゃないですか?
いえ、バカですね! このバカたれっ!」
いや今の一本背負い見事でしたよ?
ベルさん強かったんですね
「おいベル、もう勘弁してあげなよ」
「はあ? シズカさんのせいでもあるんですよ?」 ギロリ
「申し訳ありませんでしたあっ!」
シズカさんが謝った、すごいよベルさん、あんたが最強だよ
「さあ、まだ挑戦したいとかぬかしますかシリウス先輩?」
「ごめんなさい、もう言いませんから許して下さい、、、」(涙目)
弱いなシリウス様、不憫になってきた
「それではとっととお帰り下さいシリウス様」
ベルさんはシリウス様を解放してお帰りを勧める
「そうだね、よし、合図なしで今すぐ戦いを始めよう!」 ニッコリ
うっわー、駄目だこの人!
「このっ! あっ、卑怯です!」
ベルさんが掴み掛かろうとするが結界に阻まれる
「ふっふっふ、私は武芸はベルくんに及ばないが魔法なら敗けないよ♪」
なるほど魔法の方が得意だったのか
まあフライで長時間上空に待機できるぐらいだからな
魔法の実力ならあるのだろう
「しょうがないよベル、戦わないと帰ってくれそうにないよ」
「うう、どいつもこいつも、、、」
「ほんとごめん」
シズカさんが心底謝っている
「じゃあ始めようかシズカくん」 ニッコリ
大きくため息をついてシズカさんが構える
そのとき
「そこまでです、叔父様!」
シシリーと私兵さんたちがやって来た
そばにキットさんもいた
「シ、シシリー、どうしたんだい?」 アセアセ
「キットさんから連絡を受け叔父様の回収に来ました」
「回収って私は物ではないですよ」
「お父様もお怒りですよ」
「うへ、兄さんまで? やだなあ」
キットさんは領主邸へ報告に行っていたのか
逃げたとか考えてごめん
私兵に両脇をガッチリ固められて連行されていく
あの人、ほんとに貴族なのか?
「ベルさん、叔父がご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
「いえ、間に合って助かりました」
シシリーがベルさんにシリウス様の代わりに謝罪する
ベルさんもシシリーが悪いわけじゃないので受け入れる
「ケンタ様、お久しぶりです」
「ああ、久しぶり」
「また皆様で領主邸へ遊びに来て下さいね、それでは失礼いたします」
シシリーはシリウス様を連れて帰ってくれた
姪っ子のシシリーには結界とかで抵抗しないんだな
「えっと、ベル? 祭り、続けていいかな?」
ベルさんは疲れ切ってぐったりしている
シズカさんはお伺いを立てている
「はあ、いいですよ、でも一組いなくなりましたけどどうしますか?」
「今日は残りの二組だけにしとくよ、ごめんな」
「いいですよもう、それじゃあ再開しましょう、、、」
「うん、ほんとにごめんなベル」
ベルさんが一番苦労していることに我々は気付いた一件だった
次回、シズカ vs アンナ
キレるアンナ、ついでにお姉ちゃん




