65 帰還
一人は可哀想だから一緒に乗ってくれると言っていたのに
なんか怒って呪詛吐いて馬車へ乗ってしまったアンナ
なんだよう、わけわかんねーよ
そもそもリディアはなぜあんなことをしたんだ?
ほ、ほ、ほっぺに、、、 んきゃあーーーっ!
恥ずかしがるおっさんがいた、俺だ
しょうがないだろ、あんなのされたことねーもん!
アレか? 親友のシシリーを助けたお礼か?
絆の魔法のネックレスのお礼もかな?
うん、そうだな! そうに違いない!
ふう、解決したぜ、、、 (してない)
野営地に着いてテントを張って夕食タイム
「アンナさん、見張りの順番は如何なさいますか?」
「お兄さん、なんでそんな話し方なんですか」
「だってなんか怒っているだろアンナ」
「はあ、もう怒っていませんよ」
もう、と言うことはやっぱり怒っていたんじゃないか
「私、お兄さん、アオイさんの順番でやりましょう」
「俺が最初じゃなくていいのか?」
「はい、少しはゆっくりして下さい」
厳しいんだか優しいんだかわからん奴だ
食べ終わってアンナは見張りを始める
俺たちはテントに行く
テントに入ろうとしたらシシリーに呼び止められる
「どうした?」
「多くは語りません、リディアを大事にして下さいね」
そう言って自分のテントへ入っていった
いや、意味がわかんねーぞ?
もっと多くを語ってくれよ
ま、いいや、寝よう
ズゴンッ!!
「いでぇっ!」「いったぁ~っ・・・」
額を押さえて起き上がる
アンナも額を押さえて涙目だ
「いてて、何が起きたんだ?」
「すみません、足が滑って、いたた、頭がぶつかりました、、、」
どういう状況だよ
「気を付けろよ、ケガはないか?」
「はい、大丈夫です、頭が痛いだけです」
「うん、俺も痛い」
俺とアンナはこのまま見張りを交代した
うう、頭痛い、、、
見張りをしながらナビを確認する
所持品リストから一つのアイテムを選択して詳細を表示する
もっと早く思い出せればよかったのに
これを渡していればアオイくんは傷付くことはなかった
俺があのとき使っていれば殺さなくてもよかった
だけどそんなの今更だ、後の祭りだ
過ぎた時間は戻らない
だから、これからのためにこれを使おう
でも一つしかないのでアオイくんにこれを渡そう
俺はもう手遅れだし、覚悟を決めたから必要ない
俺はナビを閉じる
まあマーデラのような相手は特殊だ
大抵は殺さなくてもなんとかなる
あまり考えすぎないようにしよう
アンナにも心配かけていることだし
もうすぐ陽が昇り始める
あと一時間したらアオイくんと交代だな
交代せず寝かしといてやろう
酷い目に遭ってまだ1日しか経ってないからな
少しでも休息させてやりたい
「ケンタ殿」
「ふぎゃっ!?」
「ひゃっ!?」
びっくりした、アオイくんがいつの間にか後ろにいた
俺の驚いた声にアオイくんも驚いたようだ
気配も音もなく後ろに来ないで欲しい
「脅かさないでくれよアオイくん」
「ごめんなさい」
「交代までまだ時間あるよ?」
「寝付けなくて早いけど来ました」
やっぱり精神的にまいっているんだな
「横に座ってもいいですか?」
「いいよ」
左側に座ろうとしていたがやめて右側に座るアオイくん
どっちでもいいと思うんだが?
「なんで変えたの?」
「えっと、その、特には、、、」
歯切れが悪いな、まあいいか
それより丁度いいから今の内に言っておこう
「アオイくん、ごめんな」
「何がですか?」
「助けに行くのが遅くなってごめん」
「そんな、来てくれただけで充分です」
「自分勝手だけど、それでも謝らせてくれ」
「・・・・・はい」
アオイくんは俯き加減に肯定してくれる
「それなら、わたしも謝らせてもらいます」
「なんでだよ!?」
「わたしが不甲斐ないばかりに、、、 あの男を、、、
わたしの代わりに、殺させてしまいました、、、」
俺が殺したことを気にしてくれているのか
「言ったろ、代わりにやってやるって
俺が勝手に決めたことだから気にするな」
「だったら、謝るのもわたしの勝手ですよね」
言うようになったなあ
これならもう大丈夫かもな
「わかったよ、ありがとうなアオイくん」
「はい♪」
アンナといいアオイくんといい、俺は良い仲間に恵まれているな
そうだ、忘れないうちに渡しておこう
俺は収納庫から一本の剣を取り出す
「この剣をアオイくんにあげるよ」
「その剣は?」
「天誅剣だ、アオイくんも聞いたことぐらいはあるだろう」
「はい、たしか悪い人しか斬れない剣でしたよね、、、 あ、、、」
気付いてくれたようだ
「これなら誰も殺さないで済む」
「それなら、ケンタ殿が使えば、、、」
「いいんだ、アオイくんが使ってくれ」
「でも、、、」
「アオイくんに誰も殺して欲しくない、殺させたくない
だから受け取って欲しい、頼む」
俺は軽く頭を下げて剣を差し出す
アオイくんは躊躇している
「これは俺のエゴだ、ごめんな
俺のわがままを聞いてくれないか?」
アオイくんは迷っている
でも小さく頷いて受け取ってくれた
「ありがとう」
「それはわたしのセリフですよケンタ殿」
困った顔で笑うアオイくん
「あの、それなら、わたしのお願いも聞いてくれますか?」
「いいよ、俺ができることならだけど」
「ありがとうございます」
それから少しの沈黙
あれ? どんなお願いなのか言ってこない
「えっと、アオイくん? お願いって何?」
「あ、それは、その、街に戻って落ち着いてから言います」
「なんで?」
「黙秘権を行使します」
「ええっ!?」
何だ? 俺に何をやらせようと言うのだ?
すげー気になるんですけど・・・・・
でも無理に聞き出すのはやめておこう
元気になってきているみたいだし
無理難題は言わないと思うから大丈夫だろう
大丈夫だよね?
「おはようございますアオイさん、ってお兄さん?」
「おはようアンナ」
「おはようございますアンナさん」
「お兄さんずっと起きていたんですか?」
「眠れそうになかったからな」
「わたしと一緒に見張りをしていました」
「ふーん、そうですか、、、」
アンナがすごい不満そうな顔で俺を睨む
俺を心配してゆっくりさせようとしてくれていたからな
「怒るなよ、街に戻ったらゆっくりするつもりだからさ」
「はぁ、しょうがないですねお兄さんは」
ほんと、ごめんな
街に向かって馬車が走る
俺はスーパーカブで並走する
「シシリーさんを領主邸に届けたら依頼も終わりですね」
「そうだな」
アンナが相乗りしてくれている
「昼過ぎになるからギルドへの報告は明日にしようと思う」
「そうですね、急ぐことはありませんから」
オシリペンペン街西門に到着
領主の娘を乗せているので手続きはすぐに終わる
馬車とスーパーカブはそのまま領主邸へ向かう
領主邸に着いたら客間へ通される
シシリーは自室へ行った
「やっぱり豪邸の客間は緊張するなあ」
「ソウデスネ」
アオイくんは俺以上にガチガチだ
アンナは変わらず平然としている
「お待たせしました」
「待たせたな」
シシリーと領主様が来た
「少しだけシシリーから王都でのことを聞いた
バッカー伯爵の件、感謝する」
領主様が頭を下げる
「恐縮です、むしろすみませんでした
シシリーを囮にして危険に晒してしまいました
申し訳ありませんでした」
俺たちも頭を下げる
「たがおかげで奴を捕らえることができた
これでもうシシリーが狙われることがなくなる」
「私からもお礼を、ありがとうございました」
シシリーも一礼する
それから王都でのことを詳しく報告していく
忘れずに書簡も渡した
その場で読み始める領主様
「ふむ、なるほど」
「お父様、フレンダ男爵様は何と?」
「今回の件の大まかなことが書かれているだけだ
それとシシリーを危険に晒したことへの謝罪
そしてケンタたちへの報酬の件も書かれている」
書簡の中に別紙が入っていた
書類のようでそれにサインと捺印をする領主様
「ケンタ、これをギルドマスターのキットへ渡せ」
「これは何ですか?」
「お前たちのCランク昇格を認める推薦状だ
伯爵の私とベスタ男爵の推薦だから文句は言わせん」
「あ、ありがとうございます」
昇格試験なしで昇格できるってことだ
「護衛依頼の報酬金はギルドの口座にすでに入金済みだ」
「え、もう? さっき帰って来たばかりなのに?」
「帰って来るのがわかっているのだから先に入金しても構わんだろう」
仕事早いな領主様
報告や諸々が終わって俺たちは領主邸を後にする
「もう17時か、ギルドはやっぱり明日だな」
「そうですね」
「宿屋はどこにしますか?」
今回は一般の宿屋にした
宿泊手続きをしてそのまま夕食
風呂に入って部屋でくつろいだ
「護衛依頼、終わったんだなあ」
「終わりましたね」
「色々あって大変でしたね」
俺たちは集まって打ち上げ的にダラダラ駄弁る
「お兄さん、明日からの活動はどうしますか?」
「とりあえずギルドだよな、依頼達成の報告があるし」
「Cランク昇格の件もありますよね」
「そうだよな、ついにCランクかあ」
「あと忘れずにベンケイさんとパンティさんのことも聞かないと」
「そうだな、俺たちがいない間に来ているかも知れないしな」
来てるといいな
駄弁りも終わってアンナとアオイくんは自分たちの部屋へ行く
俺とポチャとサスケはそのまま雑魚寝する
今回の護衛依頼は本当に色々あった
たった数日だがすごく長く感じた
でもなんとか無事に街へ帰還できた
生きている、俺たちは生きてここにいる
俺は安堵して眠りについた
疲れたなあ、、、、、
「二人の令嬢」編、終幕です
それぞれに様々な物語がありました(特にケンタ)
この一件は今後にも影響を与えていきます
ケンタたちの物語はまだまだ続きます
これからもお読みいただけるとありがたいです
よろしくお願いします
次回から「闘将」編スタート!
バトル三昧でございます




