63 乙女の涙、少女の祈り 6
「ええい、ちょこまかと鬱陶しい!」
バッカー伯爵は5人の騎士をサスケに回す
そして3人の騎士と共にシシリーを連れて行く
騎士の攻撃を速い動きで躱していく
薄暗いので黒猫のサスケは姿を隠しやすい
見えないところからヒットアンドアウェイで攻撃する
与えるダメージはないに等しい
だが見えないところからの攻撃
どこから来るのかわからないから精神的に疲弊していく
体力も徐々に奪われていく
(このままだと逃げ切られてしまいますね)
かなり時間が掛かってしまっていた
地下から出て馬車や馬で逃げられたらそれまでだ
そこへポチャとアオイが来る
逆に時間が掛かったため追いつけた
「やっちゃうぞー♪」
「サスケ、あとは任せて」
「主、ポチャさん、ご無事でしたか」
ポチャが足に咬みつき怯んだところをアオイが倒す
「よし、あとはお縄にしておきましょう」
収納庫から縄を出すアオイ
騎士たちを縛り上げる
「ではシシリー様を助けに参りましょう」
サスケが先へ進もうとしたときアオイが膝をつく
「主、如何なされました!?」
「ごめん、ちょっと貧血みたい」
それはそうである
あれだけ刺されて血を流したのだ
傷は癒えても流れた血は戻らない
「僕が行くから二人はここでお兄さんを待ってて」
「ポチャさん、すみません」
「ポチャ、ごめんね」
ポチャは走る、シシリーを助けに
マーデラが私を助けようとするアオイさんの邪魔をします
私は騎士二人に引っ張られて連れて行かれます
私は足を踏ん張り抵抗しますが男性二人の力に敵いません
ズルズル引っ張られていきます、悔しいです
それでも少しでも抵抗して逃げるのを阻止しようと思います
時間を稼げればみんなが助けに来てくれると信じていますから
私がわずかでも抵抗をするため歩みが遅い
騎士たちは私を乱暴には扱いません
この方たちは無理矢理従わされているのでしょう
伯爵はイラついているようですね
女子供と侮らないで下さいませ
誰もが泣いて言うことを聞くと思ったら大間違いです
「うわっ、こいつどこから!?」
私を引っ張っていた騎士が驚きます
横でいきなり驚かれたので私も驚きましたわよ
黒猫です、サスケが来てくれました
私のわずかな時間稼ぎが役に立ちました
私もやればできるのです
サスケが動きまくり騎士たちを翻弄します
倒せないようですが時間稼ぎにはなります
サスケ、頑張って下さい
「ええい、ちょこまかと鬱陶しい!」
伯爵がしびれを切らして5人の騎士をサスケに回します
残りの3人の騎士と伯爵に私は連れて行かれます
抵抗虚しくズルズルと連れて行かれます
薄暗い地下でしたが少し光が差し込んできました
どうやら出口が近いようです
ウマのブルブル言う声だか音が聞こえます
このままだと馬車か馬に乗せられてしまいます
そうなったらもう終わりです
仕方がありません、危険ですがやるしかありません
「騎士様方、あなた方には誇りがないのですか?
このような悪事に加担して騎士として恥ずかしくないのですか!」
足を地に張り騎士たちに問い掛けます
しっかりと目を見据えて
騎士たちが止まります
私を引っ張る力も緩みます
「もうやめましょう? 悪いのはバッカー伯爵です
あなた方には恩赦が与えられるように証言致します
相手は伯爵一人、騎士様方なら捕らえられますでしょう?」
騎士たちは迷っています、動揺しています
「皆様が伯爵に無理矢理従っていることは見ていればわかります
引っ張ってはいても私に気遣っていることも気付いています」
騎士たちは考えています
「無理だ、お嬢さん」
「逆らったらマーデラに殺される」
「家族も殺される」
マーデラ、あの騎士ですね
なるほど、たしかにあの男が相手では逆らえなさそうです
しかも家族まで人質ですか
バッカー伯爵、マーデラ、気に入りません
どこまでも腐った方たちですね
「貴様ら! ごちゃごちゃ何をしている!
もうすぐ外だ、さっさとそいつを連れて来い!
小娘、お前もいい加減諦めろ!」
諦めろ? 諦めるわけがないでしょう?
私が諦めたら助けに向かってくれている方々に失礼です
「騎士様、自分で歩けますわ
伯爵様、私はもう諦めました
素直にそちらへ参ります」
ニッコリ笑って自身の足で伯爵のところへ向かいます
騎士たちは申し訳なさそうな顔で見ています
伯爵は勝ち誇ったような顔をしています
「ふん、最初から素直にしていればいいものを」
「はい、ごめんなさい♪」
伯爵の正面に立って微笑みます
そして
「そんなわけないですわっ!!」 ゴスッ!
「ふっ! ふんぎゃああああぁっっ!!!」
股間を押さえて地べたを転がる伯爵、滑稽ですわね
はしたないですが男性の急所を蹴り上げました
騎士たちは混乱しています
同じ男性なので股間を押さえていらっしゃいます
青ざめている方もいますわね
その隙に地下牢方面へ逆走します
手が縛られているので走りにくいです
ですが少しでも逃げて助けが来る時間を稼ぎましょう
「ふ、ふご、、、 お、追え、追えぇっ!」
伯爵は痛がりながらも騎士たちに命令します
しぶとい方ですね
騎士たちは慌てて私を追いかけます
できる限り捕まらないように伸ばされた手を躱していきます
ですが騎士3人相手に逃げきれませんでした
ズルズルと伯爵のところまで連行されます
「この、クソガキィ、、、」
もの凄い形相で睨まれますが睨み返して差し上げます
すると
バキィッ!
拳骨で左頬を殴られました
私は殴られて転倒します
痛いです、とっても痛いです
口を切ってしまいました、口から血が垂れます
女性を殴るなんて最低ですね
伯爵が近付いてきました
「どうだ、少しは大人しくなったか」
「人としても男性としても最低ですね」
睨みながら言ってやります
ガッ! グシャッ!
頭を掴んで地面に顔から叩きつけられました
一瞬気を失いそうになりました
髪の毛を掴んで顔を上げられます
「は、伯爵様、やり過ぎです!」
「ああ? 貴様、マーデラに処分させるぞ?」
「う、、、」
騎士が私の身を案じてくれます
伯爵は騎士を脅します
「処分、させる? 自分では手を下さないのですね
本当に、小者も、いいとこですわね」
「この、ガキ、、、」
乱暴に掴んだ髪を引っ張り上げ私を投げ飛ばします
「クソガキがあっ!」 ドカッ! 足を蹴られます
「見下しやがって!」 ゴスッ! お腹を蹴られます
「親子そろってバカにしやがって!」 ドゴッ! 背中を蹴られます
溜まった鬱憤を晴らすように叫びながら蹴られます
何度も何度も蹴られます
意識が朦朧としますが私は睨み続けます
「このガキ、なんで諦めない、なんで心が折れない、泣きもしない
悲鳴も上げない、苦しくないのか、恐くないのかっ!」
私は睨みながら答える
「あなたのような悪党に屈するような柔な心は持っていません
痛いし苦しいですよ、でも必ず助けが来ると信じていますから
だからっ! 私はっ、折れないっ、諦めないっ!」
全身全霊で言葉をぶつけます
「う、ぬぅ、、、」
やはり小者ですね、怯んでいるようです
「・・・・・もういい、ここで殺してやる」
「は、伯爵っ!」
「邪魔をするとお前らの家族がどうなっても知らんぞ」
騎士たちはそれ以上何もできなくなります
こんな悪党に屈したあなた達にも非はありますよ
ですが家族を盾に取られれば仕方がないのも理解してます
一番悪いのはこの悪党ですから
悪党が剣を抜きました
身体中悲鳴を上げていますが諦めません
私は最後まで抗います
地べたを這いますが逃げ切れるわけもありませんね
悪党が私の腰を踏み付けます
剣を振り下ろします
「あたーーーっく!」 ドズン!
「うおぉっ!?」
悪党が誰かに体当たりされて飛ばされました
「お姉さんだいじょうぶ?」
「ポチャ、、、 来て、くれたのですね」
ほら、助けは絶対に来るのです
ちょっとだけ諦めかけたことは内緒です
「なっ、猫の次は犬だとぉっ!?」
ポチャが悪党に向かってグルルと唸り威嚇します
「くそっ、あの犬を始末しろ!」
騎士たちに命令します
騎士たちは仕方なくポチャに立ち向かいます
ですが迷いが見え隠れします
それでいいのですよ騎士様方
悪党に喜んで手を貸すようになっては駄目ですよ
「今度こそ、殺してやる」
悪党が立ち上がり私に近付きます
ポチャは騎士たちが邪魔して私を助けられそうにありません
さすがにもう身体が動きません
それでも悪党を真っ直ぐ睨んでやります
これが私にできる最後の抵抗です
再び悪党の剣が私に振り下ろされます
そのとき、突風が吹きます
その突風は私の上を通り過ぎ悪党にぶつかります
突風に吹き飛ばされる悪党
「な、何だ、これはぁっ!?」
転がる悪党
「お姉さん!」
ポチャが私のそばに来ます
あれ? 騎士たちは?
騎士たちも倒れていました
誰かがゆっくりこっちへ歩いて来ます
「待たせたなシシリー」
俺はシシリーのところへ急ぐ
その途中にチンピラたちが倒れていた
倒したのはアオイくんかな?
急ぐので放っておく
男爵様たちが来たら捕縛してくれるだろう
さらに進むとアオイくんとサスケが座っていた
近くには騎士が5人縛り上げられている
「大丈夫かアオイくん!」
さすがに心配で足を止める
「ケンタ殿、ちょっと貧血で」
「ああ、あれだけ流血したらそうなるか」
傷は治っても血は戻らないからな
「ゆっくり休んでいてくれ、シシリーは任せろ」
「はい、お願いします」
さらに急いで走る
ポチャが騎士たちと対峙しているのが見えた
その先にバカとシシリーが見える
剣を振り下ろそうとしていた
させるかよっ!
ウインドボール、風の玉をバカに放つ
魔力を多めに注いでいるのでちょっとデカい
「な、何だ、これはぁっ!?」
バカが吹き飛ぶ、ざまあみろ!
そのまま騎士たちをサンダーアローで倒す
痺れて当分動けないだろう
ポチャがシシリーのところへ走る
「お姉さん!」
俺もシシリーのところへ行く
「待たせたなシシリー」




