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愚者の楽園に転移したけどまったく問題ない  作者: 長城万里
2 永遠の混沌

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59 乙女の涙、少女の祈り 2

男爵邸に行くといつでも動けるようにしてくれていました

場所を伝えたら男爵様と私兵さんたちは商館へ向かいます


男爵様は馬車で行きます

私兵さんたちの一部は馬で先行します


私は飛んで先に戻ります



門番がいますね


「こんにちは、中に入らせていただきますね」

「お嬢ちゃん、何を言っているんだ?」

「ダメですか?」

「当たり前だろ」

「仕方がありませんね、諦めます」

「ほら、さっさと帰った帰った」

「ところでアレは何ですか?」

「アレ?」


一番大きな建物を指差します

その建物の扉や窓が吹き飛んでいました

中が騒がしいです


「うおっ、なんだありゃ?」

「見に行った方がいいんじゃないですか?」

「しかし持ち場を離れるわけには」


案外真面目ですね

でもそれもお終いです


男爵様の馬車と馬に乗った私兵さんたちが到着しました

遅れて残りの私兵さんたちももうすぐ着くでしょう


「私はベスタ・フレンダ男爵だ

 ここに拉致された少女がいると聞き確認に来た」


「ななな、なんのことですか、、、」


門番が焦っています

それは肯定しているようなものですよ


さすがに門番は男爵様たちを止めることができませんでした

私たちはあの建物に向かいます


中に入るとポチャが暴れていました

男爵様と私兵さんたちは固まっています


「皆さん、私たちの仲間ですので大丈夫です」

「こんな魔獣を連れていたのですか?」


魔獣と思いますよね


「魔獣ではなくて聖獣です」

「なんと、聖獣を従えているとは」


嘘も方便です


「ポチャ、頑張ってくれたようですね」

「あ、お姉さん♪」


こちらに気付いてくれました

ポチャが喋ってしまっていますが問題ありません

聖獣なら人語を話せてもおかしくないのです

強引に押し通します


私兵さんたちが悪い人たちを捕縛していきます


「ポチャ、お兄さんたちは?」

「あっちから下に行ったよー」


地下ですね


「男爵様、ここはお任せします」

「はい、私たちもここが片付いたら向かいます」


「ポチャ、行きますよ」

「うん♪」


小さいポチャに戻ります

大きいままだと地下は狭いですから


「アンナ様、私も御一緒して宜しいでしょうか」

「パトラッシュさん、危険ですよ?」

「お嬢様が心配なのです」


リディアさんはお兄さんに付いて行っているのでしょう

お兄さんがいるから大丈夫だとは思います

でもパトラッシュさんにしてみれば不安なのですね


「わかりました、一緒に行きましょう」

「ありがとうございます」


私たちは地下への階段を降りて行きます






「いやあ、なかなかお強いですねえ

 急所を外れたとはいえアイスランスは当たっていますのに」


立ち上がりチンピラ共の後ろに下がるイスト


「どうして先生が、こんな、、、」

「リディアさんこそ、こんな危険なところに来てはいけませんよ」

「シシリーが、親友が、囚われているのです」

「ええ、知っていますよ」

「せ、先生はここで、何をしていらっしゃるのですか」

「見てのとおりですよ? バッカー伯爵の手伝いです」

「そんな、先生がこんな悪事に手を貸すなんて、、、」


ふう、と小さく息を吐くイスト


「悪事? たしかに悪いことですねえ

 リディアさんは良い子ですから許せないでしょうねえ

 私のことを許せませんよね、嫌いになったでしょう?」


イストは下卑た笑みで語る


「それは、でも、、、 いいえ! きっと、きっと、、、

 バッカー伯爵に脅されて仕方なくやっているのでしょう?」


リディアは願いにも似た想いで言う

好きな相手がこんなことしているのを信じたくないのだろう


「脅されて? ええ、ええ、そうなんですよリディアさん

 バッカー伯爵に弱みを握られていて、、、」


悔しそうに軽く俯くイスト


「やっぱりそうなんですね! 先生、安心して下さい!

 バッカー伯爵はお父様たちが捕まえて処罰して下さいます

 もう無理矢理悪いことをしなくていいのですよ

 そうだ、一緒にシシリーを助けて下さいませんか?

 先生なら魔法も武芸も使えますから頼りになりますわ」


脅されていると言うイストを信じるリディア

自分たちは味方だとイストを気遣うリディア

俺は・・・・・・・


「・・・・・くっ、くっ、、くははははははははっ!」


いきなり笑いだすイスト


「せ、先生?」


「本当にリディアさんは純粋ですねえ

 嘘に決まっているでしょう?」


「え、、、」


「あ、いいですよお、その表情(かお)

 騙されたことがわかってもまだ信じたいと言うのがイイですね」


「でも、さっき、脅されている、、 って、、、」


「だーかーらー、嘘だって言っているでしょう?

 リディアさんは賢いのですから理解できるはずですよ」


リディアは言葉を出したくても出せなくなっている


「バッカー伯爵とは利害の一致で協力しているのですよ

 私は脅されても仕えているわけでもない

 自らの意思で協力しているのですよバッカー伯爵に」


「どうして、利害の一致って、何が、、、」


リディアの声がか細く震える


「私はね欲深いのですよ、特にお金と女性に

 金と女、どちらもたくさん手に入るのですよ

 バッカー伯爵に協力することでね♪」


リディアは固まる

だがすぐに言葉を振り絞る


「先生は勉学も武芸も魔法も努力して身に付けていらっしゃいます

 生徒思いでいつも私たちに優しくて素晴らしい先生です

 先生の実力ならいくらでも稼げるはずです

 じょ、女性だって先生は魅力的ですから、、、

 先生が口説けば、きっと拒まないと、思います、、、

 それに女性の方から言い寄ってくるとも思います、、、

 バッカー伯爵に協力などしなくても、、、、、」


「いやあ、私の評価がそんなに高いとは嬉しいですねえ

 本当にリディアさんは優しいですねえ

 というか私のことが好きなんですよねリディアさん」


真っ赤になり俯くリディア


「リディアさんの私への態度や言動で丸わかりですよ

 私も好きですよ、リディアさんのこと♪

 あ、これは嘘じゃないですからね?」


「先生、、、」


何が本当で嘘かわからないと困惑するリディア


「ですが先程仰ったことに反論させていただきましょう」

「、、、反論?」


「たしかに努力して力を身に付けました

 ですが冒険者とか商売とか大変じゃないですか

 趣味と実益が叶うので教師をしているのですよ

 ただ教師はお給料が少ないのです

 だからバッカー伯爵に協力しているのですよ

 教師の給金の100倍はもらえますからねえ♪」


「・・・・・・・・・・」


「趣味と実益と言うのはですね、生徒ですよ

 学園には若くて可愛い子たちがいっぱいですからね♪

 なんと言っても女学園ですから!

 リディアさんの言うとおり告白とかされますよ

 もちろん断りませんよお?

 全員美味しくいただきましたあ♡」


「待って下さい、全員って、複数人ですか?

 そんなのまわりにバレますでしょう?

 ですがそんな話題は聞いたことがありません」


「そりゃそうでしょう、いただいた後は処分していますから」

「、、、処分」


「あ、違いますよ? 私は何もしてませんよ?

 バッカー伯爵に引き渡すだけです

 その後どうなったかは知りませんけどね♪」


「、、、、、ひどい

 もしかして、よく学園を辞めた生徒がいたのは、、、」


「そうですよ、辞めていった生徒の9割以上は処分しています」


泣きそうになるのを堪えているリディア


「どうして、どうしてそんな、ことをするのですか、、、」


「賢いリディアさんでも理解できないことがあるのですねえ

 言っているでしょう? 私の趣味ですよお♪」


「おいこら先公、その辺で止めとけ」


色々思うところがあって黙っていたが限界だ

リディアはぺたりと座り込む


「口の悪い方ですね、あなたは黙ったままでいてくれませんか?」


俺はまたイストに殴りかかる


バキィッ!


チンピラの一人が盾になり俺に殴り飛ばされる


「邪魔すんなっ!」


チンピラ共がイストの盾になって俺に向かって来る

くそっ、これじゃあイストを殴れねえ


「お兄さん!」

「きたよー♪」

「お嬢様!」


アンナとポチャとパトさんが来た

てかなんでパトさんが?

ああ、そうか、リディアを心配してるよな


「なんですかこの有象無象たちは」

「後ろにいる男の肉盾だよ」

「あれ、あの人、リディアさんの先生では?」

「おう、クズ先公だ」


図書館で会っているからアンナも知っている


「この盾がある限り私に攻撃はできないでしょう?

 私はこいつらごとあなた達を攻撃できますけどねえ♪」


「と言うようなクズだ」

「なるほど」

「あの、お嬢様は何故このような状態に」


パトさんが崩れ落ちているリディアを心配している


「あの先公がリディアの心を傷つけたんだ」

「お嬢様の心を、傷つけたですと、、、?」


パトさんがイストを見る


「あの方はたしかお嬢様の、、、」


パトさんも知っていたようだ


「たしかリゲム先生と仰る方ですね

 お嬢様に何を致しましたか?」


「別に何もしていませんよ、お話ししただけです

 私のことを好きなリディアさんに色々ね

 そうだリディアさん、私のところに来ませんか?

 可愛がってあげますよお♡」


リディアが堪え切れず涙を流す


「てめぇ・・・・・」


もう知るか、肉盾全部突き破ってぶん殴る!

そう思い動こうとしたら


「邪魔です」


肉盾の一人の頭の上にパトさんが立っていた

そのまま頭を踏み台にして一足飛びにイストの前に立つ


「お嬢様に謝りなさいっ!」 ビュン! ドシン!


イストの頭部へ右から上段蹴り

しかしガードするイスト


「来るとわかっている蹴りなら受け止められますよ」


パトさんはそのまましゃがんで足を引っかける


「うおっ!」 バタン


仰向けに倒れるイスト

その上から正拳突きを撃ち込むパトさん


ドシュッ!


「ぐ、うっ!」


パトさんの右腕が肘あたりから斬られた


「私は魔法も使えるのですよ?」


ウインドカッターで斬られた

至近距離で正拳突きを放っていたから躱せなかった


「執事さん、邪魔ですよ♪」 ドズン!


パトさんが腹を殴られてこっちまで飛んで来た

腕を押さえて苦悶するパトさん


イストはそれをニヤニヤしながら見ている

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