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愚者の楽園に転移したけどまったく問題ない  作者: 長城万里
2 永遠の混沌

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58 乙女の涙、少女の祈り 1

チンピラたちが敵意むき出しで近付いて来る


「待ちな、お前らの相手は俺じゃない!」


「え、私戦えませんよ?」

「いやリディアでもないよ」


ささ、どうぞ先生! という感じでそのお方を前に出す


「う、こいつは!?」「なんだと!?」「そんなバカな」


つぶらな瞳に茶色き小さな身体、その名はポチャ!


「こちらのポチャ様がお前たちの相手をして下さる!」


引き潮のように敵意が消える


そして暫しの沈黙



「アホかー!」「ふざけんなっ!」「犬じゃねえか!」

「なめてんのか!」「可愛いじゃねえか!」「しばくぞコラ!」


チンピラ共が怒号を上げる

一部怒号じゃないのも混じっているが


「ふ、ポチャ様をなめるなよ

 ポチャ様どーぞやっちゃって下さい♪」


「わおーん♪」


戦闘形態に変わるポチャ

デカくなったポチャに驚くチンピラたち


ポチャ無双!


咥えて投げる、体当たりで押し潰す、肉球ビンタ

チンピラたちはポチャに遊ばれて阿鼻叫喚状態


「よし、今のうちに俺たちは地下へ行くぞ」

「は、はい」


リディアはポチャがデカくなるのを知らなかった

だから驚いて動揺している






「、、、、、ん」


私は目が覚めました


何かを嗅がされ眠らされ攫われました

どうやら作戦どおり無事(?)に敵地へ連れて来られたようです


辺りを見回します

牢屋ですね、そして多分地下室ですね

リディアのときも地下牢でした

悪い人は地下牢が好きなのでしょうか?


両手が縛られていますが他に拘束はされていません

特に何もされていないようで安心しました


十数人の男性が格子の向こう側にいます

見張りにしては多いですね


階段から足音と話し声が聞こえます

誰か降りて来たようです


「まったく、やっと攫って来れたのかノロマ共め」

「まあそう仰らずに」

「ふん、だがこれで奴に絶望を味わわせてやれる」


少々お太りになられた方がいらっしゃいました

その後ろから騎士が十数人いらっしゃいました

地下牢なのに人口密度が高過ぎます


「ごきげんようシシリー嬢」 ニヤリ


気持ちの悪い笑顔ですこと


「どちら様ですか?」

「私はドクス・バッカー、お前の父と同じ伯爵だ」

「そうでございますか」

「ふん、気に食わん、少しは恐がったらどうだ」

「そうですね、ですが助けが来ると信じていますから」


私は笑顔で答えます


「ちっ、可愛げのない、オシリスとそっくりだな」

「一緒にしないで下さい」


まったく、お父様と似ているだなんて失礼ですわ

この方もフレンダ男爵様も節穴ですわね


「私を攫った理由ぐらいは教えていただけませんか?」


「そうだな、いいだろう教えてやろう

 お前はたまたま奴の娘だったせいでこうなっているのだからな」


事情は知っていますが時間稼ぎを致しませんとね

この方、単純なようで助かりますわ

ベラベラと喋って下さいます


お父様とフレンダ男爵様とは同級生

勉学でも勝てず、武芸でも勝てない

それが悔しくて憎しみが募っていく

そんなのあなたの努力が足りないだけでしょうに

なんという小者な方なのでしょう、呆れます


現在、お父様が任されている領地

その領主候補のお一人でした

ですが真っ先に落選してしまいます

内に抱えた憎しみがそれで爆発したようです


人望、実績、能力がなかったからでしょう?

それらを築き上げる努力を怠ったからではないですか

自業自得でございます


「お前はこれから理不尽な目に遭う

 それはすべてお前の父、オシリスのせいなのだ

 恨むならオシリスを恨むがいい」


「理不尽な目とは具体的にどのようなことですか?」

「温室育ちの小娘には耐えられないことばかりだ」

「そうですか」


下卑た目で見ないで下さい、気持ち悪い

どういう目に遭うのかは大方想像つきますが問題ありません

皆様が助けに来て下さるのですから


「本当に可愛げのないガキだ」


そのとき、慌てながら誰かがやって来ました

私を攫った方々と同じような風貌の方々です


「伯爵様、大変です!」「化け物です!」「敵襲です!」


「騒がしい、落ち着いて順番に話せ!」


「一階のフロアで化け物が暴れています!」

「化け物? 酔っ払っているのか?」


「冒険者の男に襲撃されています!」


「そんなのさっさと片付けろ

 そのためにお前らを雇っているんだから」


「フレンダ男爵とその私兵が商館に押し入って来ました!」


「そんなのさっさと片付け・・・・・

 はあ? なんでベスタが? 私兵を連れて?

 まさか、この小娘がここにいることを知っているのか?

 どういうことだ!?」


あらあら、小者らしく取り乱していますわ


「伯爵様、どうやら我々の方が罠に掛ったようですよ」


騎士の一人が私たちの計略に気付いたようですね

ですがもう遅いですわ、ってこの騎士、、、


「あなた、あのときの方ですね

 マーデラさんと仰ったかしら?」


「覚えていてくれましたか、光栄です」


顔は笑っていますが目が笑っていません

カフェで暴漢を殺した騎士です

なるほど、バッカー伯爵の手の者でしたか


「お嬢さんは(エサ)で我々はまんまと釣り上げられたようですね」

「隠す必要もなくなったので肯定いたしますわ」


もうケンタさんたちが来ているのだから構いません

あとはこの方たちを取り抑えるだけです


「ですがよく囮なんかやりますね

 攫われてすぐに殺されるかも知れませんのに」


「そうですね、ですがすぐには殺されないと思っていました

 殺すだけなら眠らせず毒でも仕込むでしょうし」


「なるほど、賢いお嬢さんだ」


この方は危険です、本能的に私の中で警鐘が鳴っています

やんわりと会話をしていますが殺意が肌に突き刺します


「くそっ! こんなところを見られたら言い逃れできん!」


そこは理解しているのですね


「伯爵様は騎士たちとこのお嬢さんを連れて逃げて下さい

 ここに来た襲撃者はすべて私が殺しておきますから」


「う、うむ、そうだな、そうしよう!」


本当に小者ですこと

この騎士はなぜこんな小者に仕えているのかしら?


騎士二人が牢から私を出してくれます


「さっさと連れて来い、急いで逃げるぞ!」


騎士たちが伯爵と共に私を連れて逃げようとします

ですが私を引っ張っていた騎士が倒れます


「何だ!?」


そして私は騎士たちから引き離されます


「ほう、全然気配を感じなかったですね」

「忍者ですから」


忍者は未だによくわかりませんがアオイさんです


「シシリーちゃんは連れて行かせません」






作戦開始からすぐに気配を消します

シシリーちゃんから少しだけ離れて常に付いて行きます


広場の近くの古市に着きました

ケンタ殿が計画通りに離脱します

リディアさんが人混みに酔ったフリをします

アンナさんが介抱するフリをします

シシリーちゃんが飲み物を買いに行くフリで単独行動に入ります

だけど気配を消した私が付いています


眠り薬を嗅がされて攫われました

もちろん付いて行きます


馬車に乗るようです

素早く馬車の屋根に乗ります


大きな屋敷に着きました

敷地内に建物がいくつかあります

シシリーちゃんを抱えて一番大きな建物に入って行きます

わたしも入ります


シシリーちゃんは両手を縛られ地下牢に入れられました

わたしも入ります


少ししてシシリーちゃんの目が覚めます

小太りおじさんがやって来てベラベラ喋ります

聞いているだけで胸糞が悪くなりました


おっと、いけないいけない

感情を動かすと気配が戻ってしまいます

冷静になりましょう


また少しして下っ端連中が報告に来ました

ケンタ殿たちが潜入して暴れているようです

男爵様たちも来たようなので作戦は上々です


「伯爵様、どうやら我々の方が罠に掛ったようですよ」


一人の騎士が前に出て来ます

この騎士はあのときの、、、


いけません、冷静に、動揺してはいけません


シシリーちゃんが牢から出されます

わたしも出ます


シシリーちゃんを連れて逃げようとしています

そうはさせません!


シシリーちゃんを引っ張っている騎士を当て身で倒します

わたしの後ろにシシリーちゃんを匿います


「ほう、全然気配を感じなかったですね」

「忍者ですから」


この騎士、マーデラは気付いていたと思います

シシリーちゃんではなくわたしのいる場所ばかり見ていましたから


「シシリーちゃんは連れて行かせません」






俺とリディアは地下へ降りる


「ここから先へは行かせませんよ」


フードを被った男が立ちはだかる

チンピラ共もたくさんわらわらと出て来た

敵地とは言えこんなに捨て駒用意していたのかよ


「行きなさい」


必死の形相でチンピラ三人が襲ってくる

短剣で捌いていく


ドシュッ! 「っっ!?」


氷の槍が左脇腹に刺さる

正面の男が崩れ落ちる


「おや、外しましたか」


俺の正面にいた男の右脇腹に穴が開いている

こいつ、味方ごと攻撃しやがった


「さあ早く壁を作って下さい」


他の二人が必死に襲ってくる

フードの男を隠す壁を作るように


必死の形相の意味がわかったぜ

命懸けで壁になれってことだ


こいつらだって死にたくないはずだ

だけど命令に逆らえないんだ


フードのクソ野郎、許せねえ!


「ウインド」


正面に来た男を風圧で真横に弾き飛ばす

案の定アイスランスが向かって来ていた

素早く躱してもう一人もウインドで吹き飛ばす


そのまま一気にフードの男の前へ跳び込む


「うわっ!」

「くたばりやがれクソ野郎!」


ボゴォッ!


顔面を思いっ切り殴り飛ばす

後ろに飛ばされ転がるフードの男


「他人の命で戦うんじゃねえ!」


フードがはだけて顔が露になっている

その顔を俺とリディアは知っている


「せ、先生、、、 なんで、、、、、」

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― 新着の感想 ―
[一言] 先生=まさかのポチャ。 そしてフード男がまさかの先生…だと…。
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