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愚者の楽園に転移したけどまったく問題ない  作者: 長城万里
2 永遠の混沌

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54 雑貨屋

「アオイくん、どうしたんだ!?」

「気を失ったようです」

「なんで、、、」

「目の前で人が殺されたからでしょう」


ああ、そうか、これが普通だよな

人が斬り殺される場面に立ち会うことなんてないもんな

ゲームや漫画でそんなシーンを見ても現実じゃないから平気だ

でも現実でそんな場面に遭遇したら?


アオイくんは高校生で女の子だ、ショックが大きいだろう

俺もここが現実だと言うのはもう理解している

だけど根付いたゲーム脳のおかげで感覚が曖昧になっている

俺がアオイくんみたいにならないのはそのおかげだろう


アオイくんはアンナに任せておこう

俺は少し、いやかなりムカついている


「おい、騎士さん!」

「何ですか?」

「こんな往来で、しかも女性の多い場所でそいつはやり過ぎだろう」


「この男は私を振り払い暴れたのですよ?

 あのままだと罪なき人々が殺されていたでしょう

 私は正義を執行したまでです」


この野郎・・・・・


「あんたがしっかり捕まえていないからだろうが」


「そうですね、それはそのとおりです

 ですから責任をもって始末したのです」


「あんたなら斬らなくても取り押さえられただろうが!

 仮にできなくても俺たちが取り押さえていた

 こいつは俺たちに向かって来ていたんだからな」


「やれやれ、これだから冒険者は

 暴漢を捕まえて手柄にしたかったんですね

 まったく自分たちの利しか考えない輩は困りますね」


こいつ、どこまでも・・・・・


「おい、さっさと悪党の死体を片付けろ」


連れていた騎士二人に指示を出すクソ野郎

悪党? 俺に言わせりゃお前も悪党だよ


「まだ文句がありそうな顔ですね

 これ以上絡むなら公務の妨害として連行しますよ

 それともこの場で不敬罪として斬り捨てましょうか?」


ニヤリと嘲笑うクソ野郎


「お兄さん、今は引きましょう」


アンナが小声で言う

これ以上はマズいと判断したのだろう

悔しいが引くことにする


騎士共は男の死体を運んでいく

騒ぎのせいでカフェは緊急閉店となった



俺たちは広場のベンチに移動する

アオイくんをベンチに寝かせる


あいつ絶対わざと暴漢を放したに違いない

理由は知らんがそんな気がする


「お兄さん落ち着いて下さい、恐い顔していますよ」


シシリーとリディアが不安そうにしていた


「ごめん・・・・・」


アンナに指摘されて気を落ち着かせる


「ん、、う、、、」


アオイくんが起きる


「あれ、ここは、、、」

「大丈夫ですか? まだ気持ち悪いですか?」

「アンナさん、、、 ああそうか、わたし、、、」


少しだけ震えている

やはり恐かったのだろう


「情けないですね、護衛なのに、忍者なのに、、、」

「情けなくないよ、それが当たり前だ」


「でも対人で命のやり取りは覚悟していたつもりだったんです

 それなのにいざとなったらこんな体たらく、情けないです」


顔が少し青ざめている

まだ震えが止まらないアオイくん

その横に座り、アオイくんの頭を俺の懐に(うず)める


「うひゃ!?」


「情けなくないし、そんな覚悟しなくてもいい

 相手を殺さなくてもいいんだ

 アオイくんなら殺さなくても無力化できるだろ

 それでも殺さなければならないときが来るかも知れない

 そんときは俺が代わりにやってやる

 だからアオイくんはそのままでいろ」


「・・・・・・・・・・ はい」


俺も誰かを殺したらアオイくんのようになるかも知れない

だけどアオイくんが苦しむぐらいなら俺が苦しめばいい


背中を優しくポンポンと叩く

震えはもう止まっているようだ

もう大丈夫だろうからアオイくんを放す


「お兄さん、、、」 ジト目

「ケンタ様、、、」 ワクワク

「ケンタさん、、、」 ドキドキ


何だ、その三者三様の目は?

そしてサスケよ、殺意の波動をぶつけるな!


「どうしたんだお前ら?」


「自分の胸に聞いて下さい」


アンナが冷めた目で言う


「ケンタ様、意外と大胆でしたのね」


シシリーが妙に興奮している


「ケンタさん、こんな人目につくところでなんて」


頬を赤く染めたリディアがモジモジしている


「その首、引き裂いていいですか?」


待てサスケ、意味がわからんぞ


「アオイくん、サスケを止めてくれ」


振り向いてアオイくんに助けを求める

さっきまで青ざめていたのに今度は真っ赤になっていた

俺の顔を見るなり背を向けられた


え、顔を真っ赤にするほど怒ってるのか?

俺何か怒らすようなこと言ったっけ?


「サ、サスケ、ケンタ殿に攻撃しちゃ、ダメだよ」

「うぬぅ、主がそう仰るなら」


一応サスケを止めてくれた

釈然としないが助かったからいいか

しかしわからん、何なのキミたちのその態度


アンナがアオイくんとヒソヒソ話をしだした

シシリーとリディアも何かコソコソ話して盛り上がっている

サスケは攻撃しないものの俺を睨んでいる


「お兄さん、元気出してー」


うう、ポチャだけが俺に優しい ホロリ



「アオイさん、もう大丈夫ですよね?」

「はい、ご面倒お掛けしました」


「それじゃまだ時間がありますからどこか回りませんか」

「遠くは無理ですから近くにしましょうシシリー」

「そうね、この近くだと雑貨屋がありますね」

「たしかこの王都では一番の雑貨屋でしたね」


俺たちはその雑貨屋へ向かう


「ケンタ殿、ありがとうでござる」


アオイくんがこっそり言って横を通り過ぎる

どうやらもう大丈夫そうだな



雑貨屋に着いた


「雑貨屋、だよな?」

「そうですよケンタ様」


三階建てだが敷地面積が大阪にある某大手家電量販店並みだ


「デカ過ぎだろ!」


装飾品、小物、日用品などが売られているらしい


「ツッコんでいないで行きますよお兄さん」

「お、おう」


あの事件があったから俺も一緒に行動することになった

大人の男がいるだけでも抑止力になるとアンナに言われた

俺が居た堪れないのを耐えればいいだけだ


お嬢様方は遠慮なくあっちへこっちへ歩きまくる

買わずに見ているだけで楽しいらしい

これがウインドウショッピングというやつか


装飾品の区画に辿り着く

広いスペースに多種多様な装飾品が並んでいる


「ケンタ様」「ケンタさん」


シシリーとリディアが目を輝かせながら俺を呼ぶ


「どうした?」


「「私たちに何か買って下さい!」」


いやキミたちお金持ちだよね?


「自分で買えよ! たかるな!」


ガシッと両側から二人に腕を掴まれる


「ケンタ様、こういうときは女性へ何か贈るものですよ」


どういうときだよ!?


「ケンタさん、甲斐性のあるところを見せる場面ですよ」


何で今見せないといけないの?


「お二人の言うとおりです、私とアオイさんにも買って下さいね?」

「わ、わたしは別に、、、」

「アオイさんだけ何も贈られない状況になってもいいんですか?」

「う、それは、、、 わ、わたしも、欲しいです!」


なんだコレ?


少女4人にたかられるおっさん

逃げたいけど、逃げられない


そりゃ金は持っているけどなんで俺が買うことになっているんだ?


「贈り物って、もしかして俺が選ばないといけないのか?」


「「「当然です!!」」」


カツアゲされている気分だ


「わかったよ、でもセンスないから文句言うなよ?」


「「「言いますよ?」」」


容赦のないお嬢様たちだった


俺は諦めて選んでいく

その間、お嬢様方は他のところを見て回る

贈り物だから貰うときに見たいのだろう

一緒にいたら楽しみがなくなるからな

一応真剣に考えて探していく



「疲れた・・・・・」


なんとか選んで買ってきた

考え過ぎて疲れた


「結構掛かりましたねお兄さん」


待ち合わせ場所へ行ったらお嬢様方はもう来ていた


「しょうがないだろ」


女子に贈り物なんてしたことないんだから

そもそも贈る相手がいなかったしな


「それでケンタ様、誰から渡して下さいますの」


すごくワクワクしているシシリー

こういうところは12歳だよな


「そうだな、じゃシシリーからだ」


シシリーにラッピングされた袋を渡す

贈り物だと言ったら店員がラッピングしてくれた


「開けていいですわよね?」

「いいよ」


赤いリボンを解いて袋を開ける


「まあ、ブレスレットですわね」


幅1センチほどの銀色のブレスレット

模様は赤とピンクのラインがクロスしている

右腕にはめて眺めるシシリー


「ふふ、変なものを贈られるとばかり思っていました

 でもこれはなかなか素敵な贈り物ですわ、ありがとうございます♪」


「そりゃどーも、じゃ次はリディアだ」


リディアにラッピングされた袋を渡す

青いリボンを解いて袋を開けるリディア


「あら、私もブレスレットですね」

「お兄さん、面倒でみんな同じ物とかではないですよね?」

「ちげーよ!」

「でもお二人とも銀のブレスレットじゃないですか」

「アンナさん、模様のラインの色が違いますよ」


幅1センチほどの銀色のブレスレットなのは同じだ

でも模様は青と緑のラインでシシリーと色違いだ

シシリーと同じく右腕にはめるリディア

嬉しそうにしている


「ありがとうございますケンタさん♪」

「二人は親友だろ、だから色違いでお揃いにしたんだよ」

「お兄さんにしては気が利くじゃありませんか」


ものすごく感心されている

俺だって気配りぐらいするぞ?


「そういうことばかり言うとアンナにはやらないぞ」

「えー、酷いです、横暴です!」


その拳を引っ込めろ、カツアゲ少女A


「ほら、これがアンナの分だ」

「素直に渡してくれればいいんですよ」


黄色いリボンを解いて袋を開けるアンナ


「私はネックレスですか」

「気に入らないなら返せ」

「気に入ったので返しませーん♪」


プラチナで細めのベネチアンチェーン

チェーンは飾りが胸の中央に来る長さ

銀色の蝶の飾りで中央に小さい赤い魔石が埋め込まれている


「ふーん、へー、ほー」

「なんだよその反応は」

「お兄さんにしては上出来です♪」


アンナは本当に気に入ってくれたようだ

憎まれ口を叩いているが嬉しそうにネックレスを眺めていた

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― 新着の感想 ―
[一言] 軽率に乙女の心臓を止めにかかるケンタが…罪なやつよのう…。
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