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愚者の楽園に転移したけどまったく問題ない  作者: 長城万里
2 永遠の混沌

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52 フレンダ男爵邸

翌日、再び王都に向かって馬車が走る


遠目に王都を囲む高く頑丈そうな塀が見えてきた


アンナは馬車ではなくタンデムシートに座っている

俺が一人で寂しいだろうと相乗りしてくれている


「ようやく王都に着きますね」

「そうだな」


王都・フランチャイズ

別にチェーン店(国)があるわけではない


今回は依頼で来ているからゆっくり見て回れない

いずれみんなと観光に来よう



王都東門に到着


たくさんの馬車が並んで順番に王都へ入っていく

順番が来て俺たちも入る


そのまま馬車はリディアの屋敷まで直行する

俺とアンナもスーパーカブで付いて行く



フレンダ男爵の邸宅、ここがリディアの家である

やっぱり貴族様の家は大きいな

シシリーの伯爵邸よりは小さいが庶民の家の何十倍もある


屋敷に着いて馬車から降りるリディアたち

御者が裏手に馬車を移動させる

使用人たちが荷物を降ろして屋敷に運ぶ


「お嬢様、お帰りなさいませ」


老齢の執事が出迎えてくれる


「ただいま、パトラッシュ」


執事の名前、それなの?


「シシリー様、いらっしゃいませ」

「数日滞在させていただきますのでよろしくお願いします」

「はい、何かありましたらお申しつけ下さいませ」


名前はアレだがベテラン執事の貫禄がある


「パトラッシュ、こちらの方々は護衛の冒険者です

 ですが私とシシリーにとって大事なお客様でもあります

 客人としての扱いでお願いしますね」


「承りました」


パトさんが俺とアンナとアオイくんを流し見る


「それでは皆様も御一緒にお入り下さいませ」


俺たち護衛組は客間へ案内される

シシリーとリディアはリディアの自室へ行った


やっぱり貴族の屋敷は落ち着かない

アオイくんも落ち着けていないようだ

いつでも落ち着いているアンナはすごいな

そこにシビれる(以下略)


少ししてリディアとシシリーが客間に入ってくる

その後ろからイケメンが入って来た


「初めまして、私はベスタ・フレンダ、爵位は男爵です

 リディアから聞きました、娘を助けて下さったようですね

 本当にありがとうございました」


男爵様が頭を下げる

ていうか屋敷の主人じゃん!


俺たちは慌てて椅子を立つ


「挨拶が遅れました、ケンタです」

「ア、アオイでござる」

「アンナです」


「そんなに畏まらないで下さい、楽にして下さい

 男爵と言っても領地も持たない下っ端貴族ですから」


照れ笑いをするイケメン男爵

ライトブラウンのショートヘアーでブラウンアイ

とても14歳の娘がいるようには見えない爽やか好青年だ

リディアの少し歳の離れた兄と言われても疑わない


リディアもライトブラウンの髪とブラウンアイだ

父親譲りなのだろう


リディアが14歳だから少なくとも32歳は越えているはず

そうなると俺より年上だが俺の方が年上に見える


男爵様が座ってから俺たちも座り直す


「フレンダ男爵様、父から書簡を預かってきました」

「ペンペラン伯爵様からですか、シシリー様ありがとうございます」


シシリーが書簡を男爵様に渡す

それを執事のパトさんに渡す

後で読むのだろう


「ケンタさんたちはこのまま護衛をなさるのですよね」

「はい」

「リディアの隣の部屋を用意してますのでそちらをご利用下さい」

「いいんですか?」

「護衛なら近くにいた方が良いでしょう?」

「たしかに」


シシリーはリディアの部屋に泊まるそうだ

明日から3日間、王都で遊ぶ予定になっている

俺たちの護衛依頼にはその護衛も含まれている


「食事と風呂の用意も致しますのでゆっくりして下さいね」

「ありがとうございます」


護衛と言うより本当に客人扱いだ

いいのか?


「それでは私はこれで失礼します

 リディア、シシリー様と一緒だからと言ってはしゃがないようにね」


「お父様、私そんなに子供ではありませんわ」

「はは、すまない、怒らないでおくれ」


リディアが少し頬を膨らます

イケメン父が爽やかに宥める

外国のホームドラマを見ているようだ



それから俺たちは部屋へ案内される


「広いな」「広いです」


俺とアオイくんは部屋の広さにポカンとする


「失礼します、お食事をお持ち致しました」


メイドさんが夕食を運んで来てくれた

俺たち護衛組は部屋で食事する

リディアたちと一緒に食べることはしない

客人扱いはしてくれるがそれはそれ、これはこれである


食べた後、風呂も入らせてもらえた

客人用の風呂だが広くて豪華だった

もちろん男女別だ


風呂から上がって部屋へ戻ろうとしていたら


「ケンタ様、少しお時間よろしいでしょうか」

「何ですか?」


パトさんに呼び止められた



中庭へ連れて行かれた


「おくつろぎのところすみません」

「いえ、構いません」


パトさんが俺を見据えて


「ケンタ様は少女がお好みなのですかな?」


俺の頭の中が混乱する

何を言っているんだパトさんは

サスケと出会ったときのことが脳裏をよぎったぞ


「それは何が言いたいのですか?」

「お連れの方が少女ばかりなのでそうなのかと」

「連れがそうだからって何でそうなるんですか」

「そういった方面の関係なのかと」


どいつもこいつも俺をロリコン扱いするんじゃねえっ!


「俺は大人の女性の方が好みだよっ!

 それにあいつらは仲間だ! そんな目で見てねーよ!

 俺の見た目か? そんな風にしか見えないのか俺って奴は!

 ふざけんなっ! バカにするんじゃねぇっ!!」


あまりにも俺への世間の評価に腹が立ってまくし立ててしまった


「なるほど、たしかにこれは私の失言でした

 深く御詫び申し上げます、失礼を致しました」


深々と頭を下げるパトさん


「いや、俺も乱暴な言葉遣いをした、すまん

 でもそういう風に見られたらさすがに怒りますよ」


「そうで御座いますね、本当に申し訳ありませんでした」

「何であんなことを言ったんだ?」


「お嬢様のためです」

「リディアの?」


「はい、お嬢様に不埒な目を向ける者は排除しなくてはなりません

 もしもケンタ様が少女好きだとしたら護衛を辞退していただこうと

 ですが私の浅慮だったようで申し訳ありませんでした」


リディアのために動いただけか

それでも酷いよパトさん


「俺はリディアもシシリーも嫌いじゃない

 だが歳の離れた妹のようにしか見ていない」


パトさんが再度深く一礼する


「それでは明日からもお嬢様をお護り下さいませ」

「ああ、任せろ」



部屋に戻ってベッドに飛び込む


「俺もう寝るわ、おやすみ」

「どうかしたんですか?」

「ケンタ殿、具合悪いのですか?」


アンナとアオイくんが心配してくれる


「いや、ちょっと疲れが溜まってるようだからさ」

「そうですか」

「お疲れ様ですケンタ殿」


精神的ダメージがでかい

俺はそういう風にしか見られないのかな

もう、どうすりゃいいんだよう


大人の彼女でもいたらそういう風には見られないのかな

ベルさんでも口説こうかな、歳の差はそんなにないだろうから

ベルさんは20代後半ぐらいだ、年齢知らないけど

・・・・・俺も見た目で判断してるな、ベルさんごめん


そのまま眠りについた




嫌なことは忘れて気持ちを切り替えていこう!

とりあえず護衛の仕事を頑張ろう!

半ばヤケクソ気味に自分を鼓舞する


シシリーとリディアは今日から3日間、王都で遊ぶ予定になっている


アンナとアオイくんは二人と一緒に遊ぶ

もちろん護衛の一環だ


傍から見れば女子4人が楽しく遊んでいるだけである

しかしその内2人は周囲に気を配りお嬢様たちを守るのだ

完璧な護衛システムだ


俺は少し離れたところから見守る

いざとなったらすぐに動けるようにしながら見守る


だって俺があの中に入ったら絶対また誤解される

もうそんな目で見られたくないんだよ!


おっとお嬢様たちが移動する

俺も離れて付いて行く






フレンダ男爵邸の執務室―――――――


私はシシリー様の父、オシリス様とは家格は違うが親友だ

学生時代に出会い、苦楽を共にした


その縁もあってリディアとシシリー様は仲良くして下さっている


「シシリー様を攫おうとして代わりにリディアが攫われたわけか」


オシリス様の書簡には誘拐事件について書かれていた

犯人たちを詰問した結果も書いてある


犯人たちの背後に黒幕がいる

だが犯人たちは黒幕の正体を知らない

黒幕の正体がバレないように手配した野盗一味のようだ

そうなると黒幕はまたシシリー様を狙ってくるに違いない

同様に近くにいるリディアにもまた危害が及ぶ

早急に黒幕を捕まえなければならない

だが証拠がないので捕まえることができない

黒幕の目星は付いていると言うのに


黒幕はオシリス様を憎んでいるあの男だ

シシリー様に何かあればオシリス様は苦しむだろう

あの男はそれを狙っている、卑劣な男だ

その男のことは私もよく知っている

なぜなら私とオシリス様と同級生だからだ


学生時代からオシリス様を勝手にライバル視していた

勉学でも武芸でもオシリス様には敵わなかった

その悔しさや敗北感からオシリス様を憎んでいる

じつに勝手な男だ


その男の名はドクス・バッカー伯爵

オシリス様と家格は同じ伯爵、家格だけは引き分けだ

だが同じ伯爵でも人としての格が違い過ぎる


一応伯爵だから私がどうこうできる相手ではない

私は格下の男爵だからだ


しかしなんとかしたいと思っている

親友のオシリス様のためにできることをいつも考えている

それがリディアとシシリー様のためにもなるのだから


だけど何も解決策が思い浮かばないのが現状だ

本当にどうすればいいのだろう

ハゲそうだ・・・・・

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