50 二人の令嬢
ドドン!! 地面が揺れる
それでもスーパーカブは進む
「見つかって戦闘が始まったのか?」
「リディアは無事でしょうか」
シシリーが不安になっている
「大丈夫、アオイくんは強いしアンナの強さは知っているだろ」
「はい」
アジトの近くで降りる
アジトの出入り口前に見張りらしき男たちが倒れていた
「邪魔だな」
一本の木にまとめて縛り付けておく
「中に入るけど俺から離れるなよ」
「はい」
少し震えているが親友を救うため覚悟しているのがわかる
中を進むとあちらこちらに野郎どもが倒れている
「多分アンナだな」
「そうなんですか?」
「アオイくんは偵察だからいちいち倒しながら進まない
アンナはお構いなしに片っ端から薙ぎ倒して進むからな」
クスリと笑うシシリー
笑うと歳相応で可愛い
ゲシッ! 「痛っ!」
「人をバーサーカーみたいに言わないで下さい」
「アンナ、痛いじゃないか」
「アンナさん」
どうやらアンナに追い付いたらしい
「アオイくんは? さっきの揺れは何だ?」
「どうやら地下で戦っているようです
魔法を使っている気配がするので」
「なら急ごう、一人だと大変だろう」
「あとプレイヤーがいます」
「え?」
「地下に二人のプレイヤーの魔力を感知しました
一人はアオイさんなので他にもう一人いることになります」
「まさか誘拐犯の仲間にプレイヤーがいるのか?」
「そこまではわかりません」
もしもプレイヤーが敵にいるなら厄介だ
俺たちは地下へ急ぐことにした
だけどまだ誘拐犯の仲間がいてなかなか先へ進めない
「くそっ、狭いから戦いにくいったら!」
「あ、アオイさんたちが別ルートへ進んでいます
ここから離れていきます」
なんて厄介な、でも戦闘は終わったんだな
だとすればアオイくんとリディアは無事ということ
「もう一人のプレイヤーも一緒か?」
「はい、一緒に移動しているようです」
なら敵ではないということか、よかった
残党を倒し終わって地下に降りる
「地下牢か、って何だこの氷漬けは」
「アイスプリズンですね」
「あの魔法か、アオイくんは使えないはずだ」
「もう一人のプレイヤーでしょうね」
「お二方、あちらに抜け道があります」
シシリーが抜け道を発見する
どうやらそこから脱出したようだ
俺たちも抜け道を進む
わたしたちは抜け道から地上に向かいます
誘拐団との無駄な戦闘を避けるためです
少しして地上に出られました
「んー、やっと明るいところに出られたわ」
身体を伸ばすお姉さん、胸が強調されます
羨ましいです
「あとはシシリーちゃんのところへ行くだけです」
「はい、早くシシリーを安心させてあげたいです」
「それじゃわたしはここでお別れしますね」
「お姉さん、私を守っていただきありがとうございます
ぜひお礼をしたいので一緒に来て下さいませんか」
「そうですよ、わたしも助けられましたし」
お姉さんはほんの少しだけ考えて
「ごめんなさい、それはできないわ
だって雇われただけとはいえ誘拐団の手伝いしちゃったしね
一緒に行ったら捕まっちゃうもの」
「そんな、私が助けられたことを伝えます
絶対に捕らえられるようなことはさせません」
「それでもダメよ、他にも事情があるしね
さあ行きなさい、わたしも行くから」
優しく微笑み諭すようにリディアちゃんの頭を撫でる
「せめてお名前を」
「そうね、それぐらいなら」
お姉さんはフライで宙に浮く
「わたしの名前はチェリー・ブロッサム、あまり言いふらさないでね」
そう言ってそのまま飛んで去って行きました
抜け道を進むと外の光が見えてくる
「あ、もう一人のプレイヤーの気配が消えました」
「遅かったか、会ってみたかったのに」
地上に出るとアオイくんと少女の姿が見えた
あの子がリディアだろう
「リディア!」
シシリーがリディアへ向かって走り出す
「シシリー!」
二人は抱き合って涙を流す
「無事で良かった、貴女に何かあればと胸が締め付けられました」
「シシリー、嬉しいけれど無茶はしないで」
「でも私のせいで攫われたのですよ」
「貴女が攫われなくて良かったと思っています」
「リディアが攫われたら全然良くありません!」
二人は本当に仲が良いんだな
「アオイくんも無事で良かった」
「心配おかけしました」
「アオイさん、もう一人の方はどんな方だったのですか」
「もう一人いたことをなぜ知っているんですか?」
一緒にいたのがプレイヤーであることを告げる
ガイド精霊でないと判別できないからアオイくんは気付かなかったのだ
サスケは別行動だったから仕方がない
「うう、そんなことなら無理にでも引き止めるべきでした」
「名前は聞いたのかい」
「はい、チェリー・ブロッサムさんという方です」
そう都合よくいかないか
ベンケイさんでもパンティさんでもなかったようだ
その二人だったらアオイくんは絶対に引き止めただろう
アオイくんからどういう人なのか聞いた
酸素を送ることのできるアイスプリズン
何の動作もなく相手の攻撃を阻む見えない壁
服を着ているように動ける結界
多属性の魔法を操るCランク冒険者
「わけがわからないよ」
「わたしもわかりません」
「すごい方ですね、私でも勝てそうにありません」
アンナが勝てないと思えるとはとんでもない人だ
「ギルドで聞いてみますか?」
「やめておこう、事情があるって言っていたんだろ」
「はい」
「だったら詮索されたくないだろう」
「そうですね、そっとしておきましょう」
この世界にいるのだからいつか会えるかも知れない
そのときを楽しみにしておこう
俺たちはアジトの出入り口まで戻る
領主様の私兵たちが誘拐団を護送の馬車へ放り込んでいた
氷漬けの二人も運び込まれていた
「シシリー、リディア、無事だったか!」
「お父様、心配を掛けてしまい申し訳ありません」
「ペンペラン伯爵様、此度は御手を煩わせてしまいました
心より謝罪いたします」
領主様に深くお辞儀をして謝罪するリディア
「リディアは悪くありません!」
「わかっておる、リディア、謝らなくてよい」
「ですが」
「それ以上謝られると私がシシリーに嫌われる」
「そうですわよ」
「シシリー、ダメですよ、礼儀を欠いては」
「ええ!? リディアは私の味方ではないのですか!?」
親友と言うより姉妹のようだ
リディアが14歳、シシリーが12歳だと聞いた
ちなみにリディアは男爵令嬢で伯爵令嬢のシシリーより格下だ
それでも親友であり、リディアはシシリーを窘めることができる
良い関係なんだということがよくわかる
シシリーとリディアは領主様の馬車で帰る
私兵たちは護送の馬車を走らせる
俺たちはのんびり散歩しながら帰った
「帰ったらゆっくりしよう」
「そうですね、明日は領主邸に行かないといけませんけど」
報酬は領主邸で渡すとシシリーに言われている
「服装はこのままでいいよな?」
「一応、清潔な服に着替えて下さいね」
「やっぱそうっすね」
「アオイさんもこの前買ったシックなやつを着て下さいね」
「はい、、、」
アンナ、おかんかよ
「何か思いました?」 ニッコリ&握りこぶし
「いえ、何も思っておりません!」
とある城―――――――
「ただいまー」
「おかえりなさいませ御主人様」
「留守番は寂しかったよ主様ー」
「ごめんね、次に出るときは二人を連れて行くから」
「それならいいよ♪」
「ホワイトは寂しがりだね、可愛いなあ♪」
「そう思うならもっとボクにかまってね主様」
「我のようにどっしり構えられないものか」
「ブルーだって本当はかまってほしいくせに~♪」
「そ、そんなことは、、、」
二人ともガイド精霊で青龍のブルーと白虎のホワイト
二人とも男の子です
「それで二人とも、御主人様をしっかり守ったのであろうな」
照れ隠しに話題を変えるブルー、可愛いなあ
「当たり前でしょチェリー様は何があってもわたしが守るわ」
この子もガイド精霊で鳳凰のレッド、女の子です
「俺も姐さんをしっかり守ったぜ」
同じくガイド精霊で玄武のブラック、男の子です
大男の岩盤や拳はブラックが防いでくれました
超硬度のクリスタルシールドを展開できるのです
四人ともわたしと契約して慕ってくれています
四神のガイド精霊です、可愛い子たちばかりです♪
ブルーに外へ行かないとダメだとしつこく言われました
それで依頼を受けたのだけどあんなことになってしまった
まさか誘拐の片棒を担がされるとは、トホホですよ
「まあ当分は城から出ずにのんびりするけどね」
「はあ、仕方がありませんね」
ブルーが残念そうだけど仕方がないのよ
疲れたんだもの、人間だもの
この城は色々あって手に入れました
この城を拠点に活動しています
四神の本来の姿はとても大きいのです
でもぬいぐるみサイズに小さくなってくれています
わたしのそばにいたいからだそうです
ホント、良い子たちばっかり♡
今回はレッドとブラックを連れて行きました
次はブルーとホワイトを連れて行ってあげよう
でも今日からまた当分はゆっくり引きこもりライフです
とりあえず寝ます、おやすみなさい♡
リディア救出完了、でも終わりじゃないです
「二人の令嬢」編はまだまだ続きますよ? これからですよ?
ここまではシシリー&リディアとの出会いの話ですから
ここから色々と物語は動いていきます
次回、事案発生(未遂)




