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愚者の楽園に転移したけどまったく問題ない  作者: 長城万里
2 永遠の混沌

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48 絆の魔法

訓練場にゾロゾロと関係者一同が移動する


「ではそちらの兵士さんたち全員でどうぞ」 ニッコリ


「いやさすがにそれは」


領主が女の子一人にそんなことできないと戸惑っている

兵士たちも同じくそんなことできないと言った様子だ


「それならそちらの不戦敗で私の勝ちでいいですね?

 よかったですね、兵士さんたちが怪我しなくて♪」


「まあ待てアンナ、こうしよう」

「なんですか?」


「兵士さんたち、とりあえず中央に来てください

 アンナが攻撃するので避けるなりして下さい

 それでアンナの実力を測ってくれればいいです

 それなら戦うわけではないのでいいでしょう?」


「そうだな、よし、お前たち行ってこい」


兵士10人が訓練場の中央まで来る

攻撃を避けたりするだけならと安心したようだ


「じゃ合図は領主様にお願いします」

「うむ、わかった」


アンナはニコニコしながら兵士たちの前に立つ


「では始めっ!」


領主の合図とともに


ゴッ! ガッ! ドスン!


3人の兵士が瞬殺された


「避けないんですか?」 ニッコリ


残りの兵士が構える

危機感を覚えたのだろう、さすが訓練された兵士だ

もう相手が女子供ではなく強者であると切り替えてきた


「やる気になってくれて助かります

 きちんと受け身を取って下さいね♪」


兵士たちは訓練されているし強いのだろう

だがアンナを侮り過ぎた

数秒後には全員横たわっていた


「アンナ、殺してないよな?」

「ちゃんと加減していますよ、失礼な」


領主様がポカンとしている

シシリーはやはりと言った感じでご満悦だ


俺たちは依頼の詳細を聞くため応接室へ移動した



「話に入る前に名乗っておこう、私の名はオシリス・ペンペラン

 爵位は伯爵でこの街の領主を務めている」


「改めまして私はその娘、シシリー・ペンペランと申します」


伯爵かよ、結構上の位だな

俺たちの態度って不敬とかじゃないよな?


俺たちも軽く名乗ったあと、シシリーが事情を話し始める



昨日、買い物をして屋敷へ帰るとき親友のリディアが迎えに来た

屋敷を抜け出し一人で街に行ったのを心配して探したそうだ

シシリーはリディアに謝り一緒に屋敷へ帰ろうとする


そこへ数人の男たちが現れて二人を攫おうとした

しかし領主の私兵たちがやって来る

リディアと同じくシシリーを探していたのだ


私兵たちは当然の如くシシリーを優先して守る

シシリーを囲んでいた男たちから捕まえていく

そのためリディアは連れ去られてしまった


シシリーは自分のせいでリディアが攫われたと愕然とする

同時に私兵たちにも憤りを隠さない

リディアの方にも何人か行ってくれればと怒る


だから父親の私兵ではなく自ら冒険者を雇うことにした

そしてギルドで一悶着となり今に至る



「私が一人で屋敷を抜け出したのが一番悪かったのはわかっています

 ですが誰一人リディアを助けに行ってくれませんでした

 私はリディアを助けてと言ったのに・・・・・」


領主の私兵だから領主の娘を優先するのは当たり前だろう

だがシシリーの言うとおり誰も助けに行かないのはどうなんだ


「領主様、シシリーが大事なのはわかるが酷くないか?」

「酷いな、だがこの優先順位は変えられん」


酷いと自覚があるならそんなとこまで頑固になるなよ


「お父様、私はケンタ様たちと一緒にリディアを助けに行きます

 邪魔はしないで下さい、止めても無駄です」


リディアは本当に大事な親友なのだろう

シシリーの口調は真剣だった


「わかった、止めはしない、だが場所は私にも教えなさい

 犯人たちを捕らえるために私兵たちも向かわせる」


「わかりました」


問題はまだ無事でいてくれるかどうかだ

いかんいかん、そういうことを考えたら駄目だ


「それで居場所がわかると言っていたけど本当かシシリー」

「はい、これを使います」


着けていたネックレスを外す

キレイな装飾の付いた赤い石のネックレス


「そのネックレスでどうするんだ?」


「これとお揃いのネックレスをリディアも着けています

 リディアのは青い石ですがどちらも魔石です」


魔石を装飾品にすることはよくある

宝石と同じく綺麗だからな


「二つとも絆の魔法が付与されています」

「なるほど、たしかにそれなら対となる相手の位置を知れるな」

「ケンタ様は絆の魔法をご存知でしたか」

「一応ね」


ゲームのときは<ボンズ>という名前の魔法だった

パーティーメンバーでボンズを付与した魔石を所持する

ダンジョンとかで別行動をする状況などもあった

そんなときこれを使って仲間の位置を知ることができた


「たしか魔力を流せば発動するんだよな」

「はい、そして一度使えばどちらの魔石も消滅します」


少し悲しそうに言うシシリー

親友との絆の証だったのだろう


でもその親友を救うために使うと決意している


「じゃすぐにやろう、早く助けに行かないとな」

「はい」


シシリーが魔石に魔力を注ぐ


魔力は大なり小なり誰もが持っているのでシシリーにも魔力はある

魔法は訓練しないと使えないけど魔力を注ぐぐらいは誰でもできる


魔石が消滅してナビと同じモニタが現れる

マップが表示されていて青い点が光っている


「この青い点がリディアです」


俺たちはマップを確認する

相手と合流するまではマップは表示され続ける


「南東にあるヒニンの森だな」


この際、森の名前についてはツッコまないでおく


「それじゃアオイくん、よろしく」

「承知したでござる!」


アオイくんはこの場から立ち去る

斥候として先に現場へ向かってもらった


「アオイさんはどこへ?」

「先にその場所に行ってもらった」

「馬もなしに? 走って?」

「馬よりも速いよ、忍者だから」


何を言っているのかわからないという顔をするシシリー


「とにかく俺たちを信じてくれ」

「はい、信じています」


信じていると即答された

この信頼を裏切ってはいけないな

裏切る気なんざ毛頭ないけど


「ケンタ様、私たちはどうやって行くのですか?」

「アンナは空を飛べるからいいよな?」

「もちろん、お兄さんはシシリーさんを連れて来て下さい」

「任せろ」


アンナも外へ出て行った


「アンナさん、空を飛べるのですか?」

「ああ、飛んだ方があいつは速い」


初めて会ったときにまいたはずなのにすぐに来ていた

あれは飛んで追いついたのだとあとからアンナに聞いた


「では私とケンタ様はどうやって?」

「外に出よう」


ギルドの外へ出てスーパーカブを出す

このスーパーカブは二人までしか乗れない

だからアンナとアオイくんを自力で先に行かせた


「ケンタ、お前何者だ」


領主様が驚いている


「何者って、冒険者ですよ」

「だがDランクだろ、なぜスーパーカブを持っている」


スーパーカブは王都で売っているってアンナが言ってたな

値段も高いらしいからDランクが買えるわけないってことか


「詮索はなしですよ領主様」

「う、うむ、そうだな」


冒険者の素性などを詮索しないのは暗黙の了解だ


「急ぐぞシシリー、後ろに座れ」


シシリーがスーパーカブを珍しそうに眺めている


「は、はい」


ちょこんとタンデムシートに腰を掛けるシシリー

俺もシートに跨りハンドルから魔力を流す


「それじゃ行くぞ」

「はい」


門までは巡航速度、外に出たらハイスピード

マップを俺の前に出してくれているので迷いなく進む


さあ救出ミッションスタートだ!






ヒニンの森―――――――


森の中腹あたりに誘拐犯たちのアジトがある

そのアジトの地下牢にリディアは監禁されていた


ライトブラウンの髪とブラウンアイ

髪は肩甲骨のちょっと下あたりの長さ

整った顔立ちでシシリーと同じく美少女だ


そんな少女が捕らえられているのにも関わらず

手足は自由、男たちから乱暴もされていない

普通に考えれば有り得ない状態である


見張りには女の冒険者が一人だけ

腰まで届く綺麗なストレートの黒髪で黒目

魔女が被るような大きな黒帽子とシンプルな黒いロングドレス

魔法使いが使うような木の杖を装備している

ぶっちゃけ魔女である


その冒険者がリディアに危害が及ばないようにしていた


「ごめんなさい、こんな仕事だとは知らなかったのよ

 でも前金で貰っているから一応その分の働きはしないといけないの」


「・・・・・・・」


「そうね、どんな事情であっても誘拐犯の片棒だものね

 だけどあなたには絶対危害を加えさせないから」


(それにいざとなれば逃がしてあげるし)


この女冒険者は護衛として雇われていた

実際は牢番の仕事だったが前金を貰っていて断れなかった


牢とリディアに結界を張って手出しをさせないようにしている

攫われてきたときは手足を縛られていたが彼女が解いた

そしてすぐに男共から引き離したのだ


リディアは何も言わない

だが怯えてはいない、毅然としていた


リディアは青い魔石を握り締める

その魔石が光り出して消滅した


「え、それってボンズ?」

「・・・・・絆の魔法が発動したようです」


リディアが少し悲し気な顔をして返事する


(来たら駄目だよシシリー、危ないよ、、、)


自分のことより親友の心配をするリディアだった


(そうか、助けが来るのね)


女冒険者はホッとする


(助けが来るまでわたしが守っておこう)


そのときリディアのお腹が鳴いた


「お腹空いたの?」

「・・・・・はい」


恥ずかしそうに返事をするリディア


「これでも食べて」


あんパンとジャムパンとクリームパンを渡す


「何ですか?」

「パンよ」

「パンなのはわかります」


「悪の一味に与しているわたしから貰うのは嫌でしょうね

 でも食べなさい、助けが来るんでしょう?

 逃げるためにはお腹が空いていたら動けないわよ」


「・・・・・ありがとう」

「どういたしまして♪」


女冒険者は微笑む


リディアは彼女が悪い人ではないと理解した

事実、リディアは彼女のおかげで無傷だ


「お姉さん、私をここから逃がして下さい

 そして向かって来ている親友を助けてくれませんか」


「いいわよ♪」


女冒険者は軽く返事をした

リディアは承諾してくれないかもと思っていたので驚いた


(どうせ雇い主は捕まるだろうから問題ないわ)


(お金返さなくても済むからラッキー♪)


女冒険者は強かであった

シシリー&リディア、二人の令嬢とケンタたちの物語はこれからです

だから森の名前なんて気にしてはいけません

謎の女冒険者はきっと良い人


次回、当たらなければどうということはない

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― 新着の感想 ―
[一言] アンナちゃん無双♪ そして女冒険者さんすてき♡ シシリーちゃんとリディアちゃんの友情も熱い! 展開が楽しみです。
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