47 救出依頼
ギルドの受付でなにやら揉めている
ベルさんと数人の職員が困り顔で対応していた
その相手は昨日の少女だ
「ギルドは依頼の選り好みをするのですか?」
「いえ、そういうわけでは」
「ならばなぜ私の依頼を受理できないのですか」
「それはその、内容とか、領主様の承諾とか」
相手は小さな少女なのに強く出れないでいる
状況がよくわからない、口出ししてもいいのか迷う
ベルさんが俺に気付いた
目で助けてと訴えている
無関係な俺にどうしろと
少女も俺に気付いた
「貴方は昨日のおじ様、冒険者の方だったのですか?」
「ああ、Dランク冒険者だ」
「ちょっとケンタさん、この方と知り合いだったんですか?」
「昨日会ったばかりで名前も何も知らないよ」
ボソボソと俺に話し掛けるベルさん
「おじ様、今立て込んでおりまして後ほど改めてお礼をいたします
少し席を外してお待ちいただけますか」
「ん、ああ、わかった」
俺はそこから離れて椅子に座る
「何なのでしょうね」
「さあな」
ベルさんがこっそり抜けてこっちへやって来る
「うう、あれじゃ他の仕事ができないわ」
「何があったのさ」
「あの方が依頼書を持ってきたのです」
「子供相手にあの方って、あの子何者?」
「この街の領主様の御息女です」
領主の娘だったのか
領主の娘が一人で街をうろつくなんて危ないだろ
昨日はねられていたら大事件になっていたぞ
「領主の娘だから依頼書の受付を拒否しているのか?」
「結論から言えばそうなります」
「依頼ぐらい受けてやればいいじゃん」
「内容が問題なんです」
「どんな内容なんだよ」
「お友達が誘拐されて助けに行きたいから
護衛と救出の手伝いをしてくれと言う内容です」
んん?
「誘拐事件だったら冒険者ではなく憲兵の仕事だろ
いくら友達だからってあの子が助けに行く必要はないんじゃないか?」
「はい、でもなかなか引いてくれなくて
領主様の御息女なのでギルド側も強く言えないのですよ」
たしかに領主の娘相手にガツンとは言えないわな
下手すれば物理的にクビが飛ぶ
「ベルさん、なに一人だけ逃げているんですか!」
「来て下さい!」
「いーやー!」
ベルさんは他の職員に連行されていった
「憲兵に任せておけばいいんじゃないのか?」
「そのお友達が大切なのだと思いますよ」
「アオイくん?」
「わたしたちが大切な仲間を想うのと同じなんじゃないかと」
あの子にとっては大事な友達、親友と言うことか
俺も仲間が危険に晒されたら助けようとするよな
たしかに同じだな
「お兄さん、どうしますか」
「アンナ、止めないのか?」
「仲間の大切さはわかってきましたから」
「そっか」
「わたしもあの子の力になってあげたいです
そもそも誘拐なんて許せません」
無関係の俺たちが口出しすることじゃないだろう
でも昨日今日と出会ったのは何かの縁だ
助けられるなら助けてやりたい、だから助ける
「ちょっといいか」
「おじ様?」
「ギルドを通さなくても依頼は出せるぜ」
「それは本当でございますか」
「ちょっ、ケンタさん!?」
悪いなベルさん、俺たちはこの子の味方に付く
「冒険者に直接依頼することも可能だ」
「そうだったのですね」
「ただギルドを通さないから依頼料を吹っ掛けられたり
騙されたりすることもあるから気を付けろよ」
「そうですね、非公式の依頼と言うことですから」
理解力はあるようだ
この子の味方になるつもりだが危険な目に遭わせる気もない
だから一つ賭けをする
「それで俺のパーティーに依頼を出(ムギュ!)ぐあっ!」
ベルさんが俺の首を背後から絞めてくる
アンナとアオイくんが止めてくれて助かった
「げほっ、げほ、何すんの!?」
「それはこっちのセリフです!」
めっちゃ怒っていらっしゃる
「なに勝手に教えているんですか! バカですか! バカですね!
この方に何かあったらどうするんですか! このバカ!」
バカって三回言った、酷いよベルさん
「おやめ下さいベルさん、私の邪魔をしないで下さい」
「で、でも、、、」
「ベルさん、まだ俺は受けるとは言っていないよ」
「おじ様、受けて下さらないのですか?」
「その前に賭けをしよう」
「賭け、ですか?」
「まず俺のパーティーを紹介する」
「アンナです」
「アオイです」
「俺はケンタだ」
「そう言えば名乗っていませんでしたね、申し訳ありません
私はシシリー・ペンペランと申します
ベルさんからお聞きのとおりこの街の領主の娘でございます
ですが普通にシシリーとお呼び下さいおじ様」
可愛らしい笑顔で語る
「おじ様はやめてくれ、ケンタでいい」
「わかりましたケンタ様」
様もやめて欲しいけどそこは置いておく
「それで賭けとは?」
「俺が今から出す問題に答えられたらシシリーの依頼を受ける
だが答えられなかったら諦めて憲兵に任せろ」
「なるほど、そう来ましたか」
シシリーは少し考えて
「わかりました、その賭けに乗させていただきます」
シシリーが勝てば俺たちは全力で助ける
シシリーが負ければ大人しくお帰りいただく
ギルドにしてみたら負けてくれってとこだろう
正直、俺も負けてもらいたくて賭けをしている
救出は俺たちが勝手にやっておくつもりだ
それならシシリーに危険は及ばない
「俺のパーティーは俺とアンナとアオイくんの三人だ
この中で誰が一番強いのか答えてくれ」
普通に考えたら俺を選ぶはずだ
アンナはシシリーと年齢が近いし、アオイくんは普通の女子だ
俺はおっさんだしパーティーのリーダーだからな
「・・・・・そんなことでいいんですか?」
「ん? ああ、いいけど?」
なんかイヤな予感
「一番強いのはアンナさんです」
迷いなく断言した
「なぜそう思った? 俺とは思わなかったのか?」
「ケンタ様も強いと思います、ですがアンナさんの方が強いです
まず佇まいに隙がなく、いつでも動ける体勢を崩していません
多分、ケンタ様に気配っていらっしゃると思います
何かあってもすぐに助力できるようにしていますね
これは相応の力量がなければできません」
すごいなシシリー、とんでもない観察眼だ
言い当てられたアンナが困惑しながら照れている
「それで正解ですよね?
よもや誰を選んでも不正解などと卑怯なことは申しませんよね」
「ああ、正解だ、シシリーの勝ちだ
俺たちはシシリーの依頼を受けよう」
「ケンタさん!」
「ごめんなベルさん、まさかここまで大正解されるとは想定外だったよ」
「うう、どうなっても知りませんよお!」
そう言いながらも反対ですとか言わない
ベルさんも本当はシシリーを助けたいのだろう
「それじゃ依頼についてもう少し詳しく聞かせてくれないか」
「はい、ケンタ様」
そのときギルドに貴族っぽい男と兵士が数人入って来た
「見つけたぞシシリー!」
「お父様」
お父様と言うことはこの男がこの街の領主ってことか
琥珀色の瞳でクセ毛のある金髪ショートのイケおじ
シシリーと髪と眼の色が同じだ
見た目は若いが俺より年上だろう
「リディアは私が必ず助けるからお前は家にいなさい!
すでに兵士を動かしているからすぐにでも助けられるはずだ」
「すぐ? それはどのぐらいすぐなのですか?
そもそもどこに連れて行かれているのかわかっているのですか?」
「それを言うならお前だってわかっていないだろう」
「私なら見つけ出すことができます
ですが私一人では助け出せません
ですから冒険者様のお力をお借りします
そのためにギルドへ来たのです」
「見つけ出せる? どうやって?
もしそうなら私に場所を言えばいい
すぐにでも助けに兵士を向かわせる」
「たしかにそうでしょう、ですが私も行きます
リディアは私のせいで攫われました
親友の私が助けに行かなくてはなりません」
どっちも一歩も退かない
うん、親子だわ、頑固なところがそっくりだ
「しかしどうせギルドは依頼を拒否しているはずだ
そうだな、キット?」
「ええ、まあ、はい、、、」
キットと呼ばれた眼鏡をかけた優男が返事する
「ほら見ろ、ギルドマスターが拒否しているんだ
お前を助ける冒険者を雇うことができないだろう?」
あの優男がギルマスだったのか
一般のギルド職員だと思ってた
「ギルドを介さなくても雇えることを知りました」
「何っ!? おいキット、何を吹き込んだ!」
「い、いえ、私は何も!」
チラリと俺を見るキットさん
教えたの俺だしな
「キミは?」
ほらー、キットさんがこっち見るから気付かれたじゃん
「初めましてケンタと言います、Dランク冒険者です」
「キミ、ケンタが娘に余計なことを吹き込んだのか?」
「余計なことじゃないですよ、大事なことです
真剣に依頼を出しているのにギルドは教えない
公平さを欠けていると思ったから助言しただけです」
「だがそれで娘に何かあったらどうする」
「そのために冒険者を雇おうとしているんでしょ
誰も連れて行かず一人で行こうとしないだけ冷静だと思いますよ」
親友を想うあまり一人で行かないだけシシリーは冷静だ
頭もいいし人を見る目もある、あんたの娘は立派だよ
「それでケンタがシシリーの依頼を受けるということなのか?」
「俺のパーティーで受ける」
「メンバーは?」
キョロキョロと俺の周辺を見渡す領主様
「この二人だ」
アンナとアオイくんを見ながら言う
領主様は困惑している
「女子供ではないか!」
「お父様、女子供と馬鹿にするのは聞き捨てなりません」
「う、いやしかし、とても強そうには」
娘の方が人を見る目があるようだ
「じゃ実力を示せば認めてくれますか?」
「ふむ、いいだろう」
即答するとは思わなかった
多分、大したことはないと思っているんだろうな
「アンナ、どうする?」
さっきの女子供発言でアンナ様がお怒りのご様子なのだ
ちょっと怒気がピリピリして痛いんですけど
「そうですね、では訓練場に行きましょうか♪」 ニッコリ
二人の令嬢の一人、シシリーです、領主の娘です
シシリーの親友、リディアがもう一人の令嬢です
久々にお怒りのアンナ様、兵士さんたち逃げてー
次回、救出作戦開始




