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愚者の楽園に転移したけどまったく問題ない  作者: 長城万里
2 永遠の混沌

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46 出会い

二人ともまだこの街に来ていないことが判明した

もしかしたらこの世界自体に来ていないのかもと不安になる

でもアオイくんがいたからきっといると思う


「とりあえず定期的にギルドで確認することにしよう

 その間は遊んだり依頼をこなしたりしていこう」


「そうするしかないですね」

「それにしてもアンナはよく平然と聞けたな」




調査後―――――――


「やっぱりからかったんでしょアンナちゃん」

「いえ、その名前の人はこの街にまだ来ていないだけです」

「でもそんな恥ずかしい名前の人なんて本当にいるのかしら?」

「いるから探しているのです」

「うう、わたしは信じませんからねー!」




ベルさんには気の毒なことをした、すまん


「名前を言ってこの街にいるかどうか聞くだけですよ?」

「でもなにも知らない人にパンティって言うのは恥ずかしいだろ?」

「そうですよアンナさん、恥ずかしいですよ」


アンナが小さくため息をつく


「お兄さん、アオイさん、見損ないましたよ」


「「なんでっ!?」」


なぜ俺とアオイくんが見損なわなければいかんのだ


「パンティさんは二人の大事な仲間ですよね?」

「そうだぞ」

「そうですよ」


「その大事な仲間の名前が恥ずかしいとはどういうことですか

 大事な仲間だと言うならなにも恥じることなどないはずです」


「「!!」」


そうだ、俺はなんて大馬鹿野郎なんだ

パンティさんは大事な大切な仲間だ

それなのに恥ずかしいだなんて

すまない、パンティさん、、、


アオイくんも俺と同じ思いだろう

自身の不甲斐なさを悔やんでいるようだ


「ケンタ殿、アンナさん、自分で自分が許せないです

 パンティ殿にもお世話になったのに恥ずかしいなんて

 わたし自身の方が恥ずかしいやつです、悔しいです」


「アオイくん、それは俺もだ、俺もこんな自分が許せない

 本当に大馬鹿野郎だ、パンティさんに顔向けできん」


「わかっていただけたようでなによりです」


「アンナ、気付かせてくれてありがとう」

「アンナさん、ありがとうございます」


「会ったことはありませんが私も仲間になりました

 ですからなにも恥ずかしくないので堂々と聞けました」


そうだな、アンナも仲間だ

本当にありがとう、お前はもう俺たちの立派な仲間だよ


「それでですね、仲間なんですから教えて下さい

 ベンケイさんとパンティさんがどういう人なのか

 私はその二人のことをまったく知らないので」


「ああ、そうだな」

「はい、仲間なら知りたいですよね」


このあと、俺とアオイくんは二人のことをアンナに語った




翌日から、俺たちは簡単な依頼を受けることにした


薬草採取、荷物運び、探し物などをこなしていく

Dランクがやるような仕事ではない

でも半日以内で終わる仕事なのでやっている


半日だけ仕事してあとは自由時間にしている

忙しなく仕事に追われる日々なんかノーサンキュー


たまに魔物討伐をして稼ぐ

ゆっくりした日々を過ごしていた


そして定期的にギルドで二人の確認をする

ベルさんがブツブツ文句を言いながらも調べてくれる

俺がパンティさんの名前を言ったときは白い目で見られた

でも調べてくれる仕事に真面目な人だ




今日は冒険者活動はお休みだ

みんなで街をブラついている


「それにしてもなかなか来ないな二人とも」

「そうですね、何処をうろついているのでしょう」


俺とアオイくんはため息をつく


「この世界で冒険を楽しんでいるんじゃないですか?

 話に聞く限りベンケイさんという人はそういう人かと」


そうだよなあ、ベンケイさんは冒険してそうだよな


「それからパンティさんですけど

 多分、一ヶ所に留まっているんじゃないかと思います

 あまり他者と交流しないタイプなんでしょ?」


なるほど、有り得る


「うう、それだと探しに行かないといけませんね」

「そうだね、ベンケイさんを見つけたら旅に出るか」

「そうなりますね」


ベンケイさんはアクティブな人だ

逆にパンティさんは俺たち以外とはほとんど交流しない人だった

この先、この街に来そうになかったら探しに行くしかない

会いたいから別に構わないけどな


「お昼なので食事にしませんかお兄さん」

「そうだな、あっ」


小さい男の子が道の真ん中で転んだ

泣くのを堪えている、偉いぞ少年


だがそこは馬車が通る道だった

案の定、馬車が走ってくる


俺は助けようと走り出す

ちょっと距離あるけどいける


俺が行く前に一人の少女が少年を突き飛ばす

だが今度はその少女がひかれそうになる


でも俺が抱えて助けたので無事だ

馬車は止まらずそのまま走り去っていく


止まって安否ぐらい確認しろよ

まあ車道の真ん中にいた少年少女も悪いんだけどな


「助けてくれてありがとうございます」

「ああ、でも無茶すんなよな」

「あの、降ろしていただけますかおじ様」

「ん、おじ、ああ、、、」


抱えていた少女を降ろす

中学生ぐらいだから俺はおじさんだよな

おじ様って言い方が丁寧だな


琥珀色の瞳で腰までの長さのウェーブのかかった金髪

着ているものが高級そうだ、貴族令嬢かな?


助けられた少年が母親と礼を言いに来た


「この子を助けて下さりありがとうございました」

「おねえちゃんありがとう」

「礼などいりません、当然のことをしたまでです」


少年の頭を撫でながら微笑む


少年と母親は再度一礼をして去って行く

少女が振り向き可愛らしくカーテシーをする


「改めて、お助けいただき感謝いたします」


やっぱりどこかの令嬢だなこの子


「助けに入って自分がひかれたら意味ないだろ

 次からはまわりの大人たちに任せるようにしなよ」


「そうですね、ですが意味はあります

 誰も助けに行かなければ結局私も見殺しにしたことになります

 なれば私は私の心に従い動くことを矜持としています

 それこそが意味あるものと私は思っております

 おじ様のご注意は心に刻みますがきっと私は同じことをするでしょう

 申し訳ございません」


丁寧にお辞儀をする少女

見た目は中学生っぽいのにしっかりしている

思わず見惚れてしまった


「それでは私は失礼いたします」


一礼して少女は去って行った


「お兄さん、美少女だからって鼻の下を伸ばし過ぎです」 ジト目

「伸ばしてねーよ!」


「でもぼーっと見てましたよケンタ殿」 ジト目

「アオイくんまで!?」


たしかにキレイな子だったけどそういう目では見ていないぞ?


「いいから昼メシ行くぞ」

「はーい」

「はい」


そのあとまた街を少しブラついて宿屋へ帰る






今日の夕刻頃に王都から大切な親友が到着します

彼女への贈り物を買いに街へ出て来ました

執事と侍女と護衛をまいて一人で来ています


彼女は読書家だから本を贈りたいと思います

特にロマンス小説が好きなようです


書店へ向かっていると馬車道で男の子が転びました

馬車が向かって来ています


まわりの大人の方たちは気付いていない人がほとんどです

気付いた人もいますが動きそうにありません


そんな観察をしながらすでに私は男の子を突き飛ばしていました


さて、私は避けられそうにないですね

とりあえず頭を守る努力をしましょう


いきなり抱えられました、ちょっと驚きました

見た目は父より少し若そうですが変わらないぐらいの男性です

ちゃんと助けに動ける大人の方もいらしたのですね


「助けてくれてありがとうございます」

「ああ、でも無茶すんなよな」


たしかに無謀でしたが後悔はありません


「あの、降ろしていただけますかおじ様」

「ん、おじ、ああ、、、」


公衆の面前でずっと抱えられているのは困ります

いわゆるお姫様抱っこと言う抱え方でしたので


私は少し恥ずかしかったのですが、おじ様は平然としています

親友の好きなロマンス小説に出てくる一場面のようでした


こういう状況だと相手がおじ様でもドキドキするものですね

だからと言って別に恋に落ちたりはしませんでした


男の子と母親が礼を言いに来ます

そして去り際にまた一礼をされました


私はおじ様の方へ向きます


「改めて、お助けいただき感謝いたします」


「助けに入って自分がひかれたら意味ないだろ

 次からはまわりの大人たちに任せるようにしなよ」


礼を述べたら注意されました、でも偉そうではありません

私のことを案じるように言って下さっています


「そうですね、ですが意味はあります

 誰も助けに行かなければ結局私も見殺しにしたことになります

 なれば私は私の心に従い動くことを矜持としています

 それこそが意味あるものと私は思っております

 おじ様のご注意は心に刻みますがきっと私は同じことをするでしょう

 申し訳ございません」


心配して下さった方へ反論するのは失礼かもしれません

ですが私は自身の信念を伝えます


怒られるかなと思いましたが怒られませんでした

おじ様はポカンと私を見ているだけでした

ちょっと面白い方ですね、少しだけ好感を持ちました


「それでは私は失礼いたします」


一礼して私は立ち去ります


この街にいるならまたどこかでお会いできるでしょう

少し時間を取ってしまいましたね、書店に急ぎましょう


ロマンス小説っぽいのでこの話をしたら親友は喜びそうですね

いい土産話ができました♪






翌日、冒険者ギルドへ行く

3日仕事して1日休むようにしている


「今日は何を受けようかな」

「討伐に一票!」


アオイくんは討伐依頼が大好物だ


ギルドの扉を開け中に入る

受付が騒がしい


昨日の少女がそこにいた

「二人の令嬢」編、スタートです

第二章からは長編エピソードがちょろちょろ入ります

この出会いから「二人の令嬢」編は始まります

バトルとシリアスとラブコメが盛りだくさんです


次回、ベル、ケンタの首を絞める

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