43 自由行動
暇です、やることがありません
街のマップは把握しています
観光スポットもばっちりです
でも私は楽しめません
プレイヤーの方たちは楽しめるでしょう
想い出も思い入れもあるでしょうから
自由行動、自由と言うのはときに不自由です
お兄さんと一緒にいて横でツッコんでいた方が楽しいです
でもお兄さんはこの街に想い出と思い入れがあります
邪魔はしたくありません
ガイドするのがガイド精霊
邪魔しては存在意義が問われます
あまりに暇なので買い食いばかりしています
太るかも知れません、ヤバいです
ポチャは私以上に食べています
太らないなんて羨ましい
「ポチャ、ほーらお肉ですよー」
「わーい♪」
本当によく食べる子です
適当にポチャを連れてブラつきます
周りから見れば子供と犬がウロウロしている状態
保護者が近くにいないから迷子と思う人もいるでしょう
それはそれとして、鬱陶しい視線も感じます
煩わしいので片付けてしまいましょう
私は人気の無い路地裏に行きます
「お嬢ちゃん、迷子かい?」
「お兄さんたちが案内してあげるよ」
6人の悪そうな方々が釣れました
「結構です、それより私に何かご用事ですか?」
「小さいのにしっかりしてるねえ」
一人が手を伸ばしてくる
ガブリ
「ぎゃあっ!」
ポチャが咬みました
「ダメですよポチャ、汚いでしょ」
「てめ、このガキ! 誰が汚いだ!」
「あなたですよ、変態さん」
「誰が変態だ!」
「女の子のあとを付けたりするなんて変態さん以外の何だと?」
咬まれた男が睨んでくるが私は動じません
「もういい、さっさと捕まえろ!」
男の合図で他の5人が襲って来ます
「ポチャ、殺さない程度にね」
「わんっ♪」
人前では喋らないようにさせています
咬んだり引っ掻いたりするポチャ
速いので男たちはボロボロになっていきます
「くそっ!」
「犬は任せた!」
二人が私の方へ向かって来ます
「大人しくポチャと戯れていればいいものを」
掴み掛かる腕を掴み返して地面に叩きつけます
ドスン! 「ぐはっ!」
もう一人の懐に飛び込んで顎を掌底で撃ち抜きます
ガゴン! 「んぐっ!」
高く真上に飛んで落ちる男
手の平にファイアボールを留めてその男の顔面に近付ける
「まだやりますか? それとも顔を焼かれたいですか?」
「ひ、ひぃっ!」
顔面蒼白ですね、いい大人がみっともない
あ、いい大人じゃなくて悪い大人でしたね
ポチャにやられた他の男たちも動けないようです
6人を一ヶ所にまとめて結界で逃げられないようにしておきます
街の警護をしている兵士さんたちを連れて来ます
連行されていく男たち
私はこっそりその場から立ち去ります
事情聴取なんか面倒くさいですからね
夕刻まで少し早いですが宿屋へ戻ります
商店街をブラついたり懐かしい街並みを見て回った
大きく広い街なので全部は見て回れなかった
これからいくらでも見て回れるからかまわない
拠点にするんだからずっと宿屋ってわけにもいかないな
ゲームだとログアウトするだけだから住居は必要なかった
でも今はここが現実だから必要だろう
永遠の混沌のパーティーハウスを手に入れよう
目標が二つになったな、仲間が揃うのと住居の二つだ
さて、そろそろ宿屋に戻るか
「おかえりなさいお兄さん」
「なんだもう帰ってたのかアンナ」
宿屋に戻るとアンナとポチャがすでにいた
「まだ時間あるぞ?」
「んー、今日はもう宿屋でくつろぎます」
「そうか、まあ俺もくつろぐとするか」
しばらくしてアオイくんとサスケが帰って来た
「おかえりアオイくん、サスケ」
それから夕食タイム
「へえ、サンオン塔に行ったのか、懐かしいな」
「はい、やっぱり良い景色でした♪」
「そんなギミックがあったんですね」
「私も驚きましたよ」
「今度アンナも連れて行ってやるよ」
「はい、お願いします」
「僕もー」
「おう、ポチャも一緒だ」
それからお風呂タイム
時間をずらして入ることにした
翌日、今日も自由行動だ
アンナとアオイくん、ポチャとサスケに分かれた
「サスケを連れて行かないのかアオイくん」
「はい、今日はアンナさんと遊ぶ約束をしましたので」
やっぱり女子同士で遊びたいんだろうな
「主が楽しむためなら仕方がありません」
「僕と遊ぼー♪」
そして俺は今日も一人だ
さ、寂しくなんてないんだからねっ!
さて、今日は少し遠くまで行くかな
昨日は昼からだったから近場しか回っていない
今日は朝からだから遠くまで行ける
スーパーカブに乗って移動だ
速度は馬車より少し速いぐらいにしておく
峠で速い奴が一番かっこいいんだ、イケてるぜ俺!
ここに峠なんてないけどな
気分だよ、気分!
来たぜ、俺は辿り着いたぜ教会に
別に信者とかではない
教会でしか売っていない物があるので買いに来ただけ
魔除けの札や聖水や聖属性の装備などを売ってくれる
しかも万能薬まで売っているのだ
もちろん万能薬は死ぬほど高いから買えない
銀の短剣も売っているので買っておく
教会の銀の短剣は特別製なんだ
俺の固有スキルの決壊死は銀の短剣を使う
刺した部分を消滅させるときに銀の短剣も消滅する
教会の銀の短剣は三回までは消滅しない
やっと教会に来れたんだ、買っとかないと損である
買い物を済ませて教会のそばにある広場へ行く
屋台やバザーなどをやっている
ゆったり座れるところもあるのでちょっと休憩する
屋台で食べ物を買って昼食だ
モグモグ
じー
パクパク
じー
ゴクゴク
じー
「・・・・・あのさ、キミたち、何でそんなに見てるんだ」
男の子二人と女の子一人が俺の昼食をじーっと見ていた
ブラウンの髪を左右三つ編みにしている少女
碧眼で両頬に少量のそばかすがある
同じく碧眼でもこもこしたブラウンの天然パーマの少年
同じく碧眼でブラウンのストレートヘアーの少年
少しクセ毛でうなじあたりまでの長さだ
「おいしそうだったから」
「おなかすいたから」
「ごめんなさい、ほら怒られる前に帰りましょ」
三人とも古着のような服を着ている
靴もボロボロだ
「いや怒らないよ、腹減ってんのか?」
「「うん!」」
元気だな少年たちよ
「ごめんなさい! ほら行くよ!」
「だって姉ちゃん、おじさん怒らないって言ってるよ」
「だからってダメでしょ!」
姉と弟二人の姉弟だった
「いいよ、弟くんたちを叱らないでくれ」
「で、でも・・・・・」
姉弟なのはわかったが孤児とかなのかな?
教会の近くだし定番のお約束っぽいし
「キミたちは、その、孤児とかなのか?」
ストレートに聞いてみる
「い、いえ、違います」
「ちがうよおじさん」
「僕たちおうちあるよ」
少年たちはケロッとしている
少女は少し悲しそうだ
「ごめん、失礼なこと言ったよね」
「あ、いえ、そんなことは、、、」
俺は日持ちのしそうな食べ物を収納庫から出して渡す
「え、これは?」
「失礼なことを言ったお詫びだ、受け取ってくれ」
施しよりも詫びの方がいいと思ったのでこうした
「そんな、わたしたちが先に失礼なことをしていたんですよ」
「キミらはたまたま美味そうに食べてる俺を見てただけだ
俺は失礼にも孤児だと勘違いした、だから俺に非がある」
「姉ちゃん、おじさんがくれるって言ってるんだからもらおうよ」
「そうだよお、僕おなかすいたよう」
一番下っぽい少年がポチャに見えてきた
「でも、わたしたちは孤児でも物乞いでもないのよ」
うん、そうだよね
でもな、俺だって出したものは引っ込めないぜ?
大人の汚さを身をもって味わうがいい!
「受け取ってくれないと困ることになるぞお嬢ちゃん」 ニヤリ
ビクッ 「な、何をする気ですか、、、」
ふふふ、思う存分困るがいい!
「受け取ってくれないと泣いちゃうぞ!」
「え? えええっ!?」
「子供のキミたちの前でみっともなく泣きじゃくってやるぞー!」
「何でそんなことを!?」
少女は困惑して少年たちはポカンとしている
「さあどうするお嬢ちゃん、泣かれるか受け取るか選びなさい」
異常な二択である
「うう、わかりました、受け取ります、、、」
勝った! だが虚しい勝利だ
「あの、ありがとうございました」 ペコリ
三人は帰って行った、この近くに住んでいるのだろう
またこの教会に来たら会えるかも知れない
まあ懲りて近寄って来ないだろうけどな
俺はスーパーカブに乗って宿屋へ戻る
中途半端な偽善だ
でもやらない偽善よりやる偽善だ
それでいいじゃないか
第二章での出番は今回だけですけど姉弟たちはいずれまた登場します
第三章の重要キャラであり姉はゴニョゴニョ(だから言えよ!)
次回、服屋再び




